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最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜  作者: 出雲大吉
第6章

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第248話 地図を売る


 イルヴァが出ていってしばらく待っていると、ノックの音が聞こえてくる。

 そして、ジーナが部屋に入ってきた。


「よう。仕事中に悪いな」

「これも仕事だよ。それともプライベートの誘いかい?」


 ジーナが対面に座る。


「既婚者は誘わん」

「そうかい……イルヴァとの話はどうだった? やけにすっきりした顔をしてたけど」


 俺にもそう見えた。


「心が決まったんだろ。まあ、結論は出ていたし、時間の問題だったとは思うがな」

「まあね……その相談の話だったのかい?」

「まさか。本題は5-2迷宮の情報交換だ。もっとも、お互いに情報はなしだがな」

「ウチも情報が欲しいけど、まったくだよ」


 だろうな。


「それと依頼を受けた。首飾りを探すのを手伝ってくれってさ」

「イルヴァ達は本格的に撤退を視野に入れたわけだね」

「辞めるって決めた人間をいつまでも引きとめても危ないだけだしな」

「実際、そういうパーティーも見たことある。最後の迷宮探索に行き、誰かが帰ってこない……悲惨だよ」


 想像しただけでいたたまれないわ。


「そういうわけでまた5-1迷宮に行くと思う」

「わかった。で? 私を呼んだ理由は? 話はそのことじゃないんだろ?」

「いや……AIちゃん」


 AIちゃんが空間魔法から地図を取り出し、テーブルに置いた。

 すると、ジーナがその地図をじーっと見る。


「ふーん……5-1迷宮か」


 わかるらしい。


「ウチの子が描いたんだ。すごいだろ?」

「すごいねー……」


 ジーナは空間魔法で地図を取り出し、テーブルに並べるように置いた。


「こっちが前にあんたらに見せた5-1迷宮の地図だ」


 確かに前に見た気がする。

 やっぱりAIちゃんの地図と見比べると、綺麗さが天と地だ。

 もちろん、正確さもだろう。


「これいくらするんだ?」

「金貨100枚」


 高いとは聞いていたが、想像以上に高い。


「そんなにするのか?」

「数回の探索で元は取れ、安全が買えると思えば安いだろ」


 まあ……


「複製されんのかね?」

「どこの世界に金貨100枚も出した地図を見せる冒険者がいるんだよ。ライバルだよ? そして、買う相手も地図を信用できるかい?」


 そうか……

 迷宮冒険者は冒険者仲間の遺品を集める冒険者だったな。


「確かに難しいな」

「上級にいる奴らは皆わかってるよ。逆に初心者向けの方は偽物の地図が横行してひどいことになってる」


 民度低いなー。


「まあ、そっちに行くことはないから問題ないが、取り締まりくらいしたらどうだ?」

「そこは何とも言えないね」


 ギルドもまたギルドの儲けが大事か。


「この地図は本物だぞ?」

「わかってるよ。こっちの地図は私が描いたんだ」


 ジーナが汚い方の地図を指差す。


「お前が? ギルド職員だろ」

「そうだねー……ちょっと昔話をしようか。私はね、この町の出身だけど、元々は迷宮を探索する冒険者だったんだ。しかも、Aランクだよ? すごいだろ」


 確かにすごい。


「そういえば、ウチの町のギルマスも元冒険者だったな」


 ジェフリーのことね。

 最近会ってないけど、あいつ、元気かな?


「高ランクになると、アドバイスもできるし、冒険者にも顔が利くから引退後に勧誘が来たりするんだよ。私もそうだし、セリアのギルマスもそうだろうね」

「へー……俺もAランクだが、来るかな?」

「絶対に来ないと思うよ。女性冒険者の引退者が続出しそうだし」


 せんわい。


「まあ、ギルド職員になるつもりはないから別にいいけど……」

「とにかく、私は冒険者だった。そんでもって5-1迷宮から5-5迷宮が稼ぎ場だったんだよ」


 それでそれらを担当している5番ギルドなわけね。


「正直に言うが、冒険者には見えんな。強そうには見えんし、魔力もそこまでだ」

「ああ。私は弱い。でも、冒険者っていうのは色々な役割がある。私はローグだったんだよ」


 ローグ?


「なんだそれ?」

「まあ、こんな地図が描ける能力がある奴が仲間に居れば知らないかもね。こういう地図を描いたり、罠を発見したりする斥候だよ。戦いはしないが、重要だろ?」


 AIちゃんやタマちゃんの役割か。


「それはギルドからも勧誘が来るな」

「だろ? 自分で言うのもなんだけど優秀だったんだよ。そうやって稼ぎに稼いでいたんだけど、パーティーが解散しちゃってね……」


 あー……


「さっきのはお前のことだったのか」


 暗くなったジーナの顔を見ればわかる。


「ああ。引退すると言った仲間が最後の冒険で死んだ。それでパーティーは崩壊さ。そして、全員、心が折れ、引退した」

「なるほどな」

「それで今の職さ。だから私にはこの地図のすごさとこれを描いた人間の恐ろしさがわかる」


 ジーナがそう言うと、AIちゃんがドヤ顔になった。


「あんたかい……よくもまあ、こんな正確な地図が描けるもんだ。しかも、危険な迷宮なのにこんな短時間でだ。現役の時にこれを見せられたら心が折れたね」

「ウチの子のスキルだ」


 AIちゃんの頭を撫でる。


「そうかい……転生者は恐ろしいね。でもまあ、今の私にはお宝にしか見えない」


 立場が変わったからだな。


「買い取ってくれるか?」

「それはもちろん買い取る。地図はこれだけかい?」

「5-2迷宮も描こうと思っていたし、実際に描き始めていた。でも、あれだ」

「ハァ……あんたがこれを今売ろうと思ったのもそれだね」


 さすがにわかるらしい。


「このスキルは面倒事に巻き込まれやすいと認識している。だから最後にまとめて売ろうと思ったんだ。だが、あんなことが起きたら出し惜しみできない」

「そりゃそうだ」


 ジーナが苦笑いを浮かべた。


「逆に聞きたいが、5-1迷宮も同じようなことが起きることも否定できないが、それでも買い取ってくれるか?」

「原因がわからない以上は通常通りの業務をするさ。だから買い取りはする」


 それは助かるな。


「いくらだ?」

「金貨で1000枚出そう」


 高い……


「そんなにか?」

「さっき言っただろ。私が描いた地図でも金貨100枚で売れる。この地図は金貨200枚で売るから5枚売れれば元が取れる。そう思ったら安い買い物だろ」


 まあ、確かにな。


「じゃあ、それで売るわ」

「他の迷宮の地図も作るつもりかい?」

「いや……そこまで長居しないと思う」


 この町は長居するべきじゃないし、金も十分に稼げている。

 それに何より、屋敷を建てる必要金額が結構下がった。


「そうかい……まあ、そこは何とも言えないね。この町では去る者を止めることはできないから」


 死ねって言ってるようなもんだしな。


「それとだが、この地図の出どころは俺達がこの町を出るまでは黙っておけよ」

「わかったよ。代わりと言ってはなんだけど、イルヴァ達の依頼を頼む」


 自分と重ねているわけね。


「わかった」

「ちょっと待ってな。金を持ってくるよ」


 ジーナが立ち上がり、部屋を出ていく。

 そして、しばらく待っていると、ジーナが金貨が入った袋を持ってきたのでそれを受け取り、帰ることにした。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

コミカライズが更新されておりますのでぜひとも読んで頂ければと思います。(↓にリンク)


よろしくお願いします!

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