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第196話 偵察


 メレルは無事だったらしい。


「メレル、何があったんだ?」

「広場はご覧になりましたか?」

「ああ。虫を飛ばして昨日の夜の惨状も見た」

「ですか……」


 メレルが肩を落とす。


「裏切者が出たっていう噂が立ってたぞ」

「まさしく、それですね。ウチの組織は無駄に勧誘をしすぎたようです」


 勧誘した者の中に軍の息がかかった者がいたか。


「それでバレたわけか?」

「はい。実を言うと、昨日の夜が作戦決行の日だったようです。私はもう少し待つように言ったのですが、準備は既に完了しており、あとは実行に移すだけの段階まで来ていました」


 メレルを待たずにやるつもりだったのか。


「何故、そんなに急いだんだ?」

「援軍が3日後、すなわち、明後日には出ることが決定したからです」


 それで焦ったか。


「罠か?」

「おそらくは……ですが、明後日に援軍があなた方の大陸に向かうのは本当のようですね」

「せっかちだな」

「フォルカーの独裁ですからね」


 一度決めたら早いか。


「フォルカーって斧を持っているか?」

「持ってますね。いましたか?」


 やはりあれが頭か。


「最初に首を刎ねてたのはあいつだ」

「フォルカーはそうやって強さと畏怖を示すんですよ。だから首狩りフォルカー」


 蛮族すぎるわ。


「それと半分に分けていたぞ。処刑組とどっかに行った組」

「処刑は見せしめ、他の人達は情報を取るためですね」


 拷問か。

 あいつらには人道的な行為を期待できないだろうしな。


「お前は? スヴェンに泣きつくんじゃなかったのか?」

「そう思ってましたけど、スヴェン様の家を燃やしている時点で厳しいでしょうね。あとでスヴェン様に謝っておきます」


 スヴェン、何もしていないのに裏切者か。


「どうするんだ?」

「当然、作戦は続行です。仲間の救出もあります」

「そんなに真面目に仕事をするように見えんのだがな」


 こいつは最低限のことしかしない印象がある。


「新たに仲間の救出の依頼を受けたんですよ。この店はそのために借りています」


 レジスタンスかその協力者の店か。


「この町に潜んでいるレジスタンスは全員捕まったんじゃないのか?」

「捕まったのは今回の作戦の実働部隊ですね。他にいますし、リーダーは失っていません。まあ、この町から逃げることも叶わないんですけどね。もう私でも突破できないくらいに検問が厳重です」


 袋のネズミか。

 まあ、俺達はリアーヌの転移で逃げられるが……


「リーダーを始めとする他の仲間も捕まるのは時間の問題だな」

「はい。援軍のことや捕まった仲間のことを考えても時間がありません。今日、明日には作戦を立て、実行しなければなりません」


 確かにな。

 この民度の兵があの国に流れ込んだら被害は相当になる。


「作戦は?」

「私達で決めます。作戦が破られた今はもう万策が尽きているでしょうし、裏切者のせいでもうリーダーとも連絡が取れません」


 疑心暗鬼になったか。

 まあ、仕方がないだろう。

 ましてや、メレルなんて元軍人で見るからに怪しいし。


『AIちゃん、メレルに敵性反応はないな?』

『ないです』


 よし。


「だったら俺達で動こう。まずは港と敵の本拠地が見たいが、案内できるか?」

「わかりました…………ふむふむ、でしたら我々は家族を装いましょうか」


 メレルが俺とリアーヌを見て、頷く。


「それでいい」

「では、そのように」


 リアーヌに帰れとは言わんか……

 こいつはもう転移が俺のスキルではなく、リアーヌのスキルって気付いているんだろうな。

 まあ、転移をする際には絶対にリアーヌがいるし、気付くか。


「行くぞ」

「はい」


 俺はリアーヌを抱えたまま、メレルと共に外に出た。


『AIちゃん、敵性反応は?』

『ありません』


 大丈夫そうだな。


「まずは港に行きましょう、こちらです」


 俺とメレルは夫婦らしく、並んで歩いていく。

 しばらく歩いていくと、磯の香りがしてきたため、海が近いことがわかった。


「港町だったな」

「ええ。とはいえ、港に出るのはマズいでしょうから砂浜に出ます」

「それがいいな」


 俺達がそのまま歩いていくと、海に出た。


「ここは夏だと賑わう海岸ですね。砂浜で遊ぶ家族を装いましょう」


 まあ、恋人らしき男女が寒い中、寄り添って海岸を歩いているし、変ではないだろう。


 俺達は海際まで行くと、砂浜を歩いていく。


「見えますか? あれが軍港です」


 メレルが言うように視線の先には多くの軍船が停泊していた。


「思ったより多いな」

「仲間の話によると、各港町から軍船を集めたようです」

「敵も本気だな」


 食料を集めるだけでも大変だろうに。


「そうですね。あれほどの軍船を作るのに一体どれだけの労力と血税がかかっているかわかりません。レジスタンスはそれを良しとしなかったのです」

「実際、町の住人がレジスタンスを応援している感じだったな」

「それはそうでしょうね…………ユウマさん、あれだけの数の軍船をどうにかできますか?」


 メレルが本題に入る。


「できるできないで言われればできる。火の海になるがな」


 煉獄大呪殺か妖狐無間地獄。


「それはちょっとマズいです。風は海から町に行っていますので町が炎上します」


 それはダメだわな。


「うーん、そうなるとなー……」

「この際、あの化け蜘蛛でもいいので」

「大蜘蛛ちゃん、水に弱いんだよなー……」


 泳げないから普通に沈む。


「港から攻撃すればいいじゃないですか」

「まあなー……最悪はそれかな?」


 海に逃げられたら厳しいけど……


「もはや考えている時間はありませんし、できることをしましょう。港はこの辺にし、次は軍の本部に向かいます」

「頼むわ」


 俺達は砂浜から出ると、町に戻っていった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

本作品ですが、誠に勝手ながら今後は週1日更新となります。

具体的には金曜日になります。

よろしくお願いします。

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沖に逃げたら炎でやれば良いような
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