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第210話 置物はAIちゃんが金色に塗りました


「レイラー、いるかー?」


 レイラの部屋の前まで来ると、扉をノックしながら声をかける。


『んー? なんだー?』

「ちょっと聞きたいことがあるんだよ」

『ふーん、まあいいぞ』


 許可を得られたので扉を開ける。

 すると、レイラはデスクにつき、書き物をしていた。


「何してんだ?」


 近づきながら聞く。


「北のトレッタにいるクライヴ達から手紙が来たんだよ。その返信を書いている」

「へー……何て?」

「まだかかりそうらしい。冬の間は帰ってこれそうにないと書いてあるな」


 そんなに大変なんだな。

 まあ、あの野蛮な魔族に占領されていたわけだし、仕方がないか。


「頑張ってほしいわ」

「あと、『すげー大穴があって話題になってる』って書いてあるな。隕石が落ちたらしい」


 はいはい。


「AIちゃんの妖狐無間地獄だわ」

「やっぱりお前らか……ハァ、まあいい。何の用だ? この時間は女共と一緒じゃないのか?」


 嫌な言い方。

 合ってるけど。


「ちょっと今後のことで話しててな。それでアクサ共和国のリアンって町に行ってみようかと思っている」

「リアン? 迷宮都市か?」


 クランリーダーは詳しいな。


「そうそう。パメラがこの時期に稼ぐならそこじゃないかって」

「確かにあの辺は暖かい気候だし、迷宮は年中稼げるが……お前、この冬はゆっくりするって言ってただろ。もう金がなくなったのか?」

「AIちゃんが屋敷を建てるべきって言ったんだよ。まあ、目標はあった方がいいからな」

「あー、はいはい。お前の大奥御殿は広さが必要だもんな」


 嫌な言い方。


「大奥じゃねーよ」

「同じようなもんだろ。マンションかアパートでも建てるのか?」

「俺は平屋がいい」

「平屋……えーっと、とんでもない広さにならないか? お前、息を吐くように女を集めるだろ」


 失礼な。


「そんなことせんわ。たまたま出会った人間とそうなっただけだ」

「それで前世は12人。現在は6人か? 来年には何人だ?」


 知らない。


「未来のことはわからん」

「そんなお前がリアンねー……まあ、ナタリア達が納得しているならいいわ。その報告に来たのか?」

「それもある。まず俺とリアーヌが行くが、その後にパーティーで行くと思う。クライヴ達もいないし、ここが留守になる」


 クランメンバーが誰もいないことになる。


「そうか。理由はともかく、働こうとしているクランメンバーを止めはせん」

「副リーダーのアニーも行くことになるがいいか?」

「もうあいつに副リーダーだった頃の面影はない。服の趣味は悪いが、多才で有能だったし、自立した女かと思っていたのだが、男にハマってすっかり堕落してしまった。たまにいるんだよな、ああいう男ができると急に甘えまくる奴」


 いや、コタツ……


「とにかく、留守にするからな」

「わかった。私は出かける予定はないし、ここが空になることはない。好きにしろ」

「悪いな。それとお前って迷宮に入ったことあるか?」

「あるぞ。リアンにも行ったことあるし」


 あ、リアンにも行ったことがあるのか。

 それはちょうどいいわ。


「そうなのか? 他国だぞ」

「私は13歳くらいで冒険者になった。それから10年はひたすら旅をしていたんだよ。その後に国に帰って、このクランを作ったんだ」

「へー……暇なのか?」


 よく10年も旅できるな。


「ああ。暇だ。なーんもやることがない。お前はどんな世界だろうとどこの国だろうと女を集め、アホみたいな大家族を作るだろう。それと同じで私もどんな世界だろうとどこの国だろうと1人なんだよ」


 すげー言われてるな……


「お前も家族を作れよ。旦那さんみたいな男もいるだろ」

「無理だ。どんな優れた人間がいても死者には勝てん。それにな、その10年で一時的とはいえ、パーティーを組んだこともあるし、若い奴らの面倒を見たこともある…………ストレスがヤバかった」


 自分以外を無能と思ってるんだからそりゃ大変だろう。

 そして、それがほぼ事実なのだから救いようがない。


「お前はなー……」

「それで今がある。何もしなければいいのだ」


 蛇のようにじっとしているわけだ。


「人間は誰しもいいところがあるぞ?」

「お前のそれは女だけだろ」


 うーん、不毛だ。

 こいつとは人間性がまるで違うから話がまったく合わない。


「まあいいわ。好きにしてくれ。それで迷宮について聞きたい。迷宮の仕組みなんかはパメラに聞いたんだが、意味わからん」

「私だってわからんわ。そういうもんって言われたらそうなんだって納得しろ。こっちの世界に陰陽道なんかを説明してもわからんようなものだ。文化も違うし、世界が違うんだ」


 まあ、そう言われたらそうなんだけどな。


「儲かるのか?」

「人による。迷宮と一言で言っても初心者用から上級者用があるんだ。当然、上級者用の方が儲かる」


 そこに行く奴の方が金も持っているし、装備品も充実しているからか。


「俺が死んで、俺の遺品を手に入れた奴は悲惨だな」

「お前は武器がないからな」


 異世界の服と護符だけだ。


「ウチの連中は行けるか?」

「後衛しかいないから上級は厳しいだろうな。でも、お前や式神がいれば問題ないと思う」


 狛ちゃんの出番か。


「じゃあ、上級でもいけるか」

「まあ、その辺は現地のギルドと相談しろよ。向こうは迷宮のプロだからな」


 餅は餅屋か。


「わかった。そんな感じで行くわ。こんな時間に悪かったな」

「それが仕事だ。それと一応、忠告しておくが、他国だからな? リアーヌの権力も使えんし、あっちのクランやパーティーは【風の翼】も知らん。お前のパーティーは妙齢の女しかおらんし、気を付けろ」


 おー……レイラがクランリーダーっぽい。


「クランと揉め事が起きたらリーダーさんが出てくれるか?」

「有無を言わさずに皆殺しにしていいならいいぞ。他国なんか知らんのはこっちもだからな」


 やっぱり槐でした。


 俺はレイラの部屋を出ると、厨房に行き、ワインと人数分のグラスを取る。

 そして、部屋に戻ったのだが、コタツ机の上にはキツネの木彫りの置物が置いてあった。


「見て、見て、ユウマ!」


 今朝からずっと静かだったリリーが嬉しそうにキツネの置物を指差す。


「すごいな。お前、本当に器用だわ」


 さすがはエルフ。


「えへへ……あ、これあげるね。ユウマ、キツネ好きでしょ」


 好きと思ったことはないんだが……


「ありがとうよ。今度はレイラに蛇を作ってやれ。あいつは蛇が好きなんだ」

「へー……蛇? 難しいな」


 頑張ってくれ。

 あと、木くずを片付けているナタリアに礼を言っとけ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
リリーは癒し枠
レイラのことも若干口説き始めてて笑う
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