表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

204/242

第204話 帰還


 消えることのない金色の炎はフォルカーを燃やし尽くすと、灰になり、風で飛んでいく。


「死にましたよね?」


 声がしたので振り向くと、メレルが立っていた。


「そうだな」

「あ、あの、怖いんでその目と魔力をどうにかしてくれません? ついでに爪も……」


 そう言われたので妖力を抑える。


「これで諸悪の根源は倒した」

「そうですね……まさか人族とは……」

「だから言っただろう。種族より個人だ。転生者とはいえ、こんな奴もいる」

「はい。あなたのようなバケモノもいます」


 バケモノ言うな。


「マスター、ご無事ですかー?」

「大丈夫ですか!?」


 チビ2人が狛ちゃんと一緒にやってくると、お腹をさすってきた。


「問題ないが、ヒールとか使えんか?」

「ナタリアさんです」

「ナタリアですね」


 使えないわけね。

 まあ、帰ってヒールをかけてもらうか。


「さて、色々とあったが、まだ仕事が残っているな」

「地獄のバケモノでしたっけ?」


 AIちゃんが確認してくる。


「らしいな。どんなもんか……リアーヌ、北に飛べるか?」

「はい。それは可能です。ですが、少し休まれた方がよろしいでしょう」


 まあ、来るのは明日の夜らしいからな。

 まだ1日ある。


「そうするか……帰る前に一度、港の方の海岸に飛んでくれ。ここにもう用はないし、援軍の船が気になる」

「わかりました。では、触ってください」


 そう言いながら両腕を伸ばしてきたので抱っこし、抱える。

 その時にリアーヌの匂いを嗅いだが、やはりあの賊とは全然、違う匂いだった。


「行くぞ」


 そう言うと、AIちゃんとメレルもリアーヌに触れ、海岸に転移する。

 すると、港の方が明るくなっており、大蜘蛛ちゃんが大暴れしているのが見えた。


「やってんなー……」

「あれは兵士と戦闘中ですね。まあ、相手にならないでしょう」


 メレルが嫌そうな顔で言う。


「大ムカデちゃんもいるからな」

「もういいでしょう。船はほぼ見えなくなっています」


 確かにあれだけあった軍船の姿はない。


「消すか……」


 俺は遠くにいる大蜘蛛ちゃんと大ムカデちゃんを消した。


「ありがとうございます。これで何とかなりそうですね」


 メレルが礼を言ってくる。


「そうだな……お前はどうする?」

「これでお別れです。私はこれからフォルカーが死んだことを仲間に伝えます。頭を失えばあとはただの賊です。何とかなるでしょう」

「そうか……まあ、頑張れよ」

「私はここで終わりですけどね。十分に働きましたし、お暇してスヴェン様の所に行きます」


 まあ、十分に働いたしな。


「スヴェンには上手く言えよ」

「そうします。あなたは死んだし、軍はなくなった」


 あいつが信じるかねー?


「まあ、任せるわ」

「はい。では、これで……二度と会わないことを祈っています。ご飯をご馳走していただきありがとうございました」


 メレルはそう言って頭を下げると、町の方に歩いていった。


「死なんかったか……」

「フラグがビンビンでしたのにねー……」

「フォルカーに殺されると思ったんですけど……」


 なー?


「うるさい、浮気男とダメ女共! 揉めろ! 揉めて修羅場を起こせ! ばーか!」


 メレルはそう言い捨て、走っていった。


「今度は捨て台詞を言えましたか……」

「やっぱり死にそうにない奴だなぁ……」


 AIちゃんとリアーヌが呆れる。


「一旦、部屋に戻ろう」

「わかりました」


 俺達はこの場をあとにし、転移で帰ることにした。




 ◆◇◆




 部屋に戻ると、皆がコタツに入って待っていた。

 俺達は靴を脱ぐと、いつもの席に座って、コタツに入る。


「どうだった?」


 コタツに入ると、アニーが聞いてくる。


「その前にナタリアさん、マスターにヒールをお願いします。腹部を蹴られていました」

「え!? 大丈夫なの!?」


 AIちゃんが要請すると、ナタリアが驚いた。


「命に別状はありませんが、かなりの重症です。やせ我慢していらっしゃいますが、肋骨が折れてますね」


 ……え?

 マジ!? 折れてんの!?

 確かにめっちゃ痛いけど、そんなに威力があったのかよ……


「折れてる!? 大変!」


 ナタリアは立ち上がると、俺のところに来る。

 そして、腹部に触れた。


「ヒール!」


 ナタリアが回復魔法を使ってくれると、痛かった腹部が温かくなり、次第に痛みが消えていく。


「ユウマ、これを飲みなさい」


 アニーがどこからともなく、紫色の液体が入った小瓶を取り出した。


「なんだこれ? 毒々しいな……」

「骨折ならヒールでは完全に治すことは無理よ。これで回復を早めて」


 そう言われたので小瓶を受け取る。


「いやー、毒々しい……まあ、毒でも俺には効かんか」

「なんで私があんたに毒を渡すのよ」


 アニーがジト目になった。


「わかってるよ」


 そう答えると、小瓶を開け、一気に飲み干した。


「味も何もないな。これ、効いているのか?」

「即効性のものじゃないわよ。10日は安静にしなさい。どうせ、例の魔族の大将は倒したんでしょう?」


 10日か……


「確かにフォルカーは倒したんだが、まだ残っているんだわ……」

「どういうこと?」

「敵の頭は倒したし、援軍の軍船も大蜘蛛ちゃんと大ムカデちゃんが破壊した。でも、本命の援軍はすでに出航しているらしく、明日の夜にはトレッタの町に着くらしい」

「マジ? なんでそんなことになってるの?」


 俺は皆にさっきまでのことを説明することにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ