第247話 決心
翌日、午後になると、AIちゃんと2人でギルドに行くことにし、リアーヌに転移で宿屋に送ってもらう。
そして、宿屋を出ると、5番ギルドに向かったのだが、いつもより冒険者が多かった。
「ジーナ」
ジーナのもとに向かい、声をかける。
「よう、あんたらか……今日は2人なんだね」
ジーナにちょっと疲れが見える。
「迷宮には行かないからな」
「イルヴァだろ? 上にいるよ。この前の部屋だ」
もう来てるのか……
「なあ、今日はいつもより多くないか?」
「午前中はもっと多かったよ。迷宮がなくなったことで遊んでいた連中が危機感を覚えて、働きだしたんだ」
そういうことか。
「いっぱい死ぬな」
「多分ね。それでドロップアイテムが増え、また人が集まり、死んでいく……そういう町さ」
「欲望の町とでも名付けろよ」
「王都ではそう言われてるよ。欲望と夢の町」
もう呼ばれてたわ。
「ジーナ、イルヴァとの話が終わったらちょっと相談があるんだが、大丈夫か?」
「ここじゃダメな話かい?」
「ああ。できたら人がいないところがいい」
地図を他の冒険者に見せたくない。
「ふーん……まあいいよ。終わったら2階に行く」
「頼むわ」
そう言うと、受付を離れ、階段を昇る。
そして、この前と同じ一番手前の扉をノックした。
「ユウマだ。入っていいか?」
『どうぞ』
イルヴァの声が聞こえたので扉を開け、中に入る。
すると、イルヴァが1人でソファーに腰かけていた。
「1人か?」
「ああ。話をするだけだしね。かけてよ」
そう言われたのでAIちゃんと共に対面に座る。
「ジーナが疲れてたな」
「こうなったら仕方がないでしょ。あ、レイピアを受け取ったよ。改めて感謝する。ありがとう」
イルヴァが深く頭を下げた。
「気にするな。儲かったし、こっちが礼を言いたいくらいだ」
「そうかい?」
「俺は別に良いことをしていない。公平な取引だ」
金貨150枚の剣を金貨300枚で買い取ってくれて感謝しかないわ。
「……君は本当にモテるんだろうね」
「別にそんなことないぞ」
「ふふっ、宿屋の子が目をキラキラさせながら絶賛してたよ? 苦労しそうとも言ってたけどね」
苦労なんかかけんわ。
「その苦労を負担するのが俺の仕事であり、やらなければならないことだ」
「あー……君は天性なんだねぇ……」
何が?
「そんなことよりもお前のパーティーはどうだ? 実はロザリアから色々と聞いている」
「それね……2人の引退は回避できそうにないよ。まあ、当然と言えば当然だけどね。仲間であり、友人の祝福を祝うべきなのはわかっているから」
まだ納得はしてないって感じだな。
でも、結論は出ている。
「2人を説得し、なんとか仲間に繋ぎとめても死なすだけというのもわかっているな?」
「もちろんだよ。私だってわかっている。感情が追いついていないだけさ」
そこまでわかっているなら問題ないな。
あとは整理する時間だけだろう。
「ロザリアと続けるのか?」
「どうかな……ロザリアは良い子だし、実力もあるんだけど、2人はねー……もういっそ君のところにでも嫁ごうかな?」
「冗談が言えるなら大丈夫だ。お前らの能力や人間性なら仲間もすぐに見つかる。最悪はウチの国だったら口を利いてやるぞ。クランに所属しているし、ギルドのお偉いさんにも顔が利く」
「へー……どっちも女でしょ」
まあ……
「クランリーダーは同郷の人間ってだけでそういうのじゃないけどな」
あいつはねーわ。
「ギルドのお偉いさんは?」
「ウチのリアーヌだ。本部のギルマスだな」
しかも、王族。
「わーお。すごいところを抑えたねー……君、女に生まれたら傾国と呼ばれてたんじゃない?」
知るか、そんなもん。
「たまたまだ」
「まあ、そういうこともあるだろうね。聞いたことないけど」
俺もないわ。
「そんなことより、用件は何だ?」
「決まってるでしょ。迷宮について。君達、5-2迷宮に行ったんだよね? どうだった?」
そういや5-2迷宮に行く前にイルヴァと会ったな。
「5-1迷宮と変わらん気がしたな。変わったことといえば魔石しか落ちなかったことだ。ウチのアニーが怒ってた」
「あー……まあ、そういうのはたまにあるからね。他にはないの?」
コアのことは言わんでいいだろう。
「ないな。そもそもあれが初めてだったし、差なんかわからん」
「そっか……」
「お前達は5-2迷宮に行ってたのか?」
「たまにね。ほとんど5-1迷宮がメインだったけど、5-4迷宮以外は行ってるよ」
AIちゃんがインストールした情報通りだ。
「お前達は俺達より長くいるし、他所のパーティーと付き合いがあるだろ? なんか情報を得てないのか?」
「ないねー……恩があるから情報を提供したいとは思っているんだけど、私達を含め、すべてのパーティーが寝耳に水さ」
この町も歴史が長そうだが、迷宮についての情報がないんだな。
「そうか……」
さて、どうするか……
「ユウマさ、変なことを聞いてもいい?」
ん?
「構わんぞ」
「君は仲間のためなら何でもする?」
「仲間の定義による」
こいつらだって、ブラインさんパーティーだって、冒険者仲間だ。
「君の奥さん」
「基本的にはするな」
まあ、限度ってもんがある。
それを許すとリリーの部屋が変な置物まみれになってしまう。
「そうか……」
イルヴァが背もたれに背中を預け、天井を見る。
「シーラとフェリシアか?」
「まあね……君らを見ていると、もういいかなって思えてきた。あの2人と冒険者になって10年近く経つけど、ずっと楽しかったんだよ。楽しい思い出のままでいたいかなって」
「それが正解だ。仲間が別の道に進むならそれを祝福してやれ。一度、仲間を失ったのならわかるだろ」
まあ、そんなことは俺に言われなくてもわかっていることだろうが……
「そうだね……ハァ……ロザリアと2人で旅でもするか」
「いいんじゃないか?」
ロザリアは世界を旅して色んなものを食べたいらしいし。
「うん……ユウマさ、暇? 依頼を受ける気ない?」
「首飾りか?」
こいつらがこの町にいる目的はそれだ。
「それ。レイピアが見つかった今、それだけが私達の心残りさ」
「依頼内容は?」
「5-1迷宮を捜索してくれないか? 日当で金貨100枚出す。もちろん、得たものは君達のものだ」
Aランクはすごいな。
簡単に大金を出す。
「首飾りは?」
「ジーナに鑑定してもらい、その額の5倍で買い取ろう」
5倍……
「そんなに出すのか?」
「いや、その首飾りを知ってるんだが、あれはアクセリナの両親がアクセリナにあげたものなんだ。そんなに高くない」
安いわけね。
「まあいいぞ。5-2迷宮がダメになったわけだし、5-1迷宮でも十分に儲かるからな」
「すまないね」
「しかし、10日探して出てこなくても金貨1000枚も払うのか?」
「うーん……3日でもいい?」
金貨300枚……十分だな。
「いいぞ」
「開始期間は特に設けないけど、早めにね。私達もそう遠くない時にこの町を出ると思うから」
決心がついたか。
「わかった」
「話は以上だよ。私達も探すつもりだけど、よろしく頼む」
「ああ。悪いが、ジーナを呼んできてくれないか? この後、話す予定なんだ」
「んー? わかった。私は帰ってパーティーで話し合いをするし、声をかけておくよ」
イルヴァは頷くと、立ち上がり、部屋を出ていった。
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