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第227話 儲かるなー


 迷宮を出ると、すでに空が茜色に染まっていた。


「もうこんな時間か。迷宮の中だと時間の感覚がおかしくなるね」

「…………無駄に体力と気力が回復するセーフティーエリアのせいもあると思う」

「私は太陽があるところが良いな」

「私はコタツ」


 はいはい。

 でも、時間の感覚がおかしくなるのは確かだ。


「AIちゃん、今日の成果は?」

「魔石が32個、首飾りが1個、ナイフと杖が1本ですね」


 杖はアリスにいるかって聞いたが、やはり縁起が悪いのは嫌と断られた。


「地図は?」

「今日で半分は行けました。もう1日あれば完成します」

「わかった。じゃあ、ギルドに行って、ドロップ品を売ったら帰ろう」

「そうしましょう」


 俺達は広場を抜け、さらに人が多くなった街中を歩いていく。

 なお、狛ちゃんはアニーを乗せているし、タマちゃんはナタリアが抱えており、俺はリリーの手を引っ張っていた。

 そして、人ごみを抜け、5番ギルドにやってくると、中に入る。

 すると、奥にいるジーナと目が合ったのだが、あからさまに嫌な顔をされた。


「どうしたのかな?」

「あれでしょ」


 ジーナの表情を見たナタリアが首を傾げると、ジト目のアニーがいくつかある丸テーブルの1つを見る。

 そこには昨日、迷宮前の広場ですれ違った女性4人のパーティーがいた。


「気にするな」


 そう言って、ジーナのもとに向かう。


「よう色男、今日も迷宮かい?」


 ジーナが昨日と同じ調子で声をかけてきた。

 多分、こういう奴なんだろう。


「まあな。朝から潜って、さっき帰ってきた」

「一日中潜ったのかい……本当に死ぬよ? セーフティーエリアは罠の一つだからね」

「心や身体が休まるあれか?」

「そう。でも、そういう気になるだけで実際は確実に体力が落ちているんだよ」


 やはりそういう仕組みか。


「まあ、あれくらいなら問題ない。明日はさすがに休むがな」


 俺はまだ行けるが、女性陣は無理だろう。

 それにジーナがまだ行けるは撤退の合図って言ってた。

 ここは素直にアドバイスを聞くべきだろう。


「そうかい……ところで、あれがあんたのやり方かい?」


 ジーナが女性4人パーティーを見たので振り向く。

 すると、タマちゃんがすり寄っており、4人からお菓子をもらっていた。


「あれ? いつの間に……」


 ナタリアも気付かなかったらしい。


「やり方とは?」

「ああやって女の気を引くんだろ?」

「失礼な」


 動物なんか使わんわ。


「既視感があるわね」


 アニーが腕を組んで首を傾げた。


「お前は勝手に狛ちゃんを可愛がっただけだろ」


 あいつはすり寄ることなんかしない。

 何故ならいつも定位置であるエントランスのソファーで寝てるし。


「あんたの作る式神ってあざとくない?」

「大蜘蛛ちゃんも大ムカデちゃんも可愛いしな」


 もちろん、蜂さんだって可愛いし、AIちゃんは言うまでもない。


「ごめん。勘違いだった」


 アニーが真顔で謝ってくる。

 大蜘蛛ちゃんと大ムカデちゃんは可愛くないらしい。


「ナタリア、人様のお菓子を根こそぎ奪おうとしている性悪猫を回収してきてくれ」


 いつもああやって寮の女性陣から奪っているんだろう。

 どう見ても慣れているし、常習犯だ。


「わかった……ウチの猫がすみませーん」


 ナタリアが女性4人パーティーのもとに向かった。


「ジーナ、首飾りが1個、ナイフと杖が1本ずつ落ちたから買い取ってくれ」


 そう言うと、AIちゃんがカウンターにそれらを置く。


「ほう……3つも落ちたのかい? そりゃすごいね」


 ジーナが感心しながら首飾りを手に取って見始めた。


「そうなのか?」

「上級の迷宮はあまりアイテムがドロップしないからね。だいたい魔物10匹で1つ落ちるか落ちないかってところだよ」


 魔石は32個だった。

 まあ、10匹で1つならそんなものかもしれない。


「そうか。二度目のビギナーズラックってやつかもな」


 正直に大量に倒したと言う必要はない。

 相手がドライに接してくるならこちらもそれに応えるだけだ。


「ふーむ……ただのバカパーティーではなかったか……女共はそこまで魔力が高いわけではないし、やはり異質なのはあんたか」

「皆、魔力は高いぞ」


 失礼な。


「ここはBランク以上しかいない上級だよ? そりゃ中級連中と比べたら高いけど、上級連中の中では並みかそれ以下だよ」


 そういう意味ね。

 そりゃ上澄みの中で高いかって言われたらそこまでだ。

 むしろ、低い方かもしれない。


「まだ発展途上なんだよ」

「まあ、若いしね。楽しみではあるよ。どうせ強制引退だろうけど……」


 ジーナがボソッとつぶやく。


「何とも言えんな。それでどうだ? 高く売れるか?」

「せっかちだね。ちょっと待ちな。とりあえず、首飾りは金貨40枚だよ。呪い除けの魔法がかかっているから高い。本当に売るのかい?」


 40枚はすごいな。


「俺に呪い勝負で勝てる奴はおらん。前世はそういうこともしていた」


 皇居に呪い除けを設置するのがウチの役目の一つなのだ。


「怖い男だよ」


 呪う方じゃねーわ。

 当然、それもできるけど。


「ナイフはどうだ?」


 ジーナが首飾りを置き、ナイフを見始めたので聞いてみる。


「ちょっと待ちな…………これは普通のナイフだね。ハズレだ」


 残念。

 でも、高ランクが持っていたものがすべて高いとは限らない。


「まあ、そういうこともあるだろう」

「だね。仕方がないさ。でも、この杖は期待できるよ。武器だからね」


 ジーナが杖を見だした。


「そういや迷宮で男4人のパーティーとすれ違ったぞ」

「ブラインチームだね。ブラインが変なパーティーとすれ違ったって言ってたけど、あんたらか……」


 あいつらはブラインさんのパーティーらしい。


「強そうだったな」

「全員がAランクのベテランパーティーだ。絡むんじゃないよ」


 なんでこっちが絡むんだよ。


「女連れの方が絡むわけないだろ。むしろ、向こうに言え。俺は問答無用で殺すからな」

「そうだ、そうだ! 一族を害する者は誰であろうと処分だ!」


 AIちゃんが啖呵を切っているが、こんなチビが言っても虎の威を借りる狐にしか見えない。


「全員Aランクって言ってるだろ? 殺すとか言うな」

「あの程度、俺の敵ではない」

「そうだ、そうだ! マスターはすごいんだぞ!」


 はいはい。


「はいはい……とにかく、やめてくれよ。若いもんはベテランに噛みついたり、バカにしたりするからね」

「せん。生前は99歳まで生きたんだぞ」


 リアーヌ算によると、そのベテラン共も年下だ。


「爺かい……そういえば、転生者だったね。私もそれくらいは生きたいもんだ。ほれ、鑑定が終わったよ。この杖は金貨80枚だ。大当たりだよ」


 80枚はすごいな。


「全部売る。ナイフもな」

「じゃあ、ナイフは銅貨5枚ね」


 まあ、いいか……


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

本作とは関係ありませんが、本日、私の別作品である『悪役貴族になりたくない僕の異世界魔法学園生活』の第1巻が発売となります。

ツンデレ猫が可愛いのでぜひとも手に取って頂けると幸いです。(↓にリンク)


本作共々よろしくお願いします!

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