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第225話 セカンドアタック!


「じゃあ、行くか」

「にゃ!」


 タマちゃんがAIちゃんの頭からジャンプして地面に着地すると、階段を一段だけ降りる。

 そして、俺達の方を向き、ついてこいと言わんばかりに前足を振った。


「こいつ、本当に偉そうだな」

「それはもうお姫様ですから。パメラさんを始め、寮では完全にこの子が生活の中心です。タマちゃんがどんなイタズラをしても皆さん、仕方がないなーと言うだけで笑顔です」


 ギルドの女共は躾をしない奴らなんだな。


「ほら、タマちゃん、案内しろ」

「にゃにゃにゃ……にゃっ……」


 おい……こいつ、今、鼻で笑わなかったか?


「何て言ってる?」

「女のケツを……いや、なんでもないです。イエス、マイロードって言ってます」


 絶対に言ってない。


 タマちゃんが階段を降りていったので俺達も続く。

 そして、階段を降り終えると、タマちゃんが尻尾を立て、床の匂いを嗅ぎながら進んでいく。


「あれ? 尻尾が2本になってる?」


 リリーが首を傾げた。


「猫又だからな。ああいう妖だ」

「へー、かわいい!」


 甘やかすなっての。


「AIちゃん、こいつはちゃんとできてるのか?」

「多分、できていると思います。私だって完全に妖化すればできます」

「キツネになるのか?」

「はい! お母様です!」


 それ、平原に大穴を開けた化けギツネだろ。

 こんな迷宮でなるな。


「お前は今のままが可愛いと思うな」

「まあ、そうでしょうね!」


 AIちゃんがキツネ耳と尻尾を出し、ドヤ顔で胸を張る。


「にゃにゃにゃ」


 ん?


「何て言ってる?」

「ここに罠があるそうです。ここを踏むと、後ろにゾンビが現れるみたいですね」


 ほー……


「ホントか?」

「さあ? 踏んでみましょうか? ゾンビなら倒せますし」

「やってみ」

「わかりました」


 AIちゃんは前に出ると、タマちゃんの前の床を踏む。

 しかし、何も起きない。


「んー? 何も……狛ちゃん、行け!」


 背後から魔力を感じたので一番後ろにいる狛ちゃんに命じた。

 すると、こちらに向かって走っているゾンビに狛ちゃんが突撃する。


「狛ちゃん!」


 飼い主のアニーが叫んだ。

 しかし、狛ちゃんは猛スピードで駆けていき、ゾンビにタックルする。

 腹部に直撃を受けたゾンビは後方に飛んでいき、見えなくなった。

 そして、そんなゾンビを追って、狛ちゃんが駆けていく。


「狛ちゃん、変なものを食べちゃダメよ!」


 アニーが狛ちゃんを止める。

 まあ、可愛がっている犬がゾンビを食べてたら嫌だもんな。


「いえ、アニーさん、敵反応が消失しています。人食いゾンビもとい、グールは一撃でお陀仏です」


 あの走るゾンビはグールって言うらしい。


「あ、戻ってきた」


 リリーが言うように狛ちゃんが走って戻ってきた。

 そして、アニーの足元におすわりすると、咥えている魔石を渡す。


「良い子、良い子。絶対に大ムカデちゃんみたいになったらダメよ」


 魔石を受け取ったアニーが狛ちゃんをわしゃわしゃとあやす。


「女子供は犬猫が好きだな……」


 それに比べて、大ムカデちゃんの嫌われようだよ。

 まあ、言うことを聞かずに捕食し始める奴だけど……


「そりゃそうですよ。というか、女子供を問わずに虫の方が好きっていう人はあまりいないと思います。ましてやサイズが……」


 狛ちゃんとタマちゃんは普通か……

 それに比べて、虫共は……

 そういえば、蜂さんも大蜘蛛ちゃんも小さかったら皆、大丈夫だな。


「そうか……俺は別にどっちも好きなんだがな……子供の頃に獲ったカブトムシを見せてやりたいわ」


 弟は大興奮だった。


「カブトムシとクワガタはちょっと違う気がしますね……まあ、大丈夫ですよ。皆さん、キツネはお好きですから!」


 AIちゃんが腰に手をやって、胸を張り、耳をぴょこぴょこと動かす。


「にゃにゃ……」

「キツネの方が狩りは上手いですよ!」


 まーた、ケンカし始めた……

 キツネと猫は仲が悪いのかな?


「にゃにゃにゃ!」


 なんかタマちゃんが俺を見て、笑ってるんだけど……


「そっちの狩りじゃないです! あなた、マスターの式神のくせにマスターをバカにするんじゃありません!」

「にゃにゃ」

「え? まあ、そうですけど……」


 何の会話だよ……


「いいから行くぞ。とにかく、お前が罠を感知できるのはわかったから引き続き、頼むわ」

「にゃ!」

「任せるにゃって言ってます」


 いや、それは俺もわかる。

 ケンカしてないでわからないことを訳せよな……


 俺達はタマちゃんを先頭に進んでいく。

 すると、昨日と同じ分かれ道までやってきた。


「にゃ?」


 タマちゃんが振り向き、AIちゃんを見る。


「あっちです」

「にゃ」


 タマちゃんが左に歩いていくのでついていく。


「タマちゃん、止まれ」

「にゃ?」

「魔物だ」

「にゃにゃ?」


 うーん、わからん。


「何て?」

「タマがやってやろうかって聞いてます。爪で切り裂くかぺろりにゃ、だそうです」

「グールだぞ?」

「にゃ」


 タマちゃんは後ろに下がっていき、ぴょんと飛び、ナタリアの腕の中に収まった。


「…………この猫、チョロそうなのを選んでいる」


 アリスの言うこともちょっとわかる。


「私、チョロくないよ」

「にゃー?」


 タマちゃんが首を傾げながらナタリアを見上げる。


「おー、可愛い」


 ナタリアが笑顔になった。


「俺、あいつのことをあまり好きになれそうにないな……」


 あざとすぎるわ。


「まあ、タマちゃんはタマちゃんでマスターのためにホイホイしているんですけどね……」


 何のだよ。


「まあいい。来るぞ。アリス、エアカッターで足を狙え。その後にアニーが燃やせ」

「了解」

「やりますか……」


 2人が杖を構えると、奥からグールが走ってきた。


「…………エアカッター」


 アリスが出した風の刃がグールの足に当たり、体勢が前に崩れる。


「炎よ」


 少し遅れて、アニーが魔法を放つと、倒れているグールを燃やした。

 グールは燃えながらも這いつくばりながらもこちらに向かっていたが、ガクッと倒れ、煙となって消える。


「お、魔石じゃないものをドロップしましたね」


 AIちゃんがグールがいたところに近づき、腰を下ろした。


「何だ?」

「首飾りのようです」


 AIちゃんが戻ってきて、渡してくれる。


「ふーん……」


 青い宝石が付いており、結構高そうだ。


「綺麗ね」


 アニーが覗いてきた。


「いるか?」

「いらない。縁起悪すぎ」


 だよなー……

 迷宮で志半ばで倒れた誰かの遺品であり、人食いゾンビが落としたもの……

 俺も贈り物にはしたくない。


お読み頂き、ありがとうございます。

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