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最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜  作者: 出雲大吉
第6章

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221/250

第221話 好きになれそうにない町


「そんなことより、インストールしたのか?」

「はい。迷宮に関わることをインストールしました」


 便利な奴だわ。


「いけるか?」

「それについては少々、相談があります。今日はもう帰りましょう」


 帰るって言ってもなー……


「まだ昼だろ。リアーヌは協議って言ってたし、邪魔するのは悪い」


 あいつ、協議を放り出してきそうだし。


「ちょっとだけですよ。トイレに行くと言って抜け出してもらいましょう」


 まあ、それならいいか……


「ユウマ、ユウマ! せっかくだし、町を見て回ろうよ!」


 好奇心旺盛のリリーが誘ってくる。


「そうするか」


 そう言いながら懐から護符を取り出し、カラスちゃんを出した。

 すると、カラスちゃんが羽ばたき、飛んでいく。


「地図描くの?」

「いや、ごちゃごちゃした町だし、上から見ててもらおうと思ってな」

「確かに迷っちゃうかもしれないもんね!」


 うん、お前がな。

 カラスちゃんが見るのは主にリリーだ。


「マスター、シミターを売りに行きましょうよ」

「そうだな。まずはギルドに行って、その辺のことを聞こう」


 俺達はこの場を離れ、5番ギルドを目指して歩いていく。

 昼を過ぎたこともあってか、行きの時よりも人が多い。

 人も建物もごちゃごちゃしているのでやはり住むには適していないなと思っていると、カラスちゃんが肩にとまった。


「ん? どうした?」


 飛んでリリーを見張ってろっての。


「カー」


 カラスちゃんが一鳴きし、後ろを振り向いたので釣られて振り向くと、リリーが足を止めて、謎の置物を並べている露天商を覗き込んでいた。


「リリー」


 迷子になろうとするのが早いわ……


「え? あ、待ってよー」


 リリーが慌てて、走ってくる。


「マスター、手を繋いだ方が良いと思います。この町は変なものが好きなリリーさんへの誘惑が多いです」


 確かになー……

 前にリリーの部屋を見せてもらったことがあるが、本当に謎のものが多かった。

 そして、この町はそういうのもそこら中に売っている。


「リリー、来い」

「なーにー?」


 リリーが一番前にやってきたので手を取る。


「行くぞ」

「え? ユウマ、ダメだよー! こんな明るいうちからぁ……そういうのは帰ってから!」


 何を言ってんだ、こいつ?


「いいから行くぞ。カラスちゃん、これで大丈夫だと思うけど、見とけ」

「カー」


 カラスちゃんが一鳴きし、またもや飛んでいったので歩き出した。

 そして、ごちゃごちゃした道を進み、5番ギルドまで戻ってくると、ジーナのところに向かう。


「やあ、色男。早かったね」


 ジーナが笑いながら声をかけてきた。


「今日は下見程度だからな」

「そうかい。迷宮はどうだった?」

「想像以上に難易度が高かったな」

「ふーん……誰かは死ぬと思ったんだけどね」


 AIちゃんが死んだな。


「なんでそう思う?」

「迷宮を舐めるなってことさ。たまにあんたみたいな奴が来るんだよ。高ランクで実力もある。でも、それに過信し、迷宮を舐め、罠で死ぬ」


 まさしく、アニーが言うようなバカなハーレムパーティーか。


「迷宮と外ではまるで違うな」

「ああ、そうだ。隠された罠、迷路のような洞窟、絶え間なく襲ってくる魔物。他にも色々あるが、まず外ではありえないことが起きる。それが迷宮さ」


 確かに森や山では起きないことだな……


「最初にそういうことを教えてくれないのか?」

「キリがないよ。そうやって冒険者に寄り添うギルド職員もいないこともないが、そういう奴は1年と持たずに心が病んでしまって、辞める。ここはそういう町なんだよ」


 死亡率が高いゆえか……

 親身に教えた冒険者が次々と帰ってこなければ潰れるわな。

 ましてや、そういうことをする奴は優しい人間だし、どんどん自分を追い込んでいく。

 薄情と言われてもある程度のドライさがないと続けられないんだ。


「それは残念だな」

「仕方がないことさ。だから言っておくけど、ギルド職員を口説いても無駄だよ。絶対に迷宮冒険者なんか選ばないから」


 この町はそうだろうな。


「そうかい……まあ、死なんで済んだわ」

「ファーストアタックで死人が出なかったのは運が良かったか、相当な実力者か……まあ、両方だろうね」


 かもな。


「次は大丈夫だ」

「そうかい。まあ、好きにしな。一つアドバイスをしてやると、『まだやれる』って思った時が引けの合図だよ」

「わかった。それと聞きたいんだが、迷宮で得たものはどこで売るのが一番だ? 実はシミターを拾ってな」


 そう言って、AIちゃんを見る。

 すると、AIちゃんがカウンターに赤いシミターを置いた。


「ほう……これは良いものだね」


 ジーナがシミターを手に取り、マジマジと見る。


「わかるのか?」

「まあ、ここも長いし、目利きくらいできるさ。そして、嫌なことを言ってやると、このシミターは数ヶ月前に迷宮に行って、帰ってこなかった奴の武器さ。まだ若い女の子だったよ」


 ジーナは淡々と言葉を紡いだ。


「そりゃご愁傷様だな。俺達もそうならないようにしたいわ」

「そうしな、色男」


 俺ではなく、女共を死なせるなって言ってるな。

 まあ、当然のことだ。


「それでこれはどこで売ればいい?」

「ウチで買い取ってあげるよ。この町の特性上、こういうのがよく売買される。だからギルドでも買い取っているんだよ」

「他の方が高くないか?」


 どうせ転売するんだろうし、手数料を取るはずだ。


「高いところもあるし、安いところもある。探すかい? 言っておくが、ここは冒険者が命懸けで得たものを安く買い取ろうとする商人が集まっているんだよ?」


 来たばかりの初心者は素直にギルドに売るのが妥当か。


「マスター、売りましょう。面倒です」


 ウチのマルチでハイスペックな人工知能ちゃんはそう判断したわけね。


「わかった。ジーナ、買い取ってくれ」

「魔石は?」

「悪いが、魔石は売れない」

「あー、自分の女のところに売るわけね」


 推薦状に何か書いてあったか?

 いや、想像はつくか。


「シミターはいくらになる?」

「金貨50枚。ビギナーズラックだね」


 たったあれだけの仕事で金貨50枚……

 いや、魔石のことを考えたらもっとか。


「冒険者が死ぬわけだ」


 ぼろ儲けすぎて引き際を間違えそうだ。


「そういうこと。気を付けな」

「そうする。それともう一つ聞きたいんだが、この町で見るべきものはどこだ? これから町を巡ってみようと思うんだが」

「観光名所はないよ。しいて言うなら南の方に店がいっぱいあるね。でも、さっきも言ったけど、ぼったくりも多いから気を付けな。歓楽街もその一つさ。一夜で金貨100枚も取る人気嬢もいるんだよ?」


 拾ったドラゴンの鱗1枚か。


「女は買わんから知らん」

「買うものじゃなくて、もらうものですもんね」

「嫁にかい? これまでたくさんの冒険者を見てきたし、若くして死ぬ奴ばかりだったけど、あんたは長生きしそうだね」


 今世は100歳まで生きるわ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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