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第218話 圧


 露天商をスルーし、洞窟まで近づく。

 すると、斜め下に降りる縦穴があり、石でできた階段が見えた。


「階段か。これが人工物じゃないんだろ?」

「そうなりますね。もはや迷宮という名の魔物でしょう」


 俺達は魔物の胃袋に入るわけだ。

 そして、死んだ仲間の物を回収し、売る。

 良い職業じゃないな。


「アニー、狛ちゃんから降りろ。殿を任せる」

「まあ、そうよね……頼むわよ」


 アニーが狛ちゃんから降り、よしよしとあやす。


「マスター、私が前に出ます」

「頼むわ。お前らは絶対に俺の前もしくは、狛ちゃんより下がるなよ」


 後衛職の4人に指示をする。


「うん、絶対に出ない」

「…………いつも通り」

「援護はするからね!」

「魔法や矢を撃つ時は必ず、声掛けしなさいね。フレンドリーファイアが一番マズいから」


 まあ、大丈夫だろ。


「よし、行くか」


 俺達はAIちゃんを先頭に階段を降りていく。

 なのだが、いきなり足が止まった。


「あれ? ここ洞窟ですよね?」

「そうだな……」

「明るくない?」

「…………照明でもついてるのかな?」

「ないよ?」

「壁が光ってるんじゃない?」


 階段を降り始め、ライトの魔法を頼もうかと思ったのだが、周囲が明るい。

 外ほど明るいわけではないので奥まで見えるわけではないが、ライトがいらないくらいには十分に明るい。


「迷宮か……レイラがそういうもんって納得しろとは言ってたが……」

「マスター、あまり考えない方が良い気がします。ここはライトを使わずに済み、戦闘要員が減らなくて済んだと考えましょう」


 それもそうだな。

 いつぞやの洞窟では魔法使い全員がライトを使ったから戦えるのが俺と式神だけになっていた。


「わかった。行こう」

「はい」


 俺達は再び、歩き出し、階段を降りていく。

 そして、階段を降り終えると、まっすぐ伸びる通路があった。


「思ったより広いな」


 通路の幅は5メートル以上あるし、高さだって、同じくらいある。


「ですね。そして、やはり明るいです」

「ホントな。AIちゃん、地図はインストールしたな?」

「はい。完璧です」


 さすがはAIちゃんだ。


「ルートはお前に任せる。今日はお試しだし、奥を目指さなくてもいい」

「わかりました。でしたらセーフティーエリアなるものを目指します」

「頼む。俺も感知するが、サーチを頼むぞ。それと魔物が出たらすぐに下がれ。お前は死んでも死なないが、できるだけ死ぬところを見たくない」


 ちっちゃい母上だし。


「わかりました。では、参りましょう」


 俺達は先ほど言った陣形で歩き出した。

 すると、いきなり斜めに分かれる道となったのだが、AIちゃんが迷わず左に歩いたので俺達も続く。


「これ、地図がないと絶対に迷子じゃない?」


 ナタリアが後ろを振り向きながら聞いてくる。

 振り向いて確認してみると、先程の分かれ道の光景とまったく同じだった。


「同じ角度なのか」


 これは迷うわ。


「…………全然、わかんない。リリー、わかる?」

「無理……」


 そりゃ迷子の常連のリリーは無理だろ。


「上級の迷宮だからこれなのかしら?」


 アニーが聞いてくる。


「そうかもな。AIちゃん、把握はできてるな?」

「はい。ただ、地図と距離感が微妙に異なる気がします。地図を作成しましょう」


 AIちゃんが紙とペンを取りだし、地図を描き始めた。

 迷宮を歩きながらで大丈夫かと思ったが、AIちゃんなら大丈夫かと思い直し、歩いていく。

 すると、魔力を感じた。


「AIちゃん、下がれ。魔物だ」


 そう言うと、AIちゃんがすぐに後ろに引っ込んだ。


「…………ユウマ、どうする? 魔法を使おうか?」


 アリスが杖を通路の奥に向け、聞いてくる。


「いや、最初は俺が確認しよう」


 護符を取り出し、剣を作り、その場で待つ。

 すると、どんどんと敵が近づいてくるのがわかった。


「敵反応を確認。距離は20メートル」


 AIちゃんが教えてくれる。


「んー? 熊か?」


 敵の姿が見えたのだが、4つ足で歩く熊しか見えない。


「ユウマ! あれはメイジベアだよ! 魔法を使ってくる熊!」


 リリーがそう叫んだ瞬間、熊から高い魔力を感じた。


「狐火」


 剣を向け、金色の炎を放つ。

 それと同時に熊も火魔法を放ったようだが、俺の狐火に勝てるわけもなく飲み込まれ、直撃した。 

 金色の炎に包まれた熊が暴れるが、俺の狐火が消えることはない。

 俺はそんな隙だらけな熊に向かって踏み込み、剣を振った。

 すると、熊は一刀両断され、倒れる。


「ん?」


 熊は動かなくなったのだが、煙となって消えてしまった。

 そして、魔石が残される。


「これが言ってたやつか」


 魔石を拾い、じーっと見る。

 どう見ても魔石だ。

 それに質がかなり良く、これまで得たどの魔石よりも良い。


「解体がいらないのは楽だけど、変な感じだね」


 ナタリアがこちらにやってきて、魔石を見る。


「そうだな……リリー、さっきの熊を知っているのか?」

「うん。美味しくない熊で有名。別に毒があるわけじゃないけど、あれを食べるくらいなら餓死した方が良いとエルフの中で語り継がれるくらいに不味い。ちなみに、Bランクの魔物」


 まあ、消えたから食べられないけど、ちょっと気になるな。


「Bランクかー……私もBランクになったけど、あれに勝てる気がしない……」

「私も無理かなー?」

「ねー? ユウマのおかげでBランクになれただけだもんね」


 ナタリアとリリーが卑屈になっている。


「…………言っておくけど、私は元々、Bランクだけど無理だよ?」

「いや、そもそもヒーラー寄りの魔法使いとアーチャーじゃないの。後衛が熊に勝てるわけないでしょ。私達には私達の仕事があるの」


 そうやって補い合うのが仲間だからな。


「そうですよ。皆様方には皆様方の大切な仕事があります。マスターが皆様方を守ってくださいますし、生活も保障してくださいます。好きなだけ寄生し、依存してください。それがあなた方の幸せなのです」


 AIちゃん……

 もう少し、本音を隠せ。


「ユウマの子供を産めって聞こえた」

「…………それ以外に聞こえない」

「AIちゃんってずっとそうだよねー」

「最近はまったく隠さないわよね」


 女性陣が呆れ切った顔でAIちゃんを見るが、AIちゃんはドヤ顔を浮かべたままだった。


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