第252話 5-1迷宮「2回も助けてくれた//」
「メレル、ロザリアはこの国でずっとスパイをしていたから魔大陸の状況がわかってなかったんだ」
「あー……それもそうか。ロザリア、軍部は崩壊しちゃったし、フォルカーは死にましたよ」
「さっきユウマさんに聞いた。本当?」
「ええ。だからタダ働きなんてやめなさい」
給料を払う人間がいないからな。
「あ、あの、お姉ちゃん……これまでの成果は? 結構、危ない橋を渡ってこの国の情報を仕入れたんだけど……」
ほら、可哀想な奴。
「無駄になりましたね」
「おー……」
ロザリアが膝をついた。
「ロザリア!」
イルヴァがロザリアに近づき、背中をさする。
「目の前がぐにゃぐにゃしてます……」
「気をしっかり持て! そういうこともある!」
あんまないと思う。
「迷宮が死んだって聞いてたけど、犯人はロザリアなんです?」
メレルが聞いてくる。
「だな。迷宮の破壊も任務だったらしい」
「1人で?」
「じゃないか?」
「苦労してますねー」
かたや姉はコタツでゴロゴロ。
「お、お姉ちゃんは何を?」
ロザリアがなんとか立ち上がった。
「私はレジスタンスを抜け、スヴェン様がいる山の麓で暮らしていますね。今は向こうでも育てられそうな芋の種をもらい、ユウマさんのところで料理を教わったところです」
「え? お姉ちゃん、まだスヴェン様と付き合ってるの?」
ロザリアがないわーって顔をする。
「は? 誠実でかっこいいでしょ」
「えー……あんな不愛想な人は嫌だよ。絶対にこっちのイケメンさんの方が良いって。イルヴァもシーラもフェリシアもかっこいいって言ってた」
ロザリアが俺を指差した。
「そんな女を侍らす男はよしなさい。この人の部屋、女ばっかりですし、女の匂いしかしませんよ。前世は12人も奥さんがいた真正の××××です」
おい……
「君、王様か何か?」
動揺しきっていたイルヴァが急に真顔になり、聞いてきた。
「王様じゃない」
貴族だけど。
「それだけモテるってことでしょ。かっこいいし、気遣いもできる。さらには経済力もある。当然のことじゃん」
ロザリアの言葉にAIちゃんとリアーヌがうんうんと頷いている。
「なんでわかりませんかねー?」
「わかるわけないでしょ。野蛮な軍人より上品な貴族様だよ」
「しかも、スヴェンよりも強いんですよー……」
AIちゃんが煽りだした。
「ほらー」
「あっそ。勝手にしなさい。ユウマさん、すみませんが、この愚妹を見逃してくれませんかね?」
「俺じゃなくて、イルヴァに言え。俺はお前を見逃している時点でそっち側だ」
魔族の仲間と思われるだろう。
「イルヴァさん、聞いての通り、魔族は軍部が崩壊し、人族と争いを避けることになりました。どうかこの愚妹を見逃してくれませんかね?」
「え? あ、はい……まあ、ロザリアは仲間なんで……」
イルヴァが頷いた。
「感謝します。では、帰りましょうか。夕食の時間ですし」
もうそんな時間か。
「リアーヌ、メレルを連れて、先に帰れ。俺はイルヴァとロザリアを迷宮の外まで連れていく」
「かしこまりました」
2人共、1人で来たんだろうが、さすがに危険だろう。
「お姉ちゃん、これが真のイケメンさんだよ。スヴェン様は絶対に言わないし、勝手に帰る」
「うるせー。そのままベッドまでエスコートされて孕んじまえ」
品がないなー。
「リアーヌ、ケンカしそうだからさっさと連れて帰ってくれ」
「そうですね……」
リアーヌが頷くと、メレルに触れ、一瞬で消えた。
「外まで出るぞ。ロザリアは偽装しろ」
青白いままだぞ。
「あ、はい」
「なあ、リアーヌとロザリアのお姉さんはどこに行ったんだ? というか、ナタリアとリリーはどこだ?」
その辺の説明もいるか……
「後日、話してやる。聞いた通り、もう夕食なんだ。それにお前らが死んだらシーラとフェリシアが一生ものの心の傷を負うぞ。油断するな」
「わかりました」
「帰ろうか」
よし。
「タマちゃん……あれ?」
おらんぞ?
「リアーヌさんと帰っちゃいましたね。コタツの中で丸くなってます」
自由な三毛猫だわ。
「お前らは罠を回避できるアイテムを持っているのか?」
「あ、持ってます」
「そりゃね」
「じゃあ、それで帰ろう。行くぞ」
俺達は帰ることにし、歩き出す。
そして、1時間くらいで外に出たのだが、その間、一度も罠がなかったし、一度も魔物が出てこなかった。
「何も出てこなかったですね」
「そうだな……」
外に出ると、ロザリアとイルヴァが振り向いて、迷宮を見る。
「殺されそうになったから早く出ていって欲しかったんだろうな。お前らが今度、来る時は罠と魔物だらけだと思うぞ」
絶対にそう。
特にロザリア。
「まあ、もう来ることはないよ。今日が最後だからね……」
イルヴァが俯いた。
「イルヴァさん……」
ロザリアがイルヴァの背中にそっと触れる。
「大丈夫……飲みに行こうか。最後だし、散財しよう」
「はい。2人も待っているでしょうし、宿屋に戻りましょう」
最後だし、潰れるまで飲むといい。
「じゃあ、ユウマ、また話を聞かせてくれ」
「ありがとうございました」
2人はそう言って、先に去っていった。
「俺達も帰るぞ」
「はい……どうします?」
歩き出すとAIちゃんが見上げてくる。
「何が?」
「あの2人です……」
まあ、他にないわな。
「なるようになるだろ」
「良いと思います。私はマスターの幸せを願っています」
「そうかい……」
まあいい。
帰って金の計算でもするか。
ここまでが第6章となります。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
引き続き、第7章もよろしくお願いいたします。




