第250話 正体
「ユウマ、昼からはどうするの?」
ナタリアが聞いてくる。
「コアがあるところに行く」
「コア?」
「んー?」
ナタリアとリリーが首を傾げた。
「ああ。悪いがそこまで付き合ってくれ」
「それはもちろんだけど……」
「まあ、お金を稼ごっか」
2人も納得したので引き続き、タマちゃんを先頭に奥へと進んでいく。
そして、魔物を倒しながら魔石を回収し、奥へとやってきた。
「ここにコアがある」
以前も来たわずかに魔力を感じる壁を指差す。
「へー……わかんないね」
「うん。全然」
「私もわからんな」
ナタリア、リリー、リアーヌがコアがある壁をさすったり、叩いたりした。
「マスター、来ますかね?」
「多分な。来なかったらそれはそれでいい」
来るなら今日か明日だと思うが……
「ユウマは5-2迷宮のコアを取った犯人が来ると思ってるの?」
「え? そうなの? なんで?」
ナタリアとリリーが聞いてくる。
「まだわからん。そういうわけだからお前らは部屋で待機しててくれ。戦闘にはならんだろうし、待ち伏せするのに人が多いのは良くない」
「わ、わかった」
「それでリアーヌがいるんだね……」
2人が納得した。
「そういうことだ。リアーヌ、頼む」
「わかりました。2人共、触れ」
ナタリアとリリーがリアーヌに触れると、すぐに消える。
そして、しばらくすると、リアーヌが1人で戻ってきた。
「ユウマ様、ナタリアとリリーが皆に事情を説明しておくようです」
「わかった。お前は付き合ってくれ」
「はい」
リアーヌが頷く。
「マスター、少し離れたところで見張りましょう」
「それもそうだな」
俺達はさらに奥に行くと、椅子を出し、座る。
「AIちゃん、メレルからインストールした隠蔽魔法を頼む」
「わかりました」
AIちゃんに隠蔽魔法をかけてもらうと、そのまま座って待ち続けた。
待つことに飽きたタマちゃんはリアーヌの膝の上で寝ており、リアーヌがそんなタマちゃんを撫でている。
「ユウマ様、犯人に心当たりがあるそうですけど、一体、誰なんでしょう?」
リアーヌが顔を上げて、聞いてきた。
「ロザリアだ」
「え?」
「確定ではない。だが、AIちゃんが言うようにかなりの確率であいつが5-2迷宮を殺した」
もちろん、別に犯人がいる可能性はある。
「な、何故、あの娘が? 変なところはありませんでしたけど……」
あー、そういや、リアーヌはあの時、いなかったわ。
「あいつの名前はロザリア・ハリーズだそうだ」
「え……? それって……ま、まさか!」
リアーヌも気付いたようだ。
リアーヌも知ってるもんな。
「マスター、リアーヌさん、来ましたよ」
「知ってる」
ちょっと前から探知に引っかかっている。
「え? ロザリアですか?」
「ああ。行くぞ」
俺達は立ち上がると、コアがある場所に向かう。
すると、そこには壁を触っているロザリアがいた。
当然、その壁はコアがあるところだ。
「よう、ロザリア」
声をかけると、ロザリアがビクッとする。
「び、びっくりしたー……ユ、ユウマさん達でしたか……まだ迷宮におられたんですね」
「まあな。そういうお前は何をしている? 他の3人はどうした?」
「ちょ、ちょっとはぐれてしまいまして……」
はたして、はぐれることがあるんだろうか?
ましてや、ロザリアは魔法使いに見えるし、後衛職だろう。
「イルヴァ、こう言ってるが?」
「え?」
ロザリアが俺達とは反対側の通路を見る。
そこには鎧姿のイルヴァが立っていた。
イルヴァがロザリアの後ろを追っているのも探知で気付いていたのだ。
「イ、イルヴァさん……」
「はぐれるも何も私達はとっくの前に帰還している。ユウマ、これは何だ? なんで君達とロザリアがこんなところで会っている? 逢引きには見えんぞ」
どこの世界に迷宮で逢引きするバカがいるんだよ。
「な、なんでイルヴァさんがここに……」
「だからそれは私のセリフだ。宿屋に戻った後、お前と今後のことを相談しようと思ったのだが、いなかったので探していた。そうしたらお前が1人でこの迷宮に入ったのを見た。当然、追うさ。まさかあんな広場で鎧を着る羽目になるとは思わんかったぞ。別に服を脱ぐわけではないが、ちょっと恥ずかしかった」
イルヴァが頬を染める。
「そうですか……」
ロザリアが俯いた。
「ユウマ、説明してくれ」
イルヴァがこちらを見てくる。
「ロザリアの前の壁の中に迷宮のコアがある」
「コア? なんだそれ?」
「迷宮の心臓だ。もうわかるだろ」
「心臓……5-2迷宮は……ロザリアが?」
イルヴァが驚いた顔でロザリアを見るが、ロザリアは俯いたままだ。
「他におらんからな」
「他に? ユウマ、お前は何かを知ってるのか? いや、そもそも迷宮のコアなるものも知っている……何者だ?」
何者って言われても困るな。
「俺は普通の冒険者だ。だが、ロザリアは普通ではない」
「ロザリアが普通じゃないだと?」
「そいつは魔族だ」
「は?」
イルヴァが呆けると、ロザリアがゆっくりと顔を上げた。
その顔はスヴェンやメレルと同じように青白く不健康そうだ。
まさしく、魔族の特徴である。
「セリアの計画が失敗したのは聞いていましたが、あなたですか……」
「スヴェンもドミクも俺の敵ではない」
「そうですか……」
ロザリアが苦笑いを浮かべた。
「ロ、ロザリア……?」
イルヴァが声をかけると、ロザリアが申し訳なさそうな顔をする。
「すみません、イルヴァさん。そういうことです。私は魔族なんですよ。あなた達、人族の敵のね……」
敵かねー?
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