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第223話 三味線は嫌にゃー


「インストールって何?」


 パメラが聞いてくる。


「迷宮を出た時に他の冒険者と遭遇したんだよ。その際にAIちゃんが迷宮についてインストールした」

「便利というかズルいというか……何とも言えないわね」


 まあな。

 でも、使えるものは使うべきだ。


「…………大事なのはそこじゃなくて、ユウマが増やそうとしたことだけどね」


 しとらんわ。


「どういう意味?」


 パメラが余計なことを言ったアリスに聞く。


「…………その冒険者は4人の若い女性パーティーだった」

「あー……」


 パメラが納得し、俺を見てきた。


「言っとくが、違うぞ。AIちゃんがわざとらしくこけたんだ」

「はいはい。キツネさんって狩人ですもんね」


 うーん……これはあまり良くないな。

 他の連中の様子を見ても良い方向ではない。

 これはバランスが崩れる。


「本当に何でもねーよ。それよりもAIちゃんだ。迷宮はどうだ?」


 多少強引にでも話を戻す。


「概ね把握しましたし、問題ないかと……ただやはり罠です。私のサーチを超える隠蔽魔法がかかっているのが上級の迷宮のようですね」


 AIちゃんのサーチをねー……

 相当だな。


「他の冒険者はどうしてんだ?」

「そういうマジックアイテムを売っているようです。ただし、使い捨てのくせに金貨30枚します」


 高っ!


「今日の稼ぎから言えば黒字ではあるが……」

「金貨50枚のシミターはともかく、魔石がコンスタントに取れますから赤字が出ることはないでしょう。ですが、我々が目指すところはもっと上です」


 まあ、屋敷を建てることだからな。


「しかし、どうする?」

「私にお任せを」


 任せるって……


「どうするんだ?」

「私は死にません」

「却下」


 アホか。


「そうだよ、AIちゃん」

「…………それは悪手」

「いくら死なないって言ってもやめなよー」

「あんたに何度も死なれたらこっちが病むわよ」


 AIちゃんは確かに死なない。

 式神だし、もっと言えば俺のスキルだから俺が死なない限り、死ぬことはない。

 だが、それとこれとは別問題だ。

 緊急時には致し方ないと割り切れるが、さすがに金ごときのためにAIちゃんをイタズラに殺すことはできない。


「でも、金貨30枚ですよ? かたやこっちは護符です」


 まあ、そうなんだが……


『やめろ。こいつらはお前をそういう目で見てない』

『マズいですか?』

『はっきり言ってやる。俺の幸せの家庭にはお前も含まれているんだ。これは俺だけでなく、こいつらもそう思っている』

『わかりました』


 AIちゃんが納得する。


「金貨30枚は惜しいが、確実に黒が出るなら問題ないだろう」

「もったいないですけど、わかり……ん?」


 急にタマちゃんがコタツ机の上にジャンプした。


「どうした?」


 こいつが自己主張してくるのは珍しいな。

 いつもパメラにちょっかいかけているかコタツの中なのに。


「にゃー……にゃにゃにゃ! にゃー」


 わからん……


「あん? 猫の分際でキツネをバカにするか?」

「にゃー、にゃー!」

「愛玩動物め……!」


 なんか子猫と子ギツネがケンカしてる……


「AIちゃん、タマちゃんは何て言っているんだ?」

「やれやれにゃ。しょせんはキツネ。ここはタマがやってやるにゃって言ってます」


 ほう?


「それで?」

「タマの方が罠を見つけるのは得意にゃ。迷宮だか何だか知らないが、タマに任せるにゃ! って言ってます」


 タマちゃんに?


「できるん?」

「にゃー」

「何て?」


 俺のスキルで自我があるくせに俺にも何を言っているのかがわからないんだよな。


「しもべの旦那のためなら頑張るにゃって言ってますね」


 しもべ……パメラか。


「タマちゃん、私のことをしもべって思ってたんだ……」


 猫だからなー。


「お前らが寮で甘やかすからだろ」

「だって、可愛いんだもん……」


 もん……じゃねーよ。

 おかげでこいつ、俺の式神であることを忘れてんじゃねーか。


「AIちゃん、大丈夫か?」

「まあ、こんなに自信満々でこう言ってるんだから任せてみますか」


 うーん……


「タマちゃんってパメラの護衛だぞ?」

「護衛いりますかね? 平和な町ですけど……」


 万が一があるからなー……

 パメラは美人だし。


「ユウマ様、そもそもなんですけど、タマちゃんって戦えるんですか? 子猫ですけど……」

「にゃー」


 リアーヌが聞いてくると、タマちゃんが抗議の一声を上げる。


「子ギツネ、何て言ってる?」

「お前くらいなら一飲みにゃって言ってますね」


 やめんか。


「えー……」

「リアーヌ様、タマちゃんって普段はこんな子猫ですけど、正体は数メートルの化け猫です。寝坊したらそんな化け猫に咥えられて、朝飯よこせとベッドから引きずり出されたこともあります」


 やめんか。

 自分で狩ってこい。


「えー……」

「しかも、尻尾が2本ありました。可愛いのは可愛いんですけど、絶対に大蜘蛛ちゃんや大ムカデちゃんと同等のあれです」


 あれ言うな。


「こんなに可愛いのにのう……」


 リアーヌがタマちゃんを抱く。


「にゃー」

「何て?」

「遊んで、遊んで、だそうです」

「可愛い……」


 リアーヌが笑顔でタマちゃんを撫でる。


「寮でそうやって甘やかしてんだな」


 こいつがわがままなのはそのせいだろ。


「寮の皆で可愛がってるから……最近はギルドでも冒険者の方のアイドルに……」


 そりゃ増長するわ。


「タマちゃん、本当にいけるな?」

「にゃー! にゃにゃにゃ、にゃ」

「任せておくにゃ! タマがお前の交尾御殿……こら! 屋敷を建てるのに貢献してやるにゃって言ってます」


 リリーに三味線でも作ってもらおうかな……


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― 新着の感想 ―
やめろ、の所。念話じゃなくて良くない? まあ幼い姿とはいえ自分の母親が何度も死ぬとこみたら病みそう
タマちゃんにミリアムとヘレンをインストールすべきかな?
お猫様だししゃーにゃい
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