第234話 4人+2匹
翌朝、いつものメンバーにメレルを加えた9人で朝食を食べ、準備をする。
「ユウマ、魔力回復ポーションを用意したから渡しておくわね」
アニーがAIちゃんにポーションを渡していく。
「悪いな」
「ナタリアに定期的に飲ませて」
「わかった」
準備を終えると、リアーヌに宿屋に送ってもらった。
そして、宿屋を出て、5-1迷宮を目指す。
すると、前方から金髪を三つ編みにした女性が歩いてきた。
もちろん、イルヴァである。
しかし、鎧姿ではなく、普通の服装だった。
とはいえ、帯剣はしている。
「おや? ユウマじゃないか」
向こうも俺達に気付いたようだ。
「よう」
「おはようございます」
「…………おはー」
ナタリアとアリスも挨拶をする。
「ああ、おはよう」
イルヴァもさわやかな笑みで挨拶を返した。
「1人か?」
「今日は休みなんでね。君らは迷宮かい?」
「まあな。稼がないと」
「ふふっ、モテる男は大変だね」
イルヴァが笑う。
「ウチは人数が多いからな。なあ、イルヴァ達は4人パーティーのようだが、クランとかに入ってないのか?」
「クランは入ってないよ。元貴族は難しくてねー……」
貴族だと何かあるんだろうか?
ウチのクランがゆるゆるすぎてわからんな。
「じゃあ、完全な4人パーティーなわけだ」
「まあねー……」
笑顔だったイルヴァがちょっと曇る。
「どうした?」
「いや……あ、邪魔をして悪かったね。じゃあ、頑張って」
イルヴァは笑顔に戻り、去っていった。
「何かありましたかね?」
イルヴァの後ろ姿を眺めていると、AIちゃんが聞いてくる。
「さあな。迷宮に行こう」
「はい」
俺達は広場に向かうと、迷宮に潜り、まだ未踏の場所を進んでAIちゃんが地図を描いていった。
そして、一昨日と同じようにタマちゃんが罠を見つけ、定期的にナタリアに回復魔法を使ってもらいながら進んでいく。
「ナタリア、大丈夫か?」
アリスと俺で魔物を倒したところでナタリアに確認する。
「うん。まだ大丈夫だと思う」
さすがにまだ1時間だから大丈夫だとは思うが……
「アニーが用意してくれたポーションを飲んどけよ」
「うん、わかった」
ナタリアが素直に頷き、ポーションを飲んだので探索を再開した。
そして、場所場所にあるセーフティーエリアで十分な休憩を挟みつつ、進んでいき、昼になったのでセーフティーエリア内にテーブルと椅子を出し、休憩する。
「…………ここで休んでいると、本当に疲れを感じないね」
アリスが弁当を食べながらぽつりとつぶやいた。
「私もまったく感じない。でも、実際は疲れているんだろうね」
ナタリアは定期的に回復魔法を使ってくれているし、特にだろうな。
「AIちゃん、進捗は?」
「あと四分の一といったところですね」
そう言って、AIちゃんが地図を見せてくれる。
まだ右上が空白だが、綺麗に描かれているし、距離感も完璧なんだろうと思える。
「…………おー、さすがはAIちゃん」
「すごいねー。AIちゃんって似顔絵とかも得意そう」
まあ、描けるんだろうな。
「描きましょうか?」
「いや、さすがに恥ずかしいからいいや」
「…………アニーを描いてあげるといい。そういうのが好きだから」
1人ファッションショーなるイベントをしているらしいからな。
「まずはコタツから出すところからだけどな」
「…………春かな?」
「アリスもだけど、完全にコタツの住人だもんね」
俺達は話をしながら弁当を食べ、休憩していった。
そして、午後からも探索を続け、魔物を倒していく。
「にゃにゃにゃ!」
歩いていると、タマちゃんが立ち止まり、前足で前方を指した。
「どうしたー? 罠か?」
「いえ……この先に何かあるようです。地図によると行き止まりなんですけど……」
「危ないもんか? 魔力は感じないが……」
少なくとも、500メートル以内には魔物も冒険者もいない。
「いえ、そういう類のものではないようです。行ってみましょう」
よくわからないが、AIちゃんがそう言うので進んでいく。
すると、洞窟の先は確かに行き止まりだったが、箱が置いてあった。
「なんだあれ? もしかして、宝箱ってやつか?」
箱だし。
「そのようです」
AIちゃんが頷くと、タマちゃんが箱に近づき、箱の周りをうろうろしながら調べている。
「どうだー?」
「にゃにゃ」
「罠の類はないそうです。ですが、念のため、私が開けましょう」
AIちゃんがタマちゃんと入れ替わるように箱に近づき、腰を下ろした。
「鍵もなし。開けまーす」
「気を付けろよー」
「おたからー、おいでませー」
AIちゃんが変な掛け声で箱を開ける。
「どーう?」
「…………良いもん入ってた?」
ナタリアとアリスが声をかける。
「おー! 見てください! かっこいい剣が入ってました!」
AIちゃんが鞘に入った剣を取り出した。
「剣か……高く売れそうだな」
「ですよねー」
AIちゃんが鞘から剣を抜き、嬉しそうに掲げる。
「でも、なんか細いね」
「…………細剣だね。多分、レイピアだと思う」
剣の名前は知らんな。
「まあいい。危ないからしまっとけ」
AIちゃんでも持てるような剣だが、見てて危なかっしい。
「はーい。金貨80枚超え、いけるかなー?」
俺達が得たドロップ品の最高額が金貨80枚の杖なのだ。
「だといいな。じゃあ、引き返して、次に行こう」
「はーい」
AIちゃんがレイピアを空間魔法に収納すると、来た道を引き返し、別の道に進むことにした。
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