第198話 作戦
昼食を食べ終えると、ナタリアが入れてくれたお茶を飲み、一息つく。
「それでどうだったの? メレルは無事だったようだけど」
アニーが聞いてきた。
「ああ……見ての通り、メレルは無事だったし、合流できた。だけど、他のレジスタンスは無理だな。生き残りもいるようだけど、こうなったらもう動けないだろう」
動けても戦力になるとは思えない。
「そう……じゃあ、私達だけでやる感じ?」
「そうなるな。それでさっき港と敵の本拠地を見てきた」
「どうだった?」
「思ったより船が多かったし、本拠地の警備は厳重だ」
ちょっと厳しい。
「うーん……とはいえ、逆に言うと、その戦力に来られると厄介ね」
そうなんだよなー。
被害が大きくなってしまう。
「船の方は大蜘蛛ちゃんに任せようかと思う」
「それで何とかなる?」
「多分? 少なくとも戦力を削ることはできる」
「じゃあ、それで行きましょう」
それで十分……と言えないんだよなー。
「昨日、今日の感じを見るとなー……戦力を削るだけではあまり意味がない気がする」
「というと?」
「敵の大将が厄介だ。むしろ、あれをどうにかしないといけない」
援軍は最悪、王国軍でどうにかなる。
1回目は……
「私もそう思いますね。良くも悪くも有能な将でしょう。たとえ、船を壊してもすぐに立て直してきそうです」
AIちゃんも同意する。
「どうにかするって、本拠地とやらに潜入する気? 警備が厳重なんでしょ? いくらあんたでも危ないわよ」
アニーが止めてきた。
「そうは言ってもやらんとマズい。あの感じだと何度でも攻めてくるぞ」
「まあ、そうかもしれないけど……」
「メレル、お前はどう思う? あいつのことを知っているんだろう?」
元軍人で内部に詳しいメレルに聞く。
「だと思いますよ。私達の最終目標はあの男を倒すことです。あいつが生きている限り、解決はしませんから」
「お前は本拠地に行くのか?」
「もちろんです。仲間の救出がありますからね」
こいつもよくやるわ……
傭兵だろうに。
「できるのか?」
「あそこには正面の入口とは別に秘密の出口があります。そこから侵入します」
「危険だぞ?」
「もちろんわかっていますが、私の仕事はそういうものです。幾度となく、そういう危険を乗り越えてきました。この前だってバケモノギツネから逃げのびましたし」
AIちゃんに乗り移った母上ね。
「逃がしてもらっただけのような……」
AIちゃんがボソッとつぶやいた。
「それもまた実力なのです」
運も実力の内ってやつかな?
まあ、いいや。
「じゃあ、そこから侵入し、仲間を救出して、フォルカーをやるか」
「言葉に出すと、大変、難易度が高い気がしますが、あなた方がいるならなんとかなる気がします」
一番良いのはリアーヌがいることだな。
どんな状況になろうが、転移で逃げられるからだ。
「いつ行く?」
「今夜にでも……援軍が出港するのは明後日という情報ですが、こうなっては早める可能性もあります」
ありえるな……
さっき偵察しているのがバレただろうし。
まあ、逆に言うと、向こうも今夜に来ると思っているだろうが……
「わかった。今夜に行こう」
「マスター、リアーヌさんは必須として、他はどうされます?」
「大人数で行ってもな……」
目立つだけだ。
「でしたら必要なことが起きたらその都度、呼びましょう。敵は魔法封じを使ってくるかも知れませんし、そうなるとこの人達は完全に無力になります」
そんな女をあんな所には連れていけんか……
「そうするか。そういうわけでお前らは待機な。でも、いつでも出られるようにはしておけ」
そう言うと、パメラを除いた4人が頷く。
「マスター、作戦は決まりましたし、夜まで休まれた方がよろしいかと。私のスキャンによりますと、マスターの体力が非常に低下しております。99.9パーセントの確率で寝不足です」
100パーセントだよ。
「そうする。ナタリア、夕食ができたら起こしてくれ」
「わかった」
ナタリアが頷いたのでAIちゃんを抱えると、布団まで行き、横になった。
「おじいちゃん、一人で寝るのが寂しいんですか? 私じゃなくて他の人にしてくださいよ」
寝るって言ってるだろうが。
俺はAIちゃんを抱きながら目を閉じる。
すると、すぐに意識が遠くなっていくのがわかった。
◆◇◆
「ユウマー、もうすぐご飯ができるよー」
ナタリアの声がしたので目を開けると、ナタリアが覗き込んでいた。
「そうか……AIちゃんが放してくれないから起きれないな」
「マスター、あったかーい……」
AIちゃんが布団に潜っていく。
「本当に寝起きが悪いなー……もうすぐご飯だからお風呂にでも入ってきなよ。入れておいたから」
「そうするか……」
俺が上半身を起こすと、AIちゃんがすぐにコタツの方に行き、潜っていった。
「子ギツネー、なんでいつも私を枕にするのよ」
いつも俺が座っている場所で生首になっているアニーが文句を言う。
「お前がいつも横になっているからだろ」
「アリスもよ」
アリスは小さいから潰れそう……
『アニーさん、やわらかーい』
「エロギツネね」
コタツの中で何をしているんだろうか?
「風呂に入ってくるわ」
2人のやり取りを放っておき、風呂場に行くと、ナタリアが入れてくれた湯船に浸かる。
しばらくぼーっとすると、風呂から上がり、着替えた。
そして、部屋に戻ると、夕食の準備ができていたため、皆で食べる。
食事を終えると、準備をし、出発となった。
「まずは午前中に行った海岸に行きましょう。そこであの化け蜘蛛を出して、船を壊してください」
メレルが最後の確認をする。
「わかった。その後に潜入でいいな?」
「はい。最後に行った廃アパートに飛んでください。そこから案内します」
あそこか……
「よし、行こう」
そう言うと、リアーヌを抱えた。
すると、メレルとAIちゃんがリアーヌに触れる。
「では、行きます」
リアーヌがそう言うと、視界が暗くなった。
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