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第200話 あいつらを連れてこなくて良かった


 上に登ると、そこは確かに厨房だった。

 床はタイル張りとなっており、俺が横にずらした何かはタイルの一枚だったようだ。


 俺達が登り終えるとすぐにメレルも登ってきた。


「AIちゃん、サーチは?」

「反応がありません」


 やはりないか……


「んー……」

「どうしましたか?」


 メレルが聞いてくる。


「AIちゃんのサーチに反応がないということは30メートル以内に誰もいないということだ。そして、俺の探知でも魔力を感じることができない。魔族は魔力が高いし、たとえ、屋内でも少しくらいは感じることができるはずだ」

「あなたの探知の範囲は?」

「だいたい500メートルだ」


 正確に言うと、550メートル。


「500……バケモノ……いや、それよりも何も感じないんですか?」

「ああ。そういうマジックアイテムはあるか?」

「あるにはあります。ですが、そんなに流通するようなものではないです」


 兵士全員が持っているわけがないか……


「大蜘蛛ちゃんと大ムカデちゃんの所に向かったか?」

「そうだと思います。でも、全員とは……」


 普通は人を残すわな。

 ここが本拠地なわけだし。


「ということは罠か……」

「そうなるかと……ですが、これは想定内です。敵が私達が侵入してくると予想しているのはわかっていることです」


 だよな。


「今さら引けん。リアーヌ、頼むぞ」

「わかっています」


 これはいざとなったら転移で逃げるということだ。

 敵陣だし、一つの悩みが手遅れになることもある。


「リアーヌさん、優先すべきは御身とマスターです。メレルさんはどうでもいいですし、私は死んでもいくらでも復活できますので捨ててください」

「わかっている」


 リアーヌが頷く。


「よし、行くぞ。メレル、どうする?」

「まずは捕まっている仲間のところに行きましょう」


 仲間ね……


「わかった。案内しろ」

「こちらです」


 メレルが厨房から出たので俺達も出ると、慎重に通路を歩いている。

 だが、人っ子一人いないし、魔力も感じない。

 AIちゃんが何も言ってこないということはサーチにも反応がないのだろう。


「メレル、あのな……」

「わかってます。わかっていますが、確認をしないといけないのです」


 メレルは俺が言いたいことがわかっているようだが、首を振った。

 そして、そのまま進んでいくと、とある部屋の前でメレルが立ち止まる。


「ここです」

「そうか」


 俺は頷くと、リアーヌの後頭部をそっと抑える。

 察したリアーヌは顔を俺の肩に埋めた。


「開けます」


 メレルはそう言って、扉を開ける。

 扉には鍵がかかっていないようで簡単に開いた。

 直後、血の匂いが俺の鼻をつく。


 俺は随分前から何の魔力も感じていなかった。

 それの意味することはここに兵士がいないということと……


「ダメでしたか……それに……」


 部屋の中は見たことない椅子や器具が置いてあり、なんとなくだが、拷問部屋なんだろうなという気はした。

 そして、そんな部屋の中央には何人もの人の首が並べられており、部屋の隅には首のない身体が折り重なっていた。


「首狩りか……」

「だと思います。我々がここに来るのをわかっていて、こうしたんでしょう」

「情報を得たのかね?」


 そのために生かしたんだろうし。


「いえ……町を封鎖していますし、どうとでもなると思ったんでしょう。元々、戦力が違いますしね」


 取るに足らないと判断したか……


「首を持ち帰るか?」

「いえ、魔族には死者を弔う文化がありません。死んだのならば仕方はないです。次の目的に移りましょう」


 メレルがそう言った瞬間、魔力を感じた。


「マスター! 敵性反応複数! あの遺体の山からです……え?」


 AIちゃんが教えてくれたのだが、途中で呆けた。

 何故なら、遺体の山が動いたからだ。


「そんな……ゾンビ?」


 遺体の山が動いたと思ったら次々と首のない遺体が立ち上がってくる。


「魔物か?」

「いえ、あれは確かに仲間です……しかし……」

「メレル、どちらにせよ、敵だ。どうする?」


 俺は立ち上がった遺体に指を向ける。

 何故なら、AIちゃんが敵認定したうえにこちらにゆっくりと向かってきているからだ。

 確実に襲ってくる。


「くっ! すみませんが、やってください」


 メレルに頼まれたので指先に霊力を込めた。


「狐火!」


 俺の放った炎はこちらに向かってくる遺体を燃やす。

 その後も火力を抑えつつ、遺体を燃やしていった。

 そして、最後の一体を燃やすと、腕を下ろす。


「雑魚だな。俺達を殺す目的ではない」


 びっくりはしたものの動きは遅いし、魔法を放ってくる様子もなかった。


「嫌がらせでしょうね。見せしめとかこういうのが好きな男なんです」


 性格が悪いな……


「お前ら、よくそんなのの下につくな」

「別に上のことなんてどうでもいいですからね。私は給料が良ければいいです。そして、割に合わないなら辞めます」


 メレルは俺のことをじーっと見てくる。


「この仕事は割に合うのか?」

「大赤字です。ですが、向こうが私を敵認定してますし、もはや引けません。これ以上、スヴェン様に迷惑をかけるわけにはいきませんし、あんな危険な男は放っておけません」


 そこは同意。


「では、行くか」

「そうですね。フォルカーを探さないと……もしかして、港の方ですかね?」


 俺も最初はそう思った。


「いや、上にいる」

「え?」

「遺体が動いたと同時に上から魔力を感じた。多分、フォルカーだろう」


 挑発だな。

 遺体を動かすために魔力を使ったのかはわからないが、そんなことに意味はない。

 奴は上に来いって言っているのだ。

 しかし、何かの違和感がある。

 何だろうか?


お読み頂き、ありがとうございます。


これが今年最後の更新となります。

今年は書籍も出ましたし、非常に嬉しかったです。

これも皆様の応援のおかげであり、大変ありがたい限りです。

来年も更新していきますので引き続きよろしくお願いいたします。


良いお年を(@^^)/~~~

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