第191話 まあ、仕方がないだろう
メレルと別れ、部屋に戻ると、変わらずのメンツが部屋で待っていた。
「あれ? AIちゃんとメレルさんは?」
リアーヌと並んでコタツに入ると、ナタリアが聞いてくる。
「惜しい奴を失くしたのう……」
リアーヌがしみじみとつぶやいた。
『こらー! 勝手に殺すなー!』
脳内でAIちゃんが抗議するが、俺以外には聞こえていないだろう。
頭の中がうるさいので護符を取り出すと、隣にAIちゃんを出した。
「ふぅ……やっぱりこっちの方が良いですねー。あ、無事にルドーの町に着きまして、戻ってきたんですよ。メレルさんは彼氏の家に滞在中です」
AIちゃんが説明する。
「あ、着いたんだ。何事もなかった?」
「ひどい警備でしたね。まあ、それほどメレルさんの偽造魔法が優れているとも言えます」
「へー……これからどうするの?」
「メレルさんが情報を集めてくるそうなので明々後日までは待機です。ゆっくりしましょう」
AIちゃんが説明を終えると、アニーが無言でグラスにワインを入れてくれた。
そして、乾杯をすると、飲みだす。
多分、アニーはすでに飲んでおり、かなり酔っていると思われる。
「リアーヌ、少し時間があるから王様に話をしておこう」
報告を兼ねて、北部がどうなっているかを聞こう。
クライヴ達が行っているし、気になる。
「わかりました。明日、城に別件で行くのでその時にアポを取っておきます。明後日に一緒に参りましょう」
「頼むわ」
これで明日は休みになったな。
ゆっくりするか。
「ユウマ! ユウマ!」
予定を決めると、リリーが笑顔で俺の名を呼んでくる。
「なんだー?」
「立ってみて!」
あー……リリーの耳にも入ったか。
昨日、寝るのが遅かったのはこれだな。
「はいはい」
立ち上がると、リリーも嬉しそうに立ち上がったのでそばに行く。
「やって! やって!」
主語を言おうぜ。
わかるけどさ。
俺はリリーの背中とひざ裏に手を回すと、リリーを抱っこした。
「すごーい! なんかすごーい!」
リリーが俺の腕の中ではしゃいでいる。
「なんかって何だよ」
「なんか!」
リリーがそう答えながら手を伸ばして頬を引っ張ってきた。
「ハァ……」
ため息をつくと、リリーを降ろす。
「昨日、ナタリアにやってもらったけど、ユウマは安心感が違うね!」
リリーがそう言って、コタツに入ったので俺も元の位置に戻った。
「何やってんだよ」
「重かったね。体重的には軽いんだろうけど、重かった」
ナタリアがうんうんと頷く。
「まあ、お前の力ではな。できてアリスだろ」
「アリスは軽かったね」
こいつら、3階で何をしているんだろう?
俺が呆れながらワインを飲んでいると、AIちゃんがパメラをガン見していた。
『やめろ』
念話を使って、AIちゃんにやめるように言う。
『でも、やっていないのはパメラさんだけですよ。仲間外れは良くないです』
『パメラはダメ』
『え? なんでです?』
『そいつは人前でそういうの嫌がる人間だ』
態度を見ればわかる。
『あー……なるほど。良いところのお嬢さんですもんね。まあ、リアーヌさんもですけど』
そいつは特殊。
『だから放っておけ』
『二人きりの時にやるわけですか……いや、それって……』
『とにかく、からかったりするな』
『はーい……それにしてもマスター、すごいですね。人の性格をちゃんと見てます』
普通見るだろ。
『俺は人の嫌がることをしないんだ』
『出た……人と書いて俺の女』
『俺の』が追加されたなー……
「あんたら、何を内緒話してるの?」
斜め左横でワインを飲んでいるアニーが聞いてくる。
「してない」
「いや、あんたらさー、念話とやらをする時にすごく黙るじゃん。不自然と言うか、不気味だよ」
話をしながら念話は難しいからな。
「たいした話じゃない、ほら、乾杯」
「乾杯……」
アニーがワインをぐいーっと飲む。
「今日は自分の部屋に帰れよ」
「そうするわよ。まあ、明日も休みだし、飲むけど……」
大丈夫かね、こいつ?
「パメラも飲むか?」
パメラもそこまで強くないが、飲める。
まあ、寮まで背負っていったこともあるし。
「そうね。せっかくだし、いただくわ」
「空ね……持ってくるわね」
アニーが瓶を振ると、立ち上がった。
「パメラのグラスも持ってきてくれ」
「ん」
立ち上がったアニーに頼むと、アニーが頷く。
「あ、私のも」
「…………私も」
「私も頼む」
「私は二度とお酒を飲まない!」
リリー以外は飲むようだ。
「あんたら、飲んでもいいけど、弱いんだからほどほどにしなさいよ」
「…………潰れてユウマの布団で寝ていた女がよく言う。『あんたの布団、良い匂いがするわね』っ言ってた」
「そんなこと言ってないわよ。捏造しないで」
アニーはそう言って、部屋を出ていった。
「…………言ったよね?」
アリスが俺を見てくる。
確かに言っていた記憶はあるが……
「あいつが言ってないって言うなら言ってないだろ」
「…………かっこいい」
「だろう?」
何故かリアーヌが答え、ドヤ顔をした。
そのまま少しすると、アニーが人数分のグラスとワインを持ってきたのでリリー以外の皆で飲んだ。
この日も俺は布団で寝ることはできなかった。
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