第226話 にゃにゃにゃ(こいつ、絶対にギルドの男職員の顔も覚えてないにゃ)
首飾りを回収した俺達はその後も進んでいく。
そして、セーフティーエリアの前までやってきた。
「やっと着きましたね」
「だなー」
「にゃっ!」
急にタマちゃんが声を出して、止まった。
「どうした? 罠か?」
「落とし穴があるそうです」
セーフティーエリアの手前にか……
この迷宮、絶対に意思があるわ。
「タマちゃん、どこにある?」
「にゃ」
「見ておくにゃって言ってます」
そう言われたのでタマちゃんを見ると、タマちゃんが歩いていく。
直後、タマちゃんがジャンプし、タマちゃんがいたところに穴が開いた。
「おー!」
「…………すごい反射神経」
「さすがは猫だね!」
「狛ちゃんもできるわよね?」
なんか狛ちゃんの飼い主がパメラの飼い猫に対抗しようとしている。
でも、タマちゃんは軽いからできたのであって、狛ちゃんは大型犬だから難しいと思う。
狛ちゃんも無理無理って首を横に振ってるし。
「にゃ!」
「どんなもんにゃって言ってます」
偉い、偉い。
「すごいな、お前。よし、行くぞ」
俺達は落とし穴を避けながらセーフティーエリアに入った。
そして、前回と同じように机と椅子を出し、一休みする。
「アニー、昨日と比べてどうだ?」
「良いと思う。AIちゃんが迷宮の情報を得たし、タマちゃんが罠を看破してくれる。魔物も強いけど、今のところはどうにかなる相手だし、たとえ、ドラゴンが出てきてもあんたがどうにかしてくれるから問題ないわね」
経験のあるアニーがこう言うなら大丈夫そうだな。
「さすがに今日は帰らんが、どこまで行く?」
「午前中で進めるところまで行きましょう。AIちゃん、この先は?」
アニーがAIちゃんに聞く。
「基本的には同じです。変わるのは魔物が強くなったり、複数出るくらいです。十分に対処できます」
「大丈夫そうね。ここは稼ぎ時よ。私は天蓋付きベッドで寝ることが夢なの」
そのくらい買えるだろ。
いや、俺が買うことに意味があるんだろうけども。
「AIちゃん、どう思う?」
AIちゃんにも確認する。
「私も進むことを勧めます。稼げる時に稼ぐべきだと思いますし、皆様がおっしゃる通り、この町は長居すべき場所ではありません。周りから見たら無茶かもしれませんが、ぱっぱと稼いでぱっぱと帰りましょう」
確かにな。
この町はこいつら向きの町じゃない。
「稼ぐか」
「それがよろしいと思います。それともう1つ。地図を売るのはどうでしょう?」
「迷宮のか?」
「はい。ジーナさんが迷宮の地図が高いとおっしゃってました。私がインストールした地図と実際に私が正確に描いた地図と見比べますと、縮尺もバラバラで方向も地形も実際の地形とはかなり異なっています」
まあ、外の地図でもあの程度ならこの危ない迷宮の地図の精度はグッと落ちるだろうな。
「売れそうなのはわかったが、売っていいものか? リアーヌに止められただろ」
「ここは外国です。ましてや迷宮都市。影響はないかと……たとえ、何か言われてもさっさとセリアに戻ればいいだけです。このアクサ共和国とユーズ王国は敵対しているわけではありませんが、特別仲が良いわけではありません。この状況で他国を跨いでまで何かをしようとは思わないでしょう」
ふむ……
「確かにいらぬトラブルは避けるだろうな」
「はい。たとえ、何かをしようとしてもリアーヌ様がおられますし、国王陛下が守ってくださいます」
それもそうだな。
「じゃあ、地図を作ろうか。ただし、売るのは最後の最後だ」
売って大金を得て、転移で帰ろう。
「そうしましょう。高く売りつけてやります」
地図は期待できそうだな。
「じゃあ、行くか」
「はい」
俺達は休憩を終え、出発した。
その後も進んでいき、途中で行き止まりに当たることもあったが、タマちゃんのおかげで罠は回避できたし、魔物も問題なく倒していく。
そして、さらに奥に進んでいくと、珍しく4つの魔力を感じた。
「人間か?」
多分、向こうも俺達に気付いたようで足を止めた。
「敵性反応はありません。冒険者でしょう。この場合は敵意がないことを示すために端によります」
俺達はAIちゃんの言葉に従い、端に避けた。
すると、向こうも反対方向の端に行き、歩き出したので俺達も歩いていく。
そして、強そうなベテラン風の男冒険者4人のパーティーとすれ違ったが、軽く会釈しただけでそのまま立ち去っていった。
「これが迷宮のやり方か?」
「基本的にはそうです。ただ、これだけ問題なく、スルーできたのは上級がゆえにです。初心者用や中級用は数が多いこともあり、そういうトラブルも多いです」
これだけ死が身近な町では想像がつくな。
罠をかいくぐって魔物をコツコツ倒すより、帰りの冒険者を襲った方が楽なんだろう。
盗賊の発想だし、実際、そうだろう。
「上級は少ないわけだな?」
「このレベルに来るとわかっている魔物より、冒険者の方が得体が知れません。先ほどの4人もそう思ったはずですよ。女子供が中心で装備もロクに充実しているわけではない私達がこんな奥まで来ているんですから」
しかも、先頭に子猫で一番後ろが犬だもんな。
得体の知れない具合はすごい。
「声掛けとか会話はせんのか?」
「もちろん、あります。情報交換は大事ですからね。でも、向こうは男4人でしたし、マスターには必要ないでしょう。向こうもさすがにトラブルになりそうと思って、スルーしました」
おっさん4人では若い女中心のパーティーに声をかけづらいか。
どう見てもバカなハーレムパーティーだし。
しかし、含みを持たせる言い方だな。
「俺にはってどういう意味だ?」
「そのまんまです。昨日の女性4人だったら絶対に声をかけたでしょ」
いや、それは知り合いだから……
「かけたと思うが、他意はない」
名前を聞いてなかったから聞くだけだ。
それにちょっと気になることがある。
「はいはい……」
「にゃにゃ」
「ねー?」
小動物共、仲良くするな。
俺達はその後も進んでいき、昼になったのでセーフティーエリアで昼食を食べる。
その後も進んでいき、いい時間となったので引き返すと、階段を昇り、迷宮を出た。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
私が連載している別作品である『35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい』のコミカライズが連載開始となりました。
ぜひとも読んでいただければと思います(↓にリンク)
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