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第212話 蜂さん「頑張る!」


 今回の空の旅は余裕があったのでリアーヌと話をしながら飛んでいき、昼になると、一度地面に降り、転移で寮に戻った。


「おかえりー。どんな感じ?」


 ナタリアが聞いてくる。


「結構暖かいし、順調だな。リアーヌ、どれくらいで着くと思う?」

「ペース的にはかなり早いです。空ですから森なんかの遮蔽物もスルーですし、蜂さんがかなり速いのでこのままいけば夕方には着くと思います」


 1日で着くわけか。

 蜂さん、すごいな。


「…………ということは明日から仕事?」

「思ってたより、早いわね」


 生首魔法使いの2人が起き上がった。


「別に休みでもいいぞ。まずはギルドに行って、話を聞かないといけないし」


 急いでいるわけではないし。


「…………いや、私達も行く」

「話は皆で聞いた方がいいわよ」


 珍しくやる気に満ちているな。


「何かあったか?」


 不思議に思い、ナタリアとリリーに確認する。


「ユウマ達が出ている間にちょっと話をしただけ」

「ユウマがギルドに行くと、パメラとかリアーヌみたいに誰かを連れて帰りそうだからリアンのギルドには皆で行こうって話し合った」


 言わないけど、王都のギルドには皆で行ったけどな。

 そんでもって、お前らは俺に任せて、何もしゃべらないだろ。


「ふーん……まあ、どっちみち、最初は顔を見せておいた方が良さそうだな」

「…………そう。そういうわけで明日は皆で行く」


 まあ、理由はともかく、やる気があるのは良いことか。

 基本的に皆がこの部屋に集まっているが、アリスとアニーに至っては自分の部屋にいる時間よりもこの部屋にいる時間の方がはるかに長いし。


「あ、リアーヌは明日、大丈夫? とりあえず、拠点となる宿屋まではついてきてほしいんだけど」


 アニーがリアーヌに確認する。

 アニーはコタツから出さえすればこういう周りの調整なんかもできるのだ。


「午後からは王都で協議があるから午前中だけならいいぞ。また夕方に向かえばいいんだろ?」

「ええ。それで行きましょう。明日は朝からね。じゃあ、後はよろしく」

「…………チビマス、空のデートを楽しんできてね」


 アニーとアリスが生首に戻った。


「2人共、ご飯だよー」

「AIちゃんが持ってきてくれるよ」


 そういえば、AIちゃんがいないな。

 コタツの中にもいる感覚がないわ。


「おまたせでーす。AIちゃん特製のクライヴさんコピー料理でーす」


 AIちゃんが部屋に入ってくると、料理を机に並べた。


「コピー料理ってなんだ?」

「クライヴさんの能力をインストールしましたのでクライヴさんの料理も作れるんです。これはパエリアです」


 へー……


「お前、すごいな」

「でしょー。でも、やってわかりましたが、知識があっても腕がありませんでしたね。ちょっと焦げています」

「技術をインストールできるんじゃなかったのか?」

「背も低いし、腕も短いんですー」


 体型が違うから技術をインストールしても難しいわけか。

 まあ、よく考えたらAIちゃんって母上をインストールしているくせに弱いもんな。


「誰にだって失敗はあるさ。食べよう」

「マスターの優しさが心に沁みます。地味に私を忘れて置いていったことを許しましょう」


 いや、お前がコタツから出てこなかったんだろ。


 俺達はAIちゃんが作ってくれたパエリアなる米料理を食べる。

 確かにちょっと焦げていたが、十分に美味かった。

 昼食を食べ終えると、今度はAIちゃんも連れて、転移し、蜂さんでリオンの町を目指していく。


「おー、確かにこのくらいの気温でしたら風が気持ちいいですねー」


 AIちゃんは蜂さんの上で立ち上がり、風を感じている。

 綺麗な金髪がなびいており、楽しそうだ。


「お前、落ちるなよ」


 俺にしがみついているリアーヌが注意する。


「大丈夫です! キツネはバランス感覚にも優れているのです! いやー、リリーさんも連れてきてあげれば良かったですねー」


 ドラゴンの時もはしゃいでたしな。

 あいつは木の上で生まれ育ったエルフだから高いところが好きなんだろう。


「さすがにあのドラゴンならともかく、蜂で4人乗るのは厳しいだろ。それにスピードが落ちるし、今日中に着けなくなるぞ」

「それもそうですねー」


 AIちゃんが楽しそうにしているのを眺めながらひたすら進んでいく。

 すると、徐々に空が茜色に染まりだした。


「町が見えんぞ?」


 夕方には着くのでは?


「うーん、さっき川を通りましたし、この辺ですかね?」


 リアーヌが地図を指差す。


「まだだな……」


 確かにリアンに近づいているのだが、まだ距離はあるように見える。


「予想ではあと少しで着いてもいいんですが……」


 リアーヌが正座で座っているAIちゃんを見る。


「ま、まさか、私が重かったとでも? 羽根のように軽いと評判の私が?」


 カラスちゃんがぜぇぜぇと息を吐くくらいの羽根な。


「絶対にお前のせいだろ」


 リアーヌがジト目になった。


「蜂さん、違いますよね? うんうん……違うって言ってます。ちょっと途中で道を間違えたそうです」


 嘘つけ。


「リアーヌ、夜までには着くか? 蜂さんは夜も飛べないことはないが、方向感覚が怪しいぞ」


 詳しくは知らないけど、蜂って夜は動かない気がする。


「多分、大丈夫だと思います……」


 まあ、別に今日中に着かないといけないわけじゃないからいいけど……


「蜂さーん! 頑張ってー! マスターの補助が役目である私が足を引っ張るのは許されないんですー!」


 AIちゃんが蜂さんの胴体をバシバシと叩くと、蜂さんのスピードが上がった。


「おー、すげー」


 頑張るなー。

 そして、優しいな……


「さすがです! 体力が尽きても一回消えて、また出てくればいいので死ぬ気で飛んでください!」


 鬼か、お前は……

 あ、いや、性悪ギツネのアバターだったな。


 そのままスピードをフルにした蜂さんが飛んでいくと、徐々に暗くなり始め、さらに1時間が経った頃には辺りが真っ暗になっていた。

 しかし、前方には多くの灯りが見えている。


「町だな……あれか?」


 まだちょっと距離はあるのにすごい明るいな……

 王都の歓楽街を思い出す。


「はい。灯りの量的にもリアンでしょう。リアンは冒険者の町でして、眠らない町とも言われ、夜遅くまで歓楽街が開いていると聞いたことがあります」


 マジで歓楽街か……

 そりゃ冒険者が集まり、金儲けしているんだから自然とそうなるわけだわな。


「蜂さん、この辺でいい。後は明日、歩いていく」


 そう言うと、蜂さんが徐々に降下していき、地面に降り立った。

 リアーヌを抱えると、AIちゃんが背中に飛びついてきたので2人を持ちながらジャンプし、蜂さんから降りる。


「蜂さん、ありがとうな」

「さすがは蜂さんです!」

「あ、ありがとう……」


 リアーヌが若干、引いている。

 けっして、蜂さんが怖いわけではなく、蜂さんがぐったりしているからだ。


「お疲れさん。今度、蜂蜜をやるからな」


 そう言って、蜂さんを消した。


「帰りましょうか。すっかり遅くなってしまいました」

「そうだな。頼むわ」

「はい」


 俺達はリアーヌの転移で帰ることにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

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