第205話 実はちょっとお腹痛い……
「魔族の大将が人族とはねー……」
「しかも、転生者かー……」
「ルドガーってオットーさんだよね? そこで繋がるのか……」
「…………前にメレルが言ってた内通者がそのルドガーなんだろうね」
説明をすると、4人がそれぞれ思案顔になる。
「ユウマさん、魔獣っていうのは?」
パメラが聞いてくる。
「ケルベロスっていうらしい。フォルカーのあの自信だと相当の魔物だろう」
どんなのかはわからないが、地獄のバケモノらしい。
「リアーヌ様、いかがしますか?」
「ユウマ様に頼るしかない……」
「でも、ユウマさん、ケガをしておられますけど……」
「まあ……」
パメラとリアーヌが俺を見てくる。
「別に問題ないぞ。大蜘蛛ちゃんや大ムカデちゃんに任せればいい」
バケモノ相手には式神だろう。
「すみませんが、お願いします」
リアーヌが頭を下げた。
「構わん。それより王国軍の方をどうにかしろ。巻き込まれるかもしれんぞ」
「そうですね……叔父上に相談してきます」
リアーヌは頷くと立ち上がる。
「今からか?」
「時間がありませんから。それにこの時間ならまだ起きているでしょう。行ってきます」
リアーヌはそう言うと、転移を使い、消えていった。
「さて、戻ってくるまでは待機だな」
「マスターはお休みになられた方が良いですよ」
AIちゃんがそう言うと、アニーとナタリアが立ち上がり、こちらにやってくる。
「なんだ?」
「横になってなさい」
「ほら」
2人は両脇から俺を支え、布団まで運んでいく。
「俺はおじいちゃんか」
「いや、おじいちゃんじゃないですか」
うるさい、子ギツネ!
俺は2人に布団で寝かせられると、肘を頭に置き、アニーとナタリアを見上げた。
「何? 添い寝がいるの?」
「いつもAIちゃんと寝ているしねー」
布団が一つしかないし、AIちゃんは小さいから問題ないんだ。
暖かいし。
「いらんわ。それよりも酒をくれ」
「ダメに決まっているでしょ」
過保護だなー。
もう痛みもほぼないし、問題ないというのに……
「ハァ……」
俺は2人に見張られながらリアーヌを待つことになった。
そして、しばらく待っていると、リアーヌが戻ってくる。
「ただいま戻りました……ん? 何をしているんだ?」
リアーヌが布団に腰かけているアニーとナタリアを見る。
「見張ってる」
「ユウマが安静にしないから」
「ふーん……」
リアーヌは俺の正面に来ると、正座で座った。
「もう完全に女を侍らかす人ですねー……」
AIちゃんが呆れたが、お前が推奨したんだろうが。
「それで? 王様は何て?」
正面にいるリアーヌに聞く。
「事情を説明しました。例によって、ケルベロスをお願いしたいそうです。褒美に貴族にしてやるぞって言ってましたね」
「つまらん冗談だ。軍はどうするんだ?」
「明日の夕方には一時的に後退するようです」
よし、これで邪魔な軍はいなくなったな。
「だったらそれくらいに転移しようか。トレッタの町に現れるだろうからそれを待とう」
「わかりました。ユウマ様はそれまで安静にしてください」
「まあ、やることもないし、ゴロゴロしてるわ」
仕事もないし、いつものことだ。
「では、今日はこれで失礼しますね……私はあなたと共にあります」
リアーヌが俺の右手を両手で取り、祈るように自らの額に当てた。
「なんだそれ?」
「まじないのようなものです。パメラ、お暇しよう」
「はい。ユウマさん、ゆっくり休んでね」
リアーヌとパメラは立ち上がると、転移で帰っていった。
「あんた、リアーヌに何かした?」
2人が帰ると、アニーが聞いてくる。
「さあ?」
リアーヌに化けたフォルカーを突き殺したくらいだ。
『俺は自分の女の匂いは絶対に忘れないって言ったのじゃないですかね? リアーヌさん、狛ちゃんの背中をバシバシ叩いてましたよ』
あー……
いや、狛ちゃんを叩くな。
「まあいいわ。寝るか。お前らも寝ろ」
「絶対にお酒を飲んじゃダメよ?」
お前は医者か。
いや、薬師様だったな……
「わかってるよ」
この日は解散となり、皆が自分達の部屋に帰っていったので休むことにした。
そして、翌日、この日も朝から布団でゴロゴロと過ごしている。
「なあ、もうそんなに痛みもないし、治ったんじゃね?」
今日も布団の上で見張っているアニーとナタリアに聞く。
「そんなにすぐには治らないわよ」
「ヒールで折れた骨をくっつけたんだけど、完全にくっつくまでは時間がかかるんだよ。アニーさんの薬でそれを早めているけど、それでも時間がかかると思う。大丈夫に思えるだろうけど、無理に動いたらまた折れるよ?」
マジかよ……
「さっさと終わらせて休むかー……ナタリア、お茶」
「はいはい」
ナタリアがお茶を取ってくれたので受け取って飲む。
そうやって至れり尽くせりで過ごしていると、昼になり、リアーヌがやってきた。
「ユウマ様、予定より少し早いですが、参りましょう」
リアーヌはやってくると、すぐに提案してくる。
「何かあったか?」
「偵察していた軍船が国籍不明の船を発見したようです。おそらくですが、例の船かと……」
思ったより早く着いたか……
「わかった。行こう」
別に昼だろうが、夕方だろうが変わらん。
「マスター、皆で行きますか? 少なくとも薬師さんとヒーラーさんは必要だと思いますけど……」
そんなに重症じゃないんだけどなー。
「全員でいいだろ。リアーヌ、トレッタの町から少し離れたところに転移できるか?」
「はい。そうする予定です」
「じゃあ、それで」
俺は立ち上がると、リアーヌの手を取る。
すると、AIちゃん、アニー、ナタリア、アリス、リリー、そして、朝からいたパメラもリアーヌに触れた。
「お前も行くのか?」
「危険はなさそうなので」
まあいいか。
「リアーヌ、頼む」
「はい。では、飛びます」
リアーヌがそう言うと、視界が暗くなった。
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