第239話 リリー「煙!」
AIちゃんが拗ねて、ナタリアと寝てしまったのでパメラとカードゲームを再開する。
「パメラ、今晩、リアンの町で飯でも食いに行かないか?」
「リアンに?」
「ああ、せっかくだし、一回くらいはリアンを見とけよ。そう何回も行くところじゃないし」
他国だしな。
「そうねー……私、この国を出たことがないし、一回くらいは外国に行ってみたいかしら?」
出たことないんだ……
「じゃあ、行こう。ちょっと芋じゃない料理を食べようぜ」
嫌いじゃないが、ちょっと違うものを食べたい。
「そうね……」
パメラが苦笑いを浮かべながら頷いた。
「AIちゃん、ちょっとリアーヌを呼んでくれ」
「はーい……」
AIちゃんが返事をし、そのままカードゲームを続けながら待っていると、リアーヌが現れた。
「お呼びでしょうか?」
「抜けて大丈夫だったのか?」
今さらだけど。
「今日は書類仕事ですし、問題ありませんよ」
リアーヌも忙しいんだな。
「そうか。頑張ってて偉いな」
「ありがとうございます。それで用件とは?」
「パメラをリアンに連れていこうかと思っているんだよ。ちょっとした観光だな」
「ああ、なるほど……せっかくだし、良いと思います」
リアーヌも丸くなったなー……
「明日は一緒に行こうな」
そう言いながらリアーヌの頭を撫でる。
「ありがとうございます」
『顔真っ赤でーす! 発情中!』
『寝てろ』
AIちゃんはすぐに嬉しそうにからかうよな。
子供だ。
「パメラ、行くか」
「ええ。リアーヌ様、ありがとうございます」
「うむ……タマちゃん、お姉ちゃんのところにおいで」
「にゃ!」
タマちゃんがパメラの頭からリアーヌの頭に飛び移った。
「では、参りましょうか」
俺とパメラはリアーヌに触れ、宿屋に転移した。
「本当に一瞬ね……良い宿屋だと思うけど、まったく使っている形跡がない」
パメラが部屋を見渡す。
「すぐに帰るからな」
家の方が落ち着くし。
「では、楽しんできてください。夜にはお邪魔させていただきますし、呼ばれれば迎えに参りますので」
「わかった。ありがとうな」
「リアーヌ様、ありがとうございます」
「いえ。では、私は仕事に戻ります」
リアーヌはそう言って消えていったので部屋を出て、1階に降りる。
「あ、お客さーん、いつもどこに行ってんの?」
宿屋の子が声をかけてきた。
「ちょっとな」
「謎の多いお客さんだなー……しかも、知らない美人さんを連れているし。お客さん、前世でよほどの徳を積んだんだね」
「きっとそうだな」
前々前世も積んだんだろうな。
「ちょっと食事に行きたいんだが、治安が悪くないところで良い場所を知らないか?」
「うーん、その人、娼婦? 同伴で高いところに行きたいとか?」
そういうのもあるんだな……
「違うな。妻だ」
説明が面倒なのでそういうことにしておく。
「そっかー……じゃあ、落ち着いたところが良いね。東門に近いところはそういう店が多いから大丈夫だと思うよ。おすすめは星降る食卓っていうお店かな? パスタとワインが合うって評判。私はわかんないけどね」
子供はワインを飲まんしな。
「悪いな。親には内緒だぞ」
そう言ってチップを渡す。
「ありがとー」
俺達は宿屋を出ると、歩いて街を見て回る。
もちろん、治安の悪い危ないところやいかがわしい雰囲気の場所には行かず、時計台や市場を始めとする観光名所っぽい場所を巡っていった。
そして、辺りが暗くなり始めたので宿屋の子がおすすめしてくれた店に行き、食事とワインを楽しむ。
「すごく美味しいけど、なんか私だけ悪い気がするわね」
「気にするな。そのうち、他の連中も連れていく」
ここ、重要。
「同じ場所に6回も来るの?」
「誰と行くかが大事なんだ」
「ふーん……」
パメラがジト目で見てくる。
だが、悪い感情は籠っていない。
「寮でリアーヌはどうだ? 貴族だし、共同生活ができるのかがちょっと心配だったんだが」
「普通に暮らしてますよ。さすがに炊事は任せませんけどね」
俺と一緒で苦手そうだしな。
そして、俺と一緒でやる気がないわけではないのだが、やらせてもらえない。
「おにぎりは美味かったぞ」
「まあ、それくらいはね……」
パメラが苦笑いを浮かべた。
「パメラ、この町はどうだった?」
「すごく人が多くてびっくりした。王都よりも多いんじゃないかしら?」
「多分な。活気もすごいし」
「ええ。他国って感じがした」
俺はどこに行ってもそう感じるだろうな。
セリアでも感じたし、何なら森の中でも感じた。
「ライズを出たことがないんだったな」
「セリアで生まれ育って、そのまま就職したからね。出張とかで違う町に行くこともあるけど、外国はない。だからすごく新鮮で楽しいわね」
それは良かった。
「魔大陸も行けるぞ」
「それはいいかな……」
だろうね。
俺もあそこはもういいや。
「いつかは世界を回ってみようかと思っているんだけど、お前も連れていってやるからな。リアーヌの転移は便利だし」
「世界か……リアーヌ様のギフトは本当に破格よね」
ホント、ホント。
絶対にウチのポンコツちゃんより有能。
「本当は国のために使われる能力だがな」
「リアーヌ様が嫌なんですっけ?」
「そう言ってたな。政治や戦争に使われるのが嫌らしい。まあ、気持ちはわかる。俺も戦争に行くのは嫌だし、政治ももういいわ」
前世は一族や国のために頑張ってきたんだろうが、今はそう思えない。
ただ仲間と穏やかに暮らしたい。
「それが良いと思いますよ。リアーヌ様もですけど、ユウマさんも能力が破格すぎます。魔法もですし、人工知能のスキルは聞いたこともありませんし、素晴らしい能力だと思います」
AIちゃんはパメラに泣きつくべきだったな。
「そうだな。英雄はつまらんし、金を貯めて悠々自適に暮らすわ」
「お屋敷はどうするの?」
「良い感じのを建てるわ」
平屋じゃなくていいわ。
リリーは高いところが好きだろうし。
その後もパメラと夕食を堪能し、店を出ると、夜の街を見て回ったりする。
そして、ちょっと遅い時間になってしまったが、リアーヌを呼び、寮に戻ると、パメラとリアーヌに別れを告げ、風呂に入って就寝した。
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