第264話 全員「(………あ、私もだ)」
俺達が話しながら歩いていくと、王都に入る門までやってきた。
門には2人の兵士がおり、槍を持っている。
「ちょっといいか?」
特に止められることもなく入れそうだったが、暇そうにしている兵士に声をかける。
「ん? 何だ?」
兵士が槍を降ろした。
「俺達はライズ王国から来たんだが、入っていいんだよな?」
「ああ、いいぞ。ライズってことは遠征してきた冒険者か? それとも旅行か?」
兵士が女性の方を見ながら聞いてくる。
やはりこのメンツだと冒険者とすんなり理解できないっぽい。
「冒険者だ。冬で仕事がなくて、リアンに行っていたんだが、長居する場所じゃないと思って、ここまで来たんだ」
「なるほどな。まあ、よくあるパターンだ。あそこは特殊な町だし、そういう冒険者は多い。だから別に通るのを止めもしない。ただ、問題は起こすなよ。そうなると仕事をしないといけない」
良いことだな。
問題を起こすのはいつも周りなのだ。
「わかった。それとだが、良い宿屋を知らないか?」
「宿屋ねー……俺は地元の人間で実家暮らしだから使わないからな……その辺にいる人間に聞いた方が良いぞ。もしくは、冒険者ギルドだな。ギルドは町に入って、まっすぐ行ったところに中央の広場があるからそこを右に曲がったところにある」
親切な兵士だ。
「なるほど。感謝する」
「ああ。仕事もいいが、王都を楽しんでくれ」
俺達は兵士に軽く頭を下げると、王都の中に入った。
王都は人が多く、賑わっているが、ライズ王国の王都とは雰囲気が違う。
木々や水路が多く、自然と一体化した町といった感じだ。
それでいて、ゴミどころか落ち葉の一つも落ちていない。
「ふーん……良い町だな」
「異国って感じがするわね。リアンもそう思ったけど、ここは真逆」
パメラがそう言って周りの風景を見渡す。
「あそこがごちゃごちゃしていたからな。それにここは治安が良いのが見てわかる。まあ、観光も後だ…………ちょっと待ってろ」
皆をこの場に残すと、すぐ近くにあるベンチで座って本を読んでいるメガネをかけた黒髪の若い女性のもとに向かう。
「迷わずにそこを選んだ……」
「…………男には聞かないと思った」
「キツネさんの嗅覚かなー?」
「絶対に彼氏がいない子よ」
後ろで女性陣がコソコソと聞こえるくらいの声量で話している。
「本を読んでいるところをすまない」
今さらなのでスルーし、黒髪の女性に声をかけた。
「え? はい? 私でしょうか?」
女性は顔を上げて、ぽかんといった感じの表情になる。
「ああ。ちょっと聞きたいんだが、良い宿屋を知らないか?」
「宿屋……一人ですか?」
「いや、あっちの女性達が泊まるような宿屋だ」
後ろを指差すと、黒髪の女性がナタリア達をじーっと見る。
「でしたら【白木の宿】が良いと思います。落ち着いた雰囲気の宿屋ですね。この通りを中央に向かってまっすぐ行けば広場がありますのでそこを左に曲がったすぐそこです」
やはり女性が泊まる宿屋は女性に聞くのが一番だな。
「そうか。ありがとう」
「いえ……観光ですか?」
黒髪の女性がにっこり微笑みながら聞いてくる。
「冒険者だ。ライズ王国のセリアの町から来たんだよ。あそこは冬で仕事がないからな」
「セリアですか。私も一度行ったことがありますが、良い町でしたね」
この女性は魔力を持っている。
「そっちも冒険者か?」
「いえ、私は司書をしています。一応、魔法使いではありますがね」
司書……図書館かどこかで働いているんだろうか?
「そうなのか……優秀なんだな」
「いえいえ……そんなことないですよ。あ、私はレベッカと申します。宮殿に隣接されている魔導図書館で働いています。もし、来られるなら館内を案内致します」
魔導図書館?
「俺はユウマだ。その魔導図書館というのは魔法関係の本が集まっているのか?」
「ええ。それ以外の本もありますが、半分以上が魔法関係の本になります。どなたでも閲覧可能ですので時間があればぜひ訪ねてください」
へー……ちょっと興味があるな。
俺の魔法は特殊だし、この世界の魔法はわからないことが多い。
「わかった。ちょっと行ってみようと思う」
これも縁だな。
『好きですねー……』
子ギツネ、うるさい。
「それと東の方にある庭園も観光地として人気ですよ。涼しいですし、自然を感じられる憩いの場です。夜は夜でライトアップされて非常に綺麗ですね。私は彼氏がいないのであまり行きませんが、カップルに人気でもありますね」
「ほう? それは良いことを聞いたな」
『どっちのことですか?』
子ギツネ、うるさい。
「ぜひ、楽しんでください」
「ああ。色々とありがとう」
「いえ、よい旅を」
レベッカがにっこりと微笑んだので軽く手を上げ、女性陣のところに戻った。
「どうだった?」
ナタリアが聞いてくる。
「おすすめの宿屋を聞いてきた。それにいくつかの見どころも教えてくれたな」
「親切な人で良かったね」
まったくだな。
「子ギツネ、どういう会話だったの?」
アニーがAIちゃんに聞く。
「マスターが言った通りですよ。親切な方で観光スポットなんかを教えてくださいました。それに名前、自分が働いているところ、彼氏がいないことまで教えてくださいました」
まあ、間違ってはいないな。
「あんたのマスターは本当にすごいわね……あれだけの時間でそこまで聞きだす?」
アニーが呆れる。
「いえ、向こうがベラベラと勝手にしゃべりました。すました顔をしていましたが、内心はナンパに乗り気だったようですね」
ナンパじゃないがな。
「あんたのマスターは本当にすごいわね……相手もよく知らない相手に乗り気になれるもんだわ」
「アニーさんもそうだったじゃないですか」
「「「………………」」」
全員が黙った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




