表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

230/242

第230話 久しぶり


 翌日は朝から皆が俺の部屋に集まり、思い思いに過ごしていた。

 ナタリアは編み物をしているし、リリーは蛇の置物を彫っている。

 アリスは本を読んでおり、その横でパメラとリアーヌがタマちゃんと遊んでいた。

 なお、アニーは生首状態で寝ている。


「実際、いくらくらい稼いだら良いと思う?」


 俺とAIちゃんは屋敷について話し合っていた。


「どうですかねー? ちょっと不動産屋にでも……ん?」


 寝ているアニー以外が一斉に扉の方を見る。

 何故ならノックの音が聞こえたからだ。


「どうぞー」


 声をかけると、扉が開き、レイラが顔を出す。

 まあ、この寮にいるのはレイラだけなのでわかってはいた。


「ちょっといいか?」

「どうしたんだ? お前がここに来るなんて珍しいな」


 というか、記憶にない。


「いや、なんか屋上に変なのがいてな。ウチの蛇が捕まえたんだが、お前を出せってうるさい」


 はい?


「何を言ってんだ、お前?」

「私も知らん。とにかく、お前の女かなんかだろ。こんなところに魔族を呼ぶな」


 え?


「魔族?」

「ほら」


 レイラがそう言うと巨大な蛇に巻き付かれた黒髪の女がしくしくと泣きながら入ってきた。


「メレルじゃん」


 こいつ、何してんだ?


「助けてー……食べられるー……」


 メレルが涙目で懇願する。


「あー、レイラ、こいつはこの前の魔族侵攻の時に味方だった魔族だ。解放してくれ」

「ふーん」


 レイラが蛇を見ると、すぐに姿が見えなくなる。

 すると、メレルが慌てて、部屋に入ってきて、ナタリアを盾にして隠れる。


「お前の蛇が怖いんだと」


 ガチの人食い蛇だから気持ちはわかる。

 目がめちゃくちゃ冷たいし。


「知らんわ。どうでもいいが、気を付けろよ。今はまだ魔族に対して敏感な時期だからな」


 レイラはそう言うと、部屋を出ていった。


「あー、怖かった……私、どんどん嫌いなものが増えていきますよ」


 メレルが腕で汗をぬぐう。


「いや、お前、何してんの?」

「あ、お茶もらえません? いつ食われるのかの緊張で喉がカラカラです」


 可哀想に……


「ナタリア、淹れてやれ」

「うん」


 ナタリアがお茶の準備をしだすと、メレルが以前に座っていたアニーの場所に行く。


「あ、いたんだ……起きてー。半分、譲ってよ」


 メレルがアニーの首を揺する。


「なに……? 眠いんだけど」

「眠いなら布団に行きなさいよ」

「ったく……なんでこいつがいるのよ……」


 アニーはコタツから出ると、そのまま布団に行き、掛け布団を被って寝てしまった。


「どうぞ」


 ナタリアがメレルの前にお茶を置く。


「ありがとー。いやー、相変わらず、ただれた部屋ですねー。女の匂いしかしないわ」


 うっさい。


「それを言いにわざわざ来たのか?」

「違う、違う。ルドーの町であなた達と別れたでしょ? その後すぐに芋の種をもらってないことに気が付いたわけ」


 あー……そんな話もあったな。


「捨て台詞を吐いた後だったから戻れなかったわけね」

「いや、あっちはあっちで大変だったのよ。それはもう……」


 まあ、ボスだったフォルカーは死に、大蜘蛛ちゃんと大ムカデちゃんが大暴れしたあとだったもんな。


「あれからどうなったんだ?」

「それを教えるからそっちも教えて。フォルカーが言ってた地獄の魔獣ケルべロスとやらはどうなったの?」


 あの三つ首の犬ね。


「ウチのAIちゃんが倒したぞ」

「わはは! 偉大なるツバキ山の金狐様に勝てる者はいないのだ!」


 AIちゃんが高笑いをしながら胸を張る。


「あの化け物か……トレッタにいた軍は?」

「生き残りはいないと思うな」


 AIちゃんとケルベロスの争いに巻き込まれ、さらには軍が追撃し、全滅させたはずだ。


「なるほど……じゃあ、軍部は完全に終わったわけね」

「そっちはどうなんだ?」


 ちょっと気になる。


「ウチもレジスタンスが動いて、残っている軍を掃討したわ。フォルカーが死んだ時点でどうしようもなかったのに不満を持っていた町の人もレジスタンスに加わったから一気よ」


 あのエロい宿屋の主人の反応からしてもそうだったな。


「へー、じゃあ、軍部を倒して、平和を取り戻したのか?」

「まあ……」


 メレルが言い淀む。


「何かあったのか?」

「ほら、レジスタンスの連中が広場で処刑されたでしょ?」

「あったな。ひどいもんだった」


 男は斬首、女は……


「レジスタンスがそれと同じことをしちゃった。捕らえた軍の者や降伏した者を引きずり出してね……」


 復讐か?


「悪手だろ」


 降伏した者は許せよ。

 罪に問うのはいいが、殺してはダメ。


「まあ、そんな感じ。それでレジスタンスは悪名が付いちゃったし、降伏しても無駄と思った軍の生き残りは逃げちゃった」

「アホだなー」


 不穏分子を残しやがった。

 しかも、遺恨付き。


「まあ、所詮はレジスタンスも統率が取れていないからね。それでいて、レジスタンスのリーダーが内通者がいた件で猜疑心に苛まれちゃってるのよ」


 そりゃダメだわ。


「お前はどうしたんだ?」

「これはヤバいと思って、さっさと料金をもらって逃げた。リーダーに引き止められたけど、元軍部の私は絶対にロクな目に遭わないと思った」

「正解だ。処刑で済めばいい方だぞ」


 隠密は信用されないだろうし、メレルは気配を消すことや人に化けるのが上手すぎるのが良くない。

 しかも、スヴェンという武闘派の幹部の彼女。

 猜疑心に苛まれた男が信用するはずがない。


「あ、やっぱり? 絶対に嬲られてみせしめコースだと思ったわ。実際、逃げた時に追ってきたしね。まあ、あんな連中に捕まるわけないけど」


 メレルは隠密に特化してるし、飛べるからな。


「それでどうしたんだ?」

「スヴェン様のところに行って、報告した」

「あいつは何て?」

「絶対にユウマは死んでないって言ってる」


 そこかい……

 あいつ、俺のことを好きすぎるだろ。


「諦めさせろよ」

「いやー、どうかなー? なんか風魔法を覚えてた。竜巻が起こるやつ」


 しょうもな。


「それで俺に勝てると思ってんのかね?」

「思ってないから現在も修行中。今は山のふもとで一緒に暮らしているんだけどさ、なんか軍の生き残りの人達もスヴェン様を頼ってついてきていて、なんか村ができた」


 新たなる軍部の誕生である。

 皆に担ぎ上げられたスヴェンが第2のフォルカーになるのが見える。


「それで芋か?」

「そうそう。人が増えたし、肉とか魚だけではね……」

「お前、スヴェンにつけられてないよな?」


 大丈夫か?


「大丈夫。スヴェン様は飛べないし、あの人は修行モード。おかげで全然相手してくれない」

「ダメな男だな」

「スヴェン様もあなたにだけは言われたくないと思う」


 失礼な。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
復讐じゃなくて刑罰という形をとってれば、まだ幾分かマシだったろうに、、新しい軍部がどうするかによるだろうけど、この政争もどきに巻き込まれる大衆に同情するわ
 罪を許したところで遺恨が残る場合もあるし普通に復讐しに来る者も居るから殲滅は別に悪手ではないなぁ単にやり方の問題だな集めきってから秘密裏に殺せばいいのに対外的にはさすがにこの地では生きにくいと場所も…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ