第253話 頑張るか……
俺達はイルヴァとロザリアを宿屋まで送り、後日話をするということで別れた。
そして、宿屋に戻ると、リアーヌが迎えに来てくれたので家に帰る。
部屋にはメレルを始め、全員が揃って待っていた。
「メレルに聞いたけど、ロザリアが魔族ってマジ? しかも、妹って……」
生首じゃないアニーが聞いてくる。
「ああ。お姉ちゃんって言ってたし、魔族の軍部が崩壊したって聞いて、狼狽していた」
これまでの苦労がパーだから仕方がないな。
「ホント、バカな妹ですよ。昔からあんな感じで報われない幸薄い子でしたね」
メレルがうんうんと頷いた。
「まあ、ちょっと気の毒だったな……とにかく、ロザリアは魔族だったが、好戦的な奴じゃなかったし、世界中のご飯を食べることを目的にした冒険者だった」
「ふーん……危険はないわけね?」
アニーが念を押して確認してくる。
「見るからに戦闘タイプじゃなかったな」
「あの子は争いを好む子じゃないですよ。私と同じでお金のために軍人になって、密偵をやっている子ですから」
そんな感じはした。
「ならいいわ」
アニーはそう言って、横になり、生首になった。
「ねえ、ユウマ、これからどうするの? ひとまず【迷宮が死んじゃった事件】は解決だと思うけど」
ナタリアが聞いてくる。
「ロザリアの件は明日にでもイルヴァを交えて話してみる。迷宮は……もう撤退でいいような気がする」
「まあ、すごく儲かるけど、危険だし、あの町はあまり長居したくない感じだったもんね」
俺達は冒険者だから命を懸けることもある。
しかし、あの町は死が身近すぎるのだ。
そういうのはいずれ精神に異常をきたす。
「…………ユウマ、お金の方はどうするの?」
今度はアリスが聞いてきた。
「その辺もちょっと考え直してみる。かなり稼いだし、平屋じゃない家も検討しながらだな」
「…………そっか。私は別にそんなに広くなくても良いけどね。ユウマは元貴族さんだから大豪邸が良いんだろうけど」
別にそんなことないけどな。
俺も大豪邸が良いわけじゃない。
この部屋だってそんなに広くないが、気に入っている。
「まあ、何にせよ、また相談しようじゃないか。まだ冬だし、春まではこっちで仕事にならない」
薬草も獣もいない。
それに寒いのが苦手な奴が数人いる。
「…………それもそうだね。じゃあ、今日は遅いし、解散しようか」
「ああ。リアーヌ、付き合わせて悪かったな」
今日は転移をたくさんやらせてしまった。
「いえ。私はこのくらいしかできませんので。それでは私達はここで失礼します」
リアーヌはそう言うと、タマちゃんを抱いているパメラと共に立ち上がった。
「おやすみ」
「はい。良い夜を」
「おやすみなさい」
「にゃにゃ」
2人と1匹は転移で寮に帰っていった。
すると、ナタリアとアリスが眠そうにしているリリーを連れて帰っていく。
「お前は?」
生首のアニーに聞く。
「もうちょっといる」
ふーん……
「お前はどうするんだ?」
もう一人残っているメレルにも聞く。
「今日は泊まらせてください。私も明日、ロザリアと話をします。もし、あの子が魔大陸に帰ると言えば一緒に送ってもらえませんかね?」
「わかった。でも、あいつは帰らないと思うぞ」
魔族だが、仲間の3人のことを想っていたし、イルヴァを一人にはできないって感じだった。
「だと思います。まあ、確認ですよ。私は私で好きに生きていますし、あの子もそうすれば良いと思います」
全員がそうするべきなのだ。
でも、迷惑だけはかけるなよ。
「じゃあ、昼すぎに行くから付き合ってくれ。朝はダメだろう」
最後の飲み会って言ってたし。
「では、それで。私もわんちゃんと寝ます」
メレルはそう言って、部屋から出ていった。
「アニー、明日、付き合ってくれ」
「了解」
アニーが手を出して、ひらひらと振る。
「さて、AIちゃん、これからどうする?」
「迷宮都市リアンからの撤退は賛成です。5-2迷宮が消えましたし、良い頃合いでしょう。稼ぎもかなり稼げました。まだ稼げるは撤退の合図です」
俺もそう思う。
「金は?」
「かなり貯まっていますが、お屋敷を建てるだけの金額には達していません。パメラさんのナイスアイディアであるマスターが1階に住めば平屋じゃなくても良いという案を考慮してもです」
ナイスアイディアね。
「家を建てるのはやはり金がかかるか。結構、稼いだと思ったんだがな」
「このセリアの町は地価が高いんですよ。王都にも近いですし、町も発展していますから」
都会なんだな。
まあ、なんせ領主が4人もいる。
「なら仕方がないか」
「別の住みやすい町を探すのもありですよ? 地価が安いところもあるでしょう」
あるかもな。
「アニー、どうだ?」
「嫌。私はこの町から出ない。それに【風の翼】を抜ける気もない」
アニーはやはり拒否だ。
「な? 多分、パメラもだ」
「マスターが強く言えば頷きますよ?」
頷くだろうな。
「稼げばいいだけだろ。我慢を強いる時じゃない。それに俺もこの町を気に入ってる」
「アニーさんの心拍数が高くなりました。ちょろい女――ひゃあっ!」
コタツの中から生足が現れ、AIちゃんを挟んで引きずり込んだ。
「そういう時こそ念話を使えよ」
何を口に出してんだか……
「撤退ですぅ……おやすみー」
コタツの中から脱出したAIちゃんはそのまま部屋から出ていった。
多分、ナタリアの部屋にでも行っているんだろう。
「ったく……あの子ギツネは……」
アニーがコタツから出てきた。
「アニー、俺はここを出る気はないからな。さっきも言ったが、セリアの町を気に入っているし、【風の翼】も居心地が良い」
パーティーメンバーだけじゃなく、クライブ達だって良い奴らだ。
「あっそ。私は天蓋付きのベッドだからね」
はいはい。
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