表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/241

第025話 奥さんが12人もいた恐ろしさ ★


 夕食を食べ終え、明日の予定を決めた後、部屋に戻り、お風呂に入った。

 そして、本を読んでいると、部屋にノックの音が響く。


「はーい?」


 まさかユウマ……


『私だ。ナタリア、ちょっといいか?』


 この声はクランリーダーのレイラさんだ。


「大丈夫ですよ」


 私がそう言うと、扉が開かれ、レイラさんが部屋に入ってきた。


「こんな時間にすまんな」


 レイラさんが謝罪してくる。


「いえ……戻ったんですね」


 レイラさんは数日前から仕事で町を出ていたのだ。


「ああ、さっきな。それでちょっとお前に話を聞きたいんだが、少しいいか?」

「大丈夫ですよ。あ、どうぞ」


 椅子に座るように勧めると、レイラさんが椅子に座った。


「ふぅ……それで確認したいことがあるんだが、お前らがハリソンの代わりを見つけたというのは本当か?」


 あ、ユウマのことだ。


「はい。依頼中にたまたま会った転生者さんです」

「そうか……実は依頼報告時にパメラに話を聞いてな。相当な使い手らしいな?」


 あー……パメラさんが話したのか。


「そうですね。奇妙な魔法を使いますし、剣術の腕もかなりのものでした」


 剣というか紙だったけど。


「ふむ…………危険はないか?」

「あー……うーん……」


 どうかな?


「どうした? 何かあるのか?」

「いえ、とてもいい人ですよ。気を遣ってくれますし」

「ふーん……でも、何かあるんだろ?」

「ええ……まあ。まずですけど、転生前は相当な名家の当主だったみたいです。言葉遣いがかなり上から目線ですね」


 本人に悪気はないんだろうが、偉そうだ。


「貴族か……他には?」

「えーっと、奥さんが12人もいたらしいです」

「…………それはすごいな」


 本当にすごい。


「99歳で亡くなったらしいんですけど、本人は20歳だそうで記憶がないみたいですけど、一緒にいるAIちゃんという子いわく、相当な人らしいですね」

「ふーん……お前ら、大丈夫か?」

「多分……いい人ですし」


 でも、ちょっと怖い。


「……本当に大丈夫か?」 

「ちょっと不安かなー……あの人、確かに紳士かもしれないですけど、強引なところがあるもんで…………一泊だけのつもりで客室を貸したんですけど、乗っ取られました。もっと言うと、私達のパーティーも乗っ取られそうです。すでにリーダーを名乗っています」

「……まあ、部屋は余っているし、好きにすればいいが…………パーティーのことは私が言ってやろうか?」


 言っても聞かないと思うな……

 というか、AIちゃんが文句を言うだろうな。


「いえ、どちらにせよ、勧誘しようと思っていましたし、いずれはリーダーもお願いしようとは思っていましたので大丈夫です」


 アリスも言っていたが、やはりリーダーは男の人がいい。


「そうか……まあ、ウチは自由がモットーだから好きにすればいいが、問題はやめてくれよ」


 問題があるとしたらそれこそお腹ポッコリだろうな。

 恐ろしいのはあの人にはそういう女性に対する欲がまったく見えないことだ。

 だけど、強引だし、自然に距離が縮んでいっている気がする。


「だ、大丈夫です」

「そ、そうか……アリスはどうだ?」

「アリスも問題ないと思います。ユウマを勧誘しようと言ってきたのはアリスですし」


 盗賊討伐の仕事を終えた帰り道でこっそり提案された。

 『ナタリア、ちょっと抱かれてきて』って言われた時は叩いたけど……


「ふーん、まあ、上手くやれそうならいいが……」

「会われます?」

「後だな。私は明日の早朝から王都に行かないといけないんだ」


 忙しいんだな……


「あの、ウチのクランの一員ってことでいいですかね?」

「まあ、いいんじゃないかな? 私は別に指示せんし、好きにすればいい。というか、貴族は私の言うことを聞かないだろうし、お前らで上手くやってくれ。一応、戻ったら会って話は聞くつもりだ」


 レイラさんのこのスタンスは楽でいいし、私達的には助かっているんだが、ウチのクランが上に行けない原因でもある。


「わかりました。ユウマにもそう伝えておきます」

「ああ。ユウマという名でいいんだな?」

「はい。如月ユウマさんです」


 私がそう言うと、レイラさんがビクッとした。


「如月?」

「はい。苗字が先にくる世界らしいですよ」

「そうか…………如月……」


 レイラさんが悩みだす。


「知っているんですか?」

「いや、ちょっとな……まあ、大体の話はわかった。私としては特に言うことはないから上手くやってくれ。パメラから聞いたが、ギルドとしては相当期待しているらしいし、ジェフリーも評価しているらしい」


 やっぱりそうか。

 あの優遇っぷりは異常だ。


「はい。いい人ですし、大丈夫だと思います。もっと上に行けるかもしれません」


 魔力が上がるかもしれないし。


「そうか。頑張れ」

「…………でも、子供ができたら引退です」

「あ、うん……」


 どうなるんだろうねー?

 真に怖いのはそうなっても受け入れてもいいかもと思っている自分が心のどこかにいることなのだ。

 事実、部屋をノックされた時、ちょっとドキッとしたもん。


 そして、多分、アリスもそう思っている。

 アリスとは生まれた時からの付き合いだが、あの子が男の人にあんなに懐くのは初めて見たのだ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[一言] 母ちゃんこっちの世界にも干渉してそう…
[良い点] なんだろう、会話の節々に出雲節があって小気味好いのにこの作品からはかつてないほどのエロスを感じる 今まではギャグ度が高くてエロギャグだったからか? [気になる点] いつも大量に居たかなりア…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ