第271話 いっぱい
「あー、あの魔族か……そういえば、いつの間にかいなくなったな」
「魔大陸に帰ったんだよ」
「そうなのか? てっきりお前の女の仲間入りをしたのかと思った」
なんでだよ。
「魔大陸に彼氏がいるんだ」
「ふーん……」
まったく興味がなさそうだ。
まあ、こいつが何かに興味を持つことなんてないか。
「この2人はリアンで縁があってな……パーティー解散して2人になったからウチの王都に送ってやったんだよ」
「王都にねー……でも、ダメだったわけか?」
「そうなる。実力的なことじゃなくて、一般常識的なことでだ」
この言葉に2人がちょっと落ち込んだ。
「まあ、わからんでもないな。そっちの金髪はいかにもお嬢様だし、もう1人は魔族だし」
よくわかってるな。
「そういうことだ。それで路銀が尽き、借金寸前だから連れてきた」
「お前に泣きついたわけだ。なるほどな……ウチに入るのか?」
「その確認に来た。いいか?」
「私は別に構わないが、魔族のことは知らんぞ。さすがに庇えない」
それはそうだろうな。
「その辺りは俺の方でやる」
「そうかい。じゃあ、好きにすればいい。ハァ……キツネは性欲が旺盛だから困る」
キツネはそんなことないぞ。
「お前は蛇だから嫌われたわけか?」
「ウチの家族は全員、蛇だよ」
そりゃそうだ。
こいつだけが嫌われているんだったな。
「じゃあ、この2人はウチのクランでいいな?」
「部屋も空いてるし、好きにしろ。私は何も言わないし、適当にやってくれ」
本当に興味がないんだな。
「イルヴァ、ロザリア、そういうことだ」
「あ、うん」
「やけにあっさりですね。試験でもあるかと思いました」
2人は拍子抜けしたっぽい。
「試験なんかいらん。見ただけで大体の実力はわかる」
冷たい目だ。
本人はそのつもりがないのだろうが、めちゃくちゃ下に見ている目だ。
実際、そうなんだろうが、そうやって表面だけしか見なかったから周りに嫌われたんだろうな。
「2人は実績があるぞ」
「リアンでやってたならそうだろうよ。しかし、2人で失敗したんだろ? どうするんだ? お前が面倒を見るか?」
「当面はな。他の連中がトレッタから帰ってきたらまた紹介しようかと思っている」
別に俺達のパーティーじゃなくてもいいし。
「やめとけ。ウチの連中とその2人では実力に差がある。ウチはBランクのアニーとクライブがトップだったんだ。クライブならまだ釣り合うが、他はダメだ。バランスの悪いパーティーは上手くいかないぞ」
そういえば、アニーがそうだったな。
だからあいつはソロだったんだ。
「クライブのパーティーはダメか?」
「あいつは男3人で好き勝手やってるパーティーだからな……聞いてもいいと思うが、良い返事はもらえないと思うぞ。これまでも何回か女達とパーティーと組んだことがあったが、どれも別れた。クライブは人間ができているし、頼りになる優しい男と評判なんだが、下品なんだよ」
ちょっとわかる……
「じゃあ、ウチか……」
「どうせそうなるんだから最初からそうしておけ。女を見つけたらすぐに囲うくせに」
子ギツネ、ニヤニヤするな。
お前、何しに来た?
「そんなつもりは一切ない」
「はいはい。とにかく、クランに入るのは承知した。空いている部屋はナタリアにでも聞いてくれ。イルヴァ、ロザリア、その好色ギツネの言うことを聞いて、適度に頑張ってくれ」
好色ギツネは余計だ。
「わかった」
「お世話になります」
イルヴァとロザリアが頭を下げる。
「話は以上か?」
「ああ。時間を取らせて悪いな」
「構わん。それも仕事だ。しかし、お前が自分でクランを作ればいいだろ」
「面倒だ。そういうのはお前がやれ。有能なんだろ?」
自分以外は無能らしいし。
「ハァ……」
レイラがため息をつき、読書を再開したので部屋を出る。
「良かったな」
「ああ。ありがとう。それにしても、なんか怖い人だったな」
「私は背筋がゾクッとしましたよ」
蛇だからな。
「基本はあんな感じでやる気がない奴だが、何かあれば助けてくれると思うから頼れ」
「う、うん」
「ユウマさんを頼ります」
まあ、それでもいいよ。
「じゃあ、ちょっと待っててくれ。ナタリアを呼んでくる」
2人をこの場に残し、AIちゃんと階段を下りていく。
「マスター、良かったですね」
AIちゃんはご機嫌だ。
「2人のことか? 俺のことか?」
「マスターのことです。ますます頑張らないといけませんね」
それはそうだろうよ。
多分、俺が思ってることとAIちゃんが思ってることは違うんだろうけど。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




