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第203話 フォルカー・デイヴィス


 フォルカーは斧を担ぎ、ニヤニヤと笑っている。

 俺は懐から護符の束を取り出すと、剣を作った。


「いいね。異世界人って感じがする」


 フォルカーがそう言って構える。


「お前は普通だな」


 斧を持っている賊だ。


「そうかぁ? 俺、強いんだぜ?」

「知ってる。狐火!」


 剣先をフォルカーに向けると金色の炎が飛び出す。

 だが、狐火はフォルカーの前で霧散した。


「すげーだろ?」


 魔法封じか……


「面倒だな」

「まあ、そう言うな」


 フォルカーは斧を振り上げると、踏み込んでくる。

 そして、あっという間に目の前に来ると、斧を振り下ろしてきたので横に飛んで躱した。

 斧はそのまま屋上の床に当たり、砕けた石が飛び散る。


 俺は斧を振り下ろして隙だらけになったフォルカーに斬りかかった。

 しかし、剣がフォルカーに当たる前に護符でできた剣が護符に戻ると、バラバラになり、風で舞っていく。


「これもかい……」

「ははっ! ほらよっ!」


 フォルカーは斧を持ち上げると、払ってきた。


「チッ!」


 俺は後ろに飛び、斧を躱す。


「どうしたー? この程度の奴がスヴェン、ドミク、そして、ルドガーをやれるとは思えんのだが?」


 スヴェンは生きてるよ。


「魔法封じが邪魔だな……」

「良いだろう? ルドガーにも渡しておけば良かったわ」

「渡しても無駄だがな」


 俺は霊力ではなく、妖力を集中させ、フォルカーを見る。


「あん? 目の色が変わったぞ。なんだそりゃ? それに凄まじい魔力だわ。こりゃマジで魔人だな……ん?」


 フォルカーが何かに気付いたように懐に手を入れると、護符を取り出した。

 そして、その護符は徐々にボロボロになり出すと、発火した。


「あちっ、あちち!」


 フォルカーは燃えた護符を慌てて、捨てる。


「死ね。狐火!」


 俺はその隙に指をフォルカーに向け、狐火を出した。

 炎はまっすぐフォルカーに向かって飛んでいく。


「はっ! おもしれー! おらぁ!」


 フォルカーは狐火に向かって斧を勢いよく振り下ろし、狐火をかき消した。

 そして、俺に向かって踏み込んでくると、斧で薙ぎ払ってくる。


 俺はそんな斧を掴んだ。


「は?」


 斧を掴まれたフォルカーは呆けた声を出したのでもう片方の手の爪を立て、切り裂く。

 フォルカーはとっさに左腕で庇ったが、左腕から血が飛び出た。


「チッ!」


 フォルカーは斧を手放すと、後ろに飛んで距離を取る。

 俺は掴んだ斧をそのまま遠くに投げた。


「この程度か?」

「お前、絶対に人間じゃないだろ。獣にしか見えん」


 人間だよ。


「どうでもいい。これ以上は無駄だぞ」

「やれやれ……とんだバケモノだぜ」


 フォルカーはニヤニヤと笑いながらも懐から瓶を取り出す。


「給水か? 別にいいぞ」

「どうも。これは俺の部下だったマッドサイエンティストが作った強化薬だ」


 あ、やっぱりダメ。


「強化薬? 強くなるのか?」

「というより、人間をやめる薬だな」


 フォルカーはそう言うと、蓋を開け、薬を飲んだ。

 すると、フォルカーの目が血走り、震えだす。


「絶対に飲んだらダメな薬だろ……」

「ダメな薬だ……ぐっ! ががっ」


 震えているフォルカーが苦しみだした。


「中毒か? 苦しそうだから楽にしてやろう。狐火!」


 先程までよりも威力を上げた狐火を放つ。

 すると、金色の炎がフォルカーに向かって飛んでいった。


「すぅ……はっ!!」


 フォルカーが息を吸い、勢いよく吐くと、狐火が霧散する。


「確かに人間をやめているな……」


 アホか……


「行くぞ……手加減はできないし、頭が痛いからさっさと終わらせてやるっ!」


 フォルカーはそう言うと、殴りかかってきた。

 その速度は先程とは比べ物にならない。

 だが、この程度なら躱せる


 俺は大振りの殴りを躱すと、フォルカーの胴体を爪で切り裂いた。

 すると、フォルカーの身体から血が噴き出す。


「痛くもねーよ」


 フォルカーはまったく怯まずに俺の腹に向かって蹴り上げてきた。

 とっさに腕を出して受けたが、腹部にものすごい衝撃がくる。


「ッ!」


 俺は慌てて距離を取ったが、目の前にはフォルカーの顔があった。


「逃がさん」


 フォルカーは拳を強く握ると、俺の顔面に向かって突き出す。


「舐めるな!」


 拳が届く前に飛び上がると、膝をフォルカーの顎に直撃させた。

 すると、さすがのフォルカーも数歩、下がる。


「ぐっ……!」


 フォルカーは頭を抑えるようにふらついた。

 いくら痛みがなかろうが、脳震盪は避けられないのだ。


「死ね」


 爪を立てると、踏み込み、フォルカーの胴体に向かって突き出した。

 直後、フォルカーの姿がリアーヌに変わる。

 だが、俺は一切、止めることなく、手を突き出し、リアーヌの胸に突き刺した。

 すると、リアーヌの口から血がこぼれる。


「……普通、止めるもんだぜ?」


 リアーヌが笑いながら男の声を出した。


「お前が姿を変えられるのは魔族に化けた時点でわかっている。それに姿は変えられても匂いは変えられないようだな。俺は自分の女の匂いは絶対に忘れない」


 全員覚えている。

 なんならAIちゃんも覚えている。


「獣じゃねーか……ぐっ!」


 俺が腕を引き抜くと、リアーヌの姿からフォルカーの姿に戻る。

 そして、フォルカーの胸と口から血が噴き出した。


「最後に一つ聞いていいか?」

「なんだ……?」

「国を滅ぼして何をするんだ?」


 意味ないだろ。


「……前世の心残りさ。俺達に盗めないものはないし、すべてを奪ってみせる。だから国盗りっていうのをしたかった」

「くだらん。身の程を知れ」

「いや、お前さえいなければできたと思う、ぜ……まあ、最後に……ケルベロスに滅ぼされて……くれや」


 フォルカーが息も絶え絶えに膝をつく。


「ないな。それとさようならだ、大罪人」


 俺は狐火を出し、フォルカーを燃やし、とどめを刺した。


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