第214話 リアンへ
翌朝、朝早くにパメラがやってきて、AIちゃんとリアーヌの分の冒険者カードを渡してくれた。
俺達はパメラに留守を頼み、転移する。
「おー、あそこがリアンかー」
「すごーい! おっきい!」
ナタリアとリリーが前方の都市を眺める。
昨日は夜だったので灯りしか見えなかったが、こうやって明るいうちに見ると、確かに大きい。
「…………一瞬にして他国か。チビマス、世界中の観光都市に行ってきてよ」
「そういうのは自分で行くから感動するんだぞ」
「…………それもそうか。いつか旅したいね?」
アリスが見上げてくる。
「そういう話だったな。良いと思うぞ。リアーヌがいるから疲れたら帰れるしな」
「お任せを! どこにだってついていきます!」
リアーヌが祈るように両手を握り、目をキラキラさせて見上げてきた。
「はいはい。そういうのは家で話しなさい、それよりもさっさと行くわよ。リアーヌは午後から仕事なわけだし、午前中のうちに拠点とする宿屋を探さないといけないのよ?」
アニーがパンパンと手を叩く。
「やはりギルドに聞いた方が確実か?」
「だと思う。私達はリアーヌの転移で帰るわけだし、王都で泊まった時みたいな高級宿じゃなくてもいいわ。ただ、適度に治安が良くて、適度に安いところ。そこを紹介してもらいましょう」
そういう条件の宿屋を探すのは一苦労だし、やはりギルドか。
どうせ、迷宮のことを聞いたり、紹介状を渡さないといけないからついでに聞くか。
「大部屋でいいな?」
「何部屋も借りる必要はないしね。稼ぎにきたんだから節約しましょう」
「よし、行くか」
狛ちゃんを出し、リアーヌを乗せると、街道を進み、リアンを目指して歩き出す。
そのまま歩いていると、町に入るための門と2人の門番が見えてきた。
「マスター、町に入ったら皆様方はマスターの奥さんということにしてください」
門に向かって歩いていると、AIちゃんが進言してくる。
「一応聞く。なんでだ?」
「Aランクであるマスターの引き抜きもあると思いますが、皆様方もBランクです。十分に高ランクですし、女性は別の意味でも勧誘されやすいです。面倒なのでそういうことにしましょう……事実ですしね」
それがいいか。
「わかった。出稼ぎに来たわけだし、余計なトラブルはごめんだ。お前らもそれでいいな?」
全員に確認する。
「それが良いと思う」
ナタリアがうんうんと頷く。
「…………鬱陶しいしね」
アリスが空を見上げた。
「えへへ」
リリーは照れている。
「男1人に女6人は誰がどう見てもそう見えるでしょうけどね」
いや、アニーは格好がどうなんだ?
「奥さんかー……いや、私、見えるか?」
見える、見える。
魔大陸の時も通じたし。
「パーティー名的にもそれでいいしな」
俺達は設定(?)を決めると、門に到着する。
「止まれ。冒険者か?」
門番の兵士が聞いてきた。
「ああ。迷宮で稼ぎに来た」
「ふーむ……」
兵士は俺をじーっと見た後に後ろの女共を見る。
「杖を持っているところを見ると女は魔法使いか?」
「ああ。俺はAランクで女共はBランクだ」
AIちゃんとリアーヌは違うけど。
「ほう……! それはすごいな。この国の者か?」
「いや…………ん? なあ、俺らの国って何て名前だ?」
ナタリアに聞く。
「あ、知らなかったんだね。ユーズ王国だよ」
へー……
「ユーズ王国のセリアという町の冒険者だ。冬は仕事にならんから遠征してきた」
「あー、セリアか。知ってる、知ってる。町が4つに分かれてるっていう意味わからん町だろ」
陛下ー、他国にも知れ渡ってますよー。
「それ、それ。アホだよな」
「まったくだ。まあ、わかった。一応、冒険者カードを見せてくれ。お前のだけでいい」
そう言われたので冒険者カードを見せる。
「確かに……高ランクの冒険者なら大歓迎だ。ようこそ、迷宮都市リアンへ」
やはり冒険者を集めている町なんだな。
「ギルドはどこにある?」
「いっぱいあるぜ?」
ん?
「この町もいくつかに分かれているのか?」
「おたくといっしょにするな。この町のギルドの9割の仕事が迷宮関係なんだよ。そんでもって、ギルドごとに扱っている迷宮が異なるんだ。何しろ、この町には50を超える迷宮があるからな」
50……
それは迷宮都市とも呼ばれるわ。
「稼ぎに来たんだ。上の方のランクの迷宮を扱っているギルドがいい」
「Aランクだもんな。だったら北区だな。この大通りをまっすぐ行ったら中央の時計台がある。そこを北に向かっていけば北区のギルドがある」
「わかった。通っていいか?」
「ああ。大金を稼ぐか死か……お前さんが無事にここを抜けて、故郷に帰ることを祈っているぜ」
帰れない者の方が多いんだろうな。
「感謝する」
礼を言うと、門を抜け、中に入る。
町中は王都のような都会であり、多くの人で賑わっていた。
だが、王都と違うのは明らかに冒険者らしき者が多いことだ。
半分以上は武器や杖を持った男女だ。
「確かに冒険者の町だな」
「ちょっと怖いね」
ナタリアが俺の服を掴んでくる。
「どいつもこいつもお前より下だから問題ない。それに俺のそばにいれば問題ない」
「うん」
ナタリアは笑顔で頷きながらアリスの背中をばんばんと叩いた。
「…………痛い。ナタリアはチョロいからすぐに盛り上がるなー」
俺達は大通りを歩いていき、中央を目指す。
多くの冒険者とすれ違うのだが、ほとんどの人間がまず布面積の小さいアニーを見る。
その後に俺やAIちゃんの服を見て、最後に狛ちゃんに乗っているリアーヌを見ていた。
「アニー」
「わかってるわよ。でも、これが私のデフォなの」
アニーはどこに行っても注目を浴びるなー……
地元であるセリアではそこまで注目されないが、王都ではさすがに皆が見ていた。
「アニーさん、単純な疑問なんですけど、恥ずかしくないんですか?」
AIちゃんがアニーに聞く。
「スタイルには自信があるからね。スタイルも含めてファッションなの。別に見せちゃダメなところは見えないからいいじゃない」
こだわりなんだろうな。
「見せるのも触らせるのもマスターだけですか……」
「あんたは余計な一言を付け加えるのをやめなさい」
アニーがジト目になると、中央の時計台に到着した。
「おー! おっきい時計だー!」
リリーが興奮している。
でも、それもわかるくらいには大きいし、高い。
「北って言ってたな? となると、あっちか……」
俺達は北に向かって伸びている大通りを歩いていく。
すると、突き当たりにギルドが見えてきた。
「あれか……」
「行きますか……」
「ああ。リアーヌ、狛ちゃんは外だ」
「わかりました」
リアーヌが狛ちゃんから降りたのでギルドの扉を開けると中に入った。
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