第215話 効果てきめんの推薦書
ギルドの中は吹き抜け構造の2階建てのようでかなり広く、セリアの町や王都のギルドよりも大きい。
丸テーブルが10卓近く置かれており、そこで話し合っているいくつかのパーティーっぽい冒険者達もいる。
冒険者達はギルドに入ってきた俺達をチラッと見たが、すぐに話し合いに戻った。
そんな丸テーブルの奥には受付があり、5人の受付嬢が座っている。
俺はその5人を見比べる。
「一番右がマスターの好みじゃないです?」
一番右の受付嬢は若いうえに可愛らしいと思うし、座っていてもスタイルが良いのがわかる。
「あれは既婚者だ」
「……少々、お待ちを」
AIちゃんが小走りで一番右の受付嬢のところに行き、話し始めた。
受付嬢は笑顔で対応しており、うんうんと頷いている。
すると、話を終えたAIちゃんが戻ってくる。
「先日、結婚されたそうです……」
「だろ?」
見ればわかる。
「……その女を探す嗅覚にはお母様もびっくりでしょうね」
AIちゃんがものすごく呆れている。
「表情や雰囲気でわかるわ。な?」
後ろの女性陣を見たが、全員が一斉に首を横に振った。
「確信して言えるけど、あんた、私が既婚者だったら絶対に声をかけてないでしょ」
アニーがジト目になる。
「確かにしないが、それは旦那さんに配慮してだぞ。他意はない」
「はいはい……一番左にしておきなさい。多分、お偉いさんよ」
「そうだな……」
アニーの言う通りだと思う。
一番左の女性は年配なのだが、他の4人とは微妙に距離がある。
間違いなく、上司だ。
『マスター、一番右はダメかもしれませんが、他の女性もお綺麗ですよ?』
AIちゃんが念話を使ってくる。
『お前が俺のために女を集めているのは理解しているが、ギルドの受付嬢はやめろ。軋轢を生む』
『パメラさんですか?』
『人はな、違うタイプで差がつくのは納得するが、同タイプだと納得できないんだ』
というかね、この都市で得た魔石はパメラに卸すことになっている。
こっちの受付と仲良くしたら面倒なことになるのだ。
『なるほど……さすがはプロフェッショナル。同タイプの女性はケンカしたり、不満を持ちやすいから良くないわけですね』
人って言ってるだろ。
「また内緒話してる……」
「…………きっとものすごく高度な話だろうね」
ナタリアとアリスが顔を見合わせた。
「嫌味を言うな。行くぞ」
俺達は一番左の年配の受付嬢のもとに向かう。
「いらっしゃい。見ない顔だね」
受付嬢が声をかけてきた。
「今日、着いたんだよ。ユーズ王国の冒険者だ」
「はいはい。ユーズね。この時期はよく来るよ」
遠征する冒険者も多いって言ってたしな。
「門番からここを勧められてきたんだが、迷宮というのは初めてでな。少し話を聞きたいんだが、時間はあるか?」
「初めてね……その前に冒険者カードを出しな。全員分な」
そう言われたので冒険者カードを提出し、後ろの女性陣も提出した。
「ふーん……あんたがAランクで4人がBランクか。このおチビちゃん2人はGランクね」
受付嬢がAIちゃんとリアーヌを見ると、AIちゃんがピースする。
「その2人は気にしなくていい」
「まあ、好きにすればいいが、門番がウチを勧めたのもわかるね。AランクにBランクが4人はすごいよ」
すごかろう?
「ああ。それとこれがウチのパーティーランクの証明書になる」
パメラにもらった証明書を渡した。
「ふむふむ。パーティー名は如月……ランクはBか。まあ、そんなところだろうね。でも、Bランクの4人は魔法使い。あんたも見慣れない格好をしているけど、魔法使いに見える。バランス的には大丈夫なのかい?」
「俺は接近戦もできるから問題ない」
あと狛ちゃんがいる。
「武器を持ってないようだけど?」
「その辺の説明もいるのか?」
「アドバイスがいらないなら言わなくてもいいよ。そういうのも含めて自己責任さ」
こいつ、絶対にお偉いさんだな。
「お前、名前は?」
「ここを仕切っているジーナだ。言っておくが、既婚者だよ」
仕切っている……
ギルマスか。
「そうか……それは残念だ」
「なんか怖いね、あんた……私、もう40歳だよ?」
「見えんな。30前半に見える」
本当に若く見える。
「ユウマ、やめようよ……」
「…………不倫は良くないよ」
ナタリアとアリスが袖を引っ張ってきた。
「何もせんし、口説いてもない。ただの挨拶だ」
相手がギルマスなら世辞の一つも言うもんだ。
ジェフリーにはせんがな。
「……あ、こいつら全員、あんたの女か。そういうこと……」
ジーナが納得する。
「なんでもいいな。俺は魔法で剣を作るから接近戦もできるんだよ。転生者なんだ」
「へー……それで変わった服を着ているんだね。まあ、実力があることも前世がとんでもない権力者なのもわかったよ」
やはりしゃべり方だろうか?
「あ、そうだ。推薦書もあるわ」
推薦書を取り出し、受付嬢に渡した。
「推薦書? ふーん……」
ジーナは推薦書と俺を見比べ、他の女性陣も見る。
「ちなみに、何て書いてあるんだ? 中身を知らん」
「あんたのツレがもう1人いることはわかったかな……まあいい。こっちだって他の女性冒険者を強制引退させそうな冒険者はいらないよ」
おい、パメラ、何を書いた?
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