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第228話 他国の冒険者


 ジーナに換金してもらうと、もらった金貨と銅貨が入った布袋をAIちゃんが空間魔法に収納した。


 さてと……どうするか?

 正直、今の状況だとあまり良くないことだが、気になるんだよな……


 仕方がないと思い、女性4人パーティーのもとに向かう。


「ウチの猫がすまなかったな」


 背中に嫌な視線を感じながらもリーダーらしき騎士女に声をかけた。


「ん? あ、いや、気にしないでくれ。迷宮探索で疲れた心が癒されたよ。すごく可愛い子だね」


 騎士女が笑顔で答える。


「わがままな子なんだ。昨日もAIちゃんが世話になったし、礼を言う」

「AIちゃん? あの金髪の子かい? また変わった名前だ」


 それはそう。


「そればっかりは仕方がない。俺はユウマと言う」

「私はAランクのイルヴァだ。君もAランクか?」


 こいつもAランクらしい。


「そうなる。とはいえ、Aランクになったばかりだがな」

「ふむ……Aランクになってこの迷宮都市に来たという感じかな?」


 違うね。


「まあ、そんなところだ。セリアから来たと言っただろう? あそこは冬は仕事にならないんだ」

「あー、確か寒いし、雪が降るんだったね。この辺では降らないから一度見てみたいもんだよ」


 リリーもはしゃいでたし、雪が降らない地域からしたら珍しいのかもな。


「イルヴァはこの国の出身か?」

「ああ。王都の貴族さ。もっとも、家を出たけどね」


 家出かな?

 あまり良くないぞ。

 貴族ならなおさらだ。


「騎士とか言ってたな? 職務放棄は良くないぞ」

「色々あってねー……まあ、腕っぷしと魔法には自信があったから冒険者になった。それで儲かるって聞いたからこの町に来たんだよ」


 理由は深そうだな。

 まあ、言いたくなさそうだし、聞かなくていいや。


「ここにはどれくらいいるんだ?」

「ひと月くらいかな?」


 イルヴァが他の3人を見る。


「そんなもんだな」

「ですね」

「正確には42日です」


 青みがかかった黒髪の女が正確に答えた。


「結構いるねー。ユウマ、そんなもんだ。何が聞きたいんだい?」

「なあ、この町の人ってちょっと変というか、ドライすぎないか?」

「ああ……それね。私もそう思っているし、あまり良い気はしていないね。でも、それは仕方がないことじゃないかな? 多分、この町にいる半分以上の人間は来年にはいないよ。冒険者も商人もね」


 死ぬか、儲けて帰るか……そのどちらかなんだろうな。


「お前らも長居しない感じか?」

「そうだね。王都に戻るか、別のところに行くか。その辺は考え中。君らはセリアに帰るんだろ?」

「そうなるな。あくまでも冬の間だけだし」


 多分、もっと早く帰ると思う。


「ふーむ……なあ、ライズ王国ってどんなところだ? 儲かるか?」


 他を知らんからわからんなー……


「どうかね? この町よりは儲からんな」

「そりゃそうでしょ。ここは世界一と言っても過言ではないよ。他に情報はない? ライズ王国も次に行くところの候補地に入っているんだよ」


 そういうことね。


「最近はスタンピードや魔族の侵攻でごたついてたな。今はその復旧だから人手が足りてない感じだ」

「やはりそうか……ちなみにだけど、結構な被害だった?」

「セリアはたいしたことないし、もう普通の日常に戻っている。でも、魔族に落とされたトレッタの町はかなりの損害っぽいな。ウチのクランの連中は皆、復興のためにトレッタにいる」

「ふむふむ……となると、王都の冒険者もそのトレッタかな? 良いかもしれない」


 そんなに良いかね?


「ここの方が儲かるぞ」

「それはそうだけど、ここは長居したらダメな町さ。もちろん、迷宮もね。それに見ての通り、我々は女性のみで構成されたパーティーだからあまり治安の悪いところは勘弁願いたいんだよ」


 他の女性3人がうんうんと頷く。


「ライズ王国って治安が良いのか?」

「自分の国でしょ」

「俺は数ヶ月前に移住してきてたんだ。セリアは4つに分かれていること以外は良い町だと思うが……」


 あれはねー……


「ふーん……ライズ王国は治安が良い国だよ。富も安定しているし、戦争の気配もないしね。そっちの彼女がその証拠でしょ」


 イルヴァが俺の後ろを見たので振り向くと、腕を組んでいるアニーがいた。

 まあ、あの格好はな……


「こういう感じの人間は他にはいない?」

「歓楽街でしか見たことないね。そんな服で歩くなんて襲ってくれって言ってるようなもんでしょ……君の趣味かい?」


 自分の女にあんな格好をさせて、外を歩かせる趣味なんかねーわ。


「アニー」

「好きでやってんの。それにあんたが守るの」


 まあ、守るけども……


「……ねえ、セリアって冬って言ってなかった?」


 イルヴァが呆れたような顔で聞いてくる。


「そうだな。まあ、アニーは気にしないでくれ」

「ふーん……」

「ライズに来るのか?」

「どうかな? もうちょっとここで稼いでからだね。冒険者も長くやれる職業じゃないし。あ、ジーナが強制引退させてくるって言ってたけど、何のこと?」


 イルヴァがそう聞いてくると、他の3人が『え!?』という顔をして、イルヴァを見た。


「え? 何?」


 イルヴァが仲間を見る。


「い、いや?」

「別に何でもないです……」

「そのー、あのー……何でもないです」


 言わんでよろしい。


「気にするな。ジーナは冗談が好きなんだ」

「えー、そうなんだ。意外」


 こいつ、素直だな……


『AIちゃん、タマちゃんに青みがかかった黒髪の女にちょっかいをかけるように言え』

『え? あちらの女性ですか? イルヴァさんではなく?』

『ああ、頼む』

『わかりました。タマちゃーん』


 AIちゃんが念話で指示を出すと、タマちゃんが現れ、青みがかかった黒髪の女の服を噛む。


「こら、タマちゃん」


 白々しくタマちゃんのもとに行く。


「あれ!? また!? タマちゃん、どうやってんの!?」


 タマちゃんを抱えていたナタリアが驚いた。


「すまんな」


 腰を下ろしてタマちゃんを抱えると、立ち上がりながら青みがかかった黒髪の女に謝罪する。


「いえ、子猫のすることですから」


 青みがかかった黒髪の女は笑顔で首を横に振った。


「そうか……えーっと」

「ロザリアです。ロザリア・ハリーズ」


 姓を名乗った……


「あ、私はシーラ」

「私はフェリシアです」


 赤髪の戦士さんがシーラで茶髪の子がフェリシアか……

 そして、姓を名乗らない。


「3人共、ウチの子がすまんな。あ、それと俺の仲間のナタリア、アリス、リリー、アニーだ」


 それぞれ紹介すると、女性陣が軽く会釈していった。


「よろしくね」


 イルヴァが代表してそう言うと、他の3人も会釈をする。


「邪魔して悪かったな。迷宮で会ったらその時は頼む」

「そうだね。またライズの話でも聞かせてよ」

「ああ。ではな」


 イルヴァに別れを告げ、宿屋に戻ると、リアーヌを呼び、セリアの町に帰ることにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

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