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第211話 あっという間に他国


 翌朝、揺すられる感覚で目が覚める。


「ユウマ、ユウマ。朝だよ。リアーヌ様ももう来ているよ」


 んー? ナタリアか。


「眠い……」


 眠気と子ギツネの尻尾が暖かくて起きたくない……


「リアンに行くんでしょ」

「あー、そうだったな」


 眠いが、朝から行くって言ったのは俺なのでなんとか上半身を起こす。


「寒いぃ……」


 掛け布団がめくれたのでAIちゃんが身体を丸めた。


「コタツに行け」

「はーい……」


 AIちゃんが四つん這いでそのままコタツに潜り込んでいく。


『アニーさん、すごーい……』

「どこ触ってんのよ、子ギツネ」


 生首のアニーが文句を言う。


「ふあーあ……」


 いつもの光景だなーと思いながらコタツに入った。


「ユウマ様、おはようございます」


 リアーヌが笑顔で挨拶してくる。


「おはよう……」

「はい、ユウマ」


 これまたいつものようにナタリアがお茶を淹れてくれた。


「悪いな」

「ううん。今、アリスとリリーがご飯を持ってきてくれるから」


 良い奴らだわ。


 その後、アリスとリリーがご飯を持ってきてくれたので皆で食べた。

 そして、食事を終えると、着替え始める。


「ナタリア、寒いかもしれんからリアーヌにマフラーを貸してやれ」

「あー、前に震えてたもんね」


 ドラゴンに乗って魔大陸に行った時は完全に凍えていた。

 今回はあれほどではないだろうが、空の旅ではある。


「悪いのう……」


 ナタリアがリアーヌにマフラーを巻く。


「いえいえー。お似合いですよ」


 完全にお母さんだな。


「そういやパメラは? 仕事か?」


 暖かそうなリアーヌに聞く。


「本当は休みだったらしいですけど、ユウマ様がリアンに行くということで支部長の名前入りの紹介状を書くそうです」

「紹介状?」

「まあ、色々書くんじゃないですか? ユウマ様はAランクですので引き抜きをしてくる可能性があります」


 あー、はいはい。

 それね。

 王都でもあったわ。


「それをギルドに持っていけばいいわけだな?」

「はい。流出だけは勘弁願いたいです」

「せんわ。少なくとも、お前とアニーは嫌がるだろ」


 リアーヌは王族だし、アニーはこの町から出たがらない。


「そうしてもらえるとありがたいですね。まあ、ユウマ様がどうしてもというなら捨てますけど」


 王様が懸念していたことはまさしくこれだな。


「家族を捨てるな。どちらにせよ、この町を気に入っているから出ていかんわ」

「はい!」


 リアーヌが満面の笑みで頷いた。


『何気にアニーさんの心拍数が上昇――あいたっ!』


 コタツの中で何かが起きているらしい。


「じゃあ、行ってくるから留守番を頼んだぞ」


 アニーとコタツの中のAIちゃんは無視して、ナタリアとアリスとリリーに声をかける。


「いってらっしゃーい」

「…………蜂さんによろしく」

「頑張ってね!」


 リアーヌを抱えると、目の前が一瞬、暗くなる。

 そして、いつのまにやらどこかの街道に移動していた。


「ユウマ様、あそこの町が私が行ったことがあるライズの町です」


 リアーヌが地図を拡げ、見せてくれる。


「ここか?」


 見せてくれた地図は共和国のもののようだが、確かに北の方にライズと書いてあった。

 ちょっと暖かいし、南の国で間違いないだろう。


「はい。そして、ここがリオンですので方向はあっちですね」


 リアーヌが森の方を指差した。


「よし、行くか」


 懐から護符を取り出し、地面に投げた。

 すると、蜂さんが現れる。


「改めて見ると大きいですね……」


 リアーヌがちょっと引きながら蜂さんを見る。


「大丈夫か?」

「あ、いえ、大ムカデちゃんより大丈夫です」


 大ムカデちゃんは本当に人気がない。


「じゃあ、乗るぞ」

「はい」


 俺達が蜂さんに乗ると、すぐに浮き上がっていく。


「寒くなったら言えよ」

「大丈夫です。ユ、ユウマ様が温かいので……」


 リアーヌが頬を染め、抱き着いてきた。


『このロリ、すぐに発情しますよねー……』


 脳内にAIちゃんの声が聞こえ、ようやくあいつが来てないことに気が付いた。


『お前、来ないのか?』

『いつの間にやら置いてかれました。私はマスターの家を守ります』


 どうせコタツにいるくせに。


 皆、コタツから出ないなーと思っていると、蜂さんが上空で止まった。


「あっちだ」


 地図を見ながら指示を出すと、蜂さんが飛んでいく。

 ドラゴンほどではないが、蜂さんも速い。


「リアーヌ、大丈夫か?」

「はい。風は感じますが、こっちの方はまだ暖かいですし、ナタリアのマフラーが良い感じです」


 俺も寒くない。

 むしろちょうどいい感じで風が心地良い。


「ならいいか……しかし、これ、AIちゃんの地図と比べると雑だな」


 落書きだ。


「これでも最高の地図ですよ。あれが軍に見つかってはダメというのもわかりますでしょう?」


 王都で地図を売った際にリアーヌが自分のところで留めておいてくれたのだ。


「確かにこの精度の差はマズいな」


 月とスッポンだ。


「ですが、ご安心を。このリアーヌが必ず、だ、だ、旦……ユウマ様をお守ります」


 リアーヌがギルマスを辞めない理由だな。


「頼むわ」

「はい。私やパメラは冒険者として貢献できませんからそっち方面で頑張ります」


 まあ、パメラはわかる。


「お前は強いだろ」


 魔力もかなり高いし。


「いえ……私の魔法は特殊なので戦闘は厳しいんです。暴風の巫女と呼ばれていたのですが、その名の通り、竜巻を起こしたり、雷を落としたりできます。他には太陽も出せます」


 太陽は見たな。


「すごいな」

「自分で言うのもなんですが、威力がすごすぎるんですよ。しかも、消費魔力も大きく、連発できません。だから戦争やスタンピードでは活躍できますが、冒険者稼業は難しいです」


 リアーヌの能力は転移も含めて、本当に戦争向きだな。


「ふーん、確かに厳しいかもな。ましてやこれから迷宮とやらに行くわけだし」

「はい。迷宮みたいな洞窟では絶対に無理です」


 洞窟内で竜巻を起こされても困るし、雷も落とせないだろう。


「じゃあ、転移を頼むわ」

「お任せを。私はあなた様のためなら何でも致しますし、何人でもこ、こ、子ど……あ、鳥ですねー」


 本当だ。

 鳥が飛んでる。


『言えよ……』


 スルーしてやれ。

 顔が真っ赤だろ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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