第237話 当たり?
俺達はロザリアと別れると、ギルドにやってくる。
夕方だというのに中には俺達以外の冒険者はおらず、閑散としていた。
大丈夫かなと思いつつ、ジーナのもとに行く。
「なあ……儲かってるのか?」
「とんだ挨拶だね」
「いや、外はあんなに賑わっているのに全然、客がいないからさ。ウチのギルドみたいだぞ」
今日もパメラは暇にしているだろう。
何しろ、タマちゃんまでこっちにいるし。
「ウチは上級の迷宮しか扱っていないからね。客は少ないけど、皆、大口なんだ。おっと、自分の女に魔石を落とすあんた以外ね」
やはり魔石を売らないのは良くないらしい。
「そりゃ悪かったな。でも、今日は当たりっぽいのを宝箱から手に入れたぞ。ひっどいのもあったけどな」
「そんなもんさ。まだ上級は良い方なんだよ? 初級、中級はゴミが出ることも多い」
迷宮に潜る冒険者の質がそのまま迷宮の質になるからな。
多分、魔石の方が当たりってことも多いんだろう。
「ハズレと当たりだとどっちが見たい?」
「じゃあ、ハズレからで」
ジーナがそう言ったのでAIちゃんを見る。
すると、AIちゃんがカウンターに銅貨を置いた。
「あー……銀貨や金貨ですらないんだね。確かにハズレだ」
「これが宝箱に入ってた。ウチの子がキレてたわ」
「悪意です! 許しません!」
AIちゃんがぷんぷんと怒っている。
「宝箱から出たのはひどいね。宝箱は良いものが出る確率が高いんだが……これは私でもキレるね」
命を懸けて潜っているわけだからな。
「これ、買い取ってくれるか?」
「いいけど、銅貨1枚だよ?」
まあね。
「迷宮から出たからレアだぞ」
「銅貨は銅貨だろ。まあ、逆に縁起が悪いから換えてやるよ」
ジーナは銅貨を取り、代わりに引き出しから違う銅貨を出した。
「どうも」
AIちゃんが銅貨を取り、空間魔法でしまう。
「それで当たりは何だい?」
ジーナが聞いてきたのでまたもやAIちゃんを見る。
すると、AIちゃんがレイピアをカウンターに置いた。
「金貨100枚はすると思うんですよー」
「そうかい……」
AIちゃんが嬉しそうに言うと、ジーナが笑みを消し、レイピアを手に取る。
そして、じーっと見始めた。
「どうした?」
「ちょっと待ってくれ……」
「まあ、それはいいけど……」
ジーナは鞘から剣を抜き、じーっと見続ける。
「本物か……まさかこれをあんたらが引き当てるとはね」
ジーナは剣を鞘に納めると、カウンターに置き、ふっと笑った。
「何? 大当たりか?」
「ある意味ね。まずだが、このレイピアの額は金貨150枚になる」
おー、すげ!
「やりましたよ、マスター! 大金です!」
「まあな。でも、ちょっと待て。ジーナ、何かあるのか?」
金貨150枚はすごいが、ジーナのリアクションとは釣り合ってない。
「そうだねー……ちょっとこの件は預かってもいいかい? もちろん、あんたらがすぐに金が欲しいって言うなら金貨150枚で買い取るよ」
「複雑っぽいな。トラブルはごめんだぞ」
「そういうのじゃないし、悪いようにはしない。むしろ、あんたらは結果的に儲かると思うよ」
まあ、ジーナの言葉を信じるか。
「急いで金が欲しいわけではないことは確かだ。だが、どれくらいかかる?」
「明後日以降になると思う。いつでもいいからここに来てくれ」
明後日なら問題ない。
「どうせ明日は休むし、明後日に来るわ」
「悪いね。それとこのレイピアを預かってもいいかい?」
あー……なんかわかったわ。
「取りませんよね?」
AIちゃんが失礼なことを聞く。
「ここをどこだと思っているんだい? そんなことをするわけないだろ。そんなに言うなら保証金として金貨150枚を渡そうか?」
ギルドが冒険者を騙したら終わりだわな。
「いらん。信用が如何なるものかは十分に理解している」
信じることが大事。
そして、裏切った者は絶対に許されない。
「そうかい。じゃあ、明後日にまた来てくれ。時間はいつでもいいよ」
「昼一にくる。待たせるのも悪いからな」
「わかった。頼むよ」
「ああ。じゃあ、今日は帰る」
俺達はギルドをあとにし、宿屋に向かう。
「何だったのかな?」
「…………さあ?」
ナタリアとアリスが首を傾げた。
「明後日にはわかることだ。多分、金貨150枚より高く売れる」
迷宮の仕組みを考えればわかることだ。
「そうなの?」
「…………まあ、高く売れるならいいか。じゃあ、明日、明後日は迷宮に行かない感じ?」
アリスが聞いてくる。
「ナタリア、それでいいか?」
休みを決めるのはナタリアの仕事だ。
「うん。明日は絶対に無理だし、一応、明後日も休めれば十分かな?」
「じゃあ、そうしようか。明日、明後日はゆっくり休め」
「う、うん、わかった」
俺達は宿屋に着くと、階段を上がり、部屋に入った。
そして、AIちゃんに蜂さん経由でリアーヌを呼んでもらい、転移で寮に戻る。
すると、料理がすでに用意してあった。
「おかえり! 見て、見て! 私が作ったんですけど、すごくないですか?」
メレルがテンションマックスで迎えてくれる。
「すごいな。こんな短時間でよく作れるようになったわ」
「まあね!」
料理はやはり芋料理が中心だが、非常に綺麗にできていた。
だが、気になるのは料理が6人分しかないこと。
「足りなくないか?」
「私はいらない」
「私もいいかな……」
メレルとリリーは食べないらしい。
「どうしたんだ?」
こいつらと共に留守番をしていたアニーに聞いてみる。
「こいつら、一日中料理してたわ。そして、それをずっと食べ続けてたの。もうお腹いっぱいよ。だから私もいらない」
そういうことね。
だから3人分がないんだ。
「まあ、俺達は迷宮帰りで腹が減ったから食うわ」
「迷宮ってお腹空くよねー」
「…………迷宮ダイエットの成果だね」
その分、食べたら意味ないけどな。
俺達はコタツに入ると、メレルが作ってくれた料理を食べていった。
美味しいんだけど、芋ばっかりだ……
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