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第192話 何も言ってないのに……


 酒と女特有の甘い匂いがしたので目を覚ますと、目の前にはリアーヌがスヤスヤと寝ていた。


「ねむ……」


 そうつぶやきながらも身体を起こすと、目の前にはお茶を飲んでいるリリーがいた。


「あ、珍しくユウマが先に起きたね」

「んー?」

「昨日のことを覚えてない?」


 昨日?

 酒を飲んだ。


「何かあったか?」

「死屍累々の周りを見れば思い出すんじゃない?」


 両隣を見ると、リアーヌとAIちゃんが寝ている。

 左斜めにはアニーが寝ていた。

 右斜めにはパメラとアリスが寝ている。


「たいして飲めないくせにペースを間違えて潰れたんだったな」


 最後に後ろを見ると、俺の布団で寝ているナタリアがいた。


「ナタリアだけは意識がはっきりしていたと思うけどね」

「どうかね? こいつも弱いからな」


 皆が潰れ、ナタリアが布団に入ったところで酒を飲んでいなかったリリーだけは自室に戻っていった。

 布団を取られた俺とAIちゃんはそのままコタツで寝たのだ。


「まあ、休みだからねー……ユウマ、お茶、飲む?」

「くれ」


 リリーがお茶を淹れてくれると、湯呑を俺の前に置く。


「あー、美味い」


 酒を飲んだ翌日のお茶は美味いね。


「ユウマさー、本当に全員を娶る気?」

「さあな。なるようになる」

「なんとなくわかるけど、絶対に明言をしないのがコツなんだろうねー」


 いや、転生したばかりなんだよ。


「知らん」

「ふーん……私達が他の人のところに行っちゃうかもしれないよ?」

「お前らを今さら誰かにくれてやる気はないな」


 仲間だし。


「おー……リアーヌが騒ぎそうだ」

「どうかねー?」


 嬉しそうな顔はしているが……


 俺は目を瞑っているリアーヌの頭を撫でる。


「奥さんが12人もいたんでしょ? どうだった?」

「そう言われても記憶がないからなー……でも、99歳で死んだ際に悔いがなかったことだけは覚えているな」

「なるほどねー……まあいいや。ユウマ、お風呂に入ってきなよ。皆を起こして、朝ご飯の準備をしておくからさ」

「そうだな……起こしておいてくれ」


 全員、起きてるがな。

 呼吸でわかるわ。


 俺は立ち上がると、風呂に行き、ゆっくりと入ると、酒を抜く。

 そして、風呂から上がり、起きた皆と朝食を食べると、この日は部屋でゆっくりと過ごした。


 翌日、この日も部屋で皆とゆっくり過ごしていると、王都に行っていたリアーヌがやってくる。


「ユウマ様、叔父上が会いたいそうです」

「わかった。行くか」

「はい」


 リアーヌがそう言うと、俺の腕を取って立たせてきた。

 そして、腕を絡めてくると、転移する。


 いつもの王様の部屋に来ると、リアーヌの腰に抱きつくAIちゃんがいた。


「お前、すごいな……」


 リアーヌが腰に抱きつくAIちゃんを見下ろしながらつぶやく。


「私を置いていくことは許しません」


 AIちゃんはリアーヌが転移する際にリアーヌに飛びついていた。


「お前らは相変わらず、楽しそうだな……」


 王様が呆れたようにつぶやく。


「楽しいことは良いことでしょう。人はどんな時でも楽しさがないと生きていけません。これはとても大事なことです。100年近く生きた年長者からの助言です」

「そうか……どう見ても私より若いが転生者だったな……座れ」


 俺達は王様に勧められたので席についた。

 すると、リアーヌが椅子を動かし、俺にくっつくように座る。


「会うたびにハマっておるなー……」

「気のせいでしょう」

「そうか? いや、まあいい……リアーヌから聞いておるが、敵の本拠地の町に入ったそうだな?」


 王様は言いたいことはあるようだが、本題を優先した。


「はい。ルドーという港町です。現在は魔族のメレルが調査中ですね」

「そのメレルは信頼できるか?」

「はい。あれは信用できる人間です」

「断言するか……あ、いや、女だったか……まさかと思うが、その魔族にまで手を伸ばすのか?」


 何を言ってんだ、この王様は……


「他人の女に手は出しません」

「ユウマ様は誠実なんですよ」


 リアーヌがうんうんと頷く。


「誠実? こいつのどこが誠実なんだ?」


 王様が呆れた。


「マスターは女遊びを一切、しません!」

「いや……より質が悪いような……」


 AIちゃんが庇ってくれたが、王様はリアーヌを見ながら微妙に納得がいかない様子だ。


「私のことはどうでもいいでしょう。とにかく、潜入は成功しましたし、上手くやります。どうやら援軍があるようですし」

「うむ。それについては確実に止めてもらいたい。正直、厳しい」

「そんなにですか?」


 かなりの兵が集まっていると思うが……


「ああ。敵は町に立てこもり、籠城を決め込んでいる。明確に時間を稼いでいるな」

「強引に攻められませんか?」

「できないことはないだろうが、誰が行くかで揉める。こちらの弱点は兵が寄せ集めなことだ。指揮が難しい」


 誰も危険な橋は渡りたくないか。

 祖国の士族なら手柄を欲しがって我先に突撃するんだが……


「やはり援軍や補給を断つ方がいいですね」

「ああ。長引けば長引くほど、国が疲弊する。早急に片付けたい」


 この王様は優しい王様だからこそ、有能なのは治世だけなんだよな。

 ここで自ら兵を率いて、強行手段に出られない。


「承知しました。こちらで何とかしましょう」

「頼む」

「内通者の件は?」

「さっぱりだ。偽情報を流してみて、ゆさぶりをかけてみたが、一向にわからん」


 やはり難しいか。


「わかりました。そちらはひとまず放っておきましょう」

「そうなるな。こちらは海軍を集めて、いつでも海戦ができるようにしてある。頼んだぞ」

「かしこまりました。明日、メレルから連絡が来ますので早急に動きます」

「うむ! お前が頼りだ」


 俺も信用を得たものだなー……

 他国どころか異世界の人間だというのに。


「叔父上、私達はこれで失礼します」

「わかった。リアーヌ、気を付けてな」

「はい。ですが、ユウマ様と一緒ですので問題ありません」

「そうだな……しかし、なんでこいつのことを心の底では好きになれないんだろう?」


 王様が俺を見ながらぼやく。


「嫉妬ですね」

「叔父上、男子の嫉妬ほど見苦しいものはありませんよ」

「………………」


 あっ、王様が俺のことをもっと嫌いになった。


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