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第189話 朝は辛い……


「ユウマー、朝だよー」


 身体を揺すられたので目を開けると、ナタリアが覗き込んでいた。


「おはよう……」

「おはよう。コタツで寝たの?」

「んー?」


 そう言われると、コタツだ。

 隣にはAIちゃんがスヤスヤと寝ている。


 俺は起き上がると、AIちゃんを引っ張り出す。


「やーん……寒いぃ……」


 AIちゃんを無視し、俺の身体の前に座らせた。


「昨日、私とリリーが戻った後に何があったの?」

「少し酒を飲んだだけだな」

「少し?」


 ナタリアがそう言って、コタツ机を見る。

 すると、そこには空き瓶が何本もあった。


「あれ? 何だっけ?」

「かなり飲まれてましたよ」


 AIちゃんが教えてくれる。


「それで潰れたのかね?」


 俺、そんなに潰れんぞ。


「いや、潰れたのはアニーさんとアリスさんですね……それで……」


 AIちゃんとナタリアが布団の方を見る。

 つられて俺も見てみると、アニーが布団で寝ていた。


「あー、思い出した。ということは……」


 昨日のことを思い出し、右斜めを見てみると、アリスがコタツに入って寝ていた。


「爛れてますねー」


 いつの間にか起きているメレルが呆れたような声を出す。


「お前はまったく起きなかったな。結構、騒いでたんだが……」

「所々で起きてましたよ。でも、関わりたくないので寝ていました」


 あっそ。


「アニーさんとアリスはどうしよう?」


 ナタリアが聞いてきた。


「寝かせとけ。どうせ今日もそいつらは休みだし、そのうち起きてくる。それよりお茶をくれ」

「うん」


 ナタリアがお茶を用意しだす。


「あれ? リリーは?」


 リリーがいない。


「寝てるよ。あの子はあの子で遅くまで起きてたみたい」


 まあ、仕方がないか。

 そういう日もあるだろう。

 俺らもだし……

 うんうん。


 俺はナタリアが淹れてくれたお茶を飲む。


「ご飯、食べる?」

「そうだな……頼むわ」

「わかった」


 ナタリアは頷いて部屋を出ていった。


「あなた、奥さんにおんぶに抱っこですね。自分で動こうとは思わないんですか?」


 おせっかいな魔族が苦言を呈してくる。


「俺は厨房に出禁なんだよ。あと、お茶を淹れようとすると、余計なことをするなって目で見られる」


 さすがに俺だってお茶を淹れたことくらいあるし、失敗するようなことじゃない。


「あなた、やっぱり長生きしそうですね」

「前世は99歳まで生きたし、今世は100歳を目指したいな」


 好き勝手に飲み食いしているが、健康には留意しないとな。

 酒癖の悪い薬師さんに頼もう。


「たくさんの奥さんとお子さんとお孫さんに囲まれましょうねー」

「はいはい……」


 それは別にいいんだが、なるようになるだろう。


「魔人とは人であって人でないものと言われています。スヴェン様があなたのことをそう言っていましたが、本当に同じ人類とは思えませんね」

「うっさい。お前は風呂に入ってこい」


 昨日、入らずに寝ただろ。


「では、お言葉に甘えて……」


 メレルは立ち上がると、風呂場に行った。

 すると、入れ替わるようにリアーヌがやってくる。


「おはようございます……って、朝っぱらから寝てる怠惰2人……」


 リアーヌが寝ているアニーとアリスを見比べながら呆れた。


「そいつらはまだ寝ているだけだよ。昨日、飲んで潰れたんだ」

「あー……でも、それはそれで怠惰ですね」


 まあな。

 堕落とも言う。


「王様に報告したか?」

「ええ」


 リアーヌは頷きながら俺の隣に座る。


「何て言ってた?」

「すぐに調査をするらしいです。とはいえ、難しいでしょうね。内通者と言っても宮仕えなのかどこかの貴族なのかもわかりません。もっと言うと、庶民や冒険者の線も考えられます」


 そりゃ無理だわ。


「その内通者は相手が魔族と思っていない可能性もあるぞ。メレルのように姿を誤魔化されたらわからん。普通の世間話のつもりが情報を漏らしている可能性もある」

「お手上げですね……」

「ルドーの町で何かを掴めると良いんだがな」

「やはりそちらになりますね。今日で着くと思うのでその辺も留意いたしましょう」


 そうするか。


 その後、ナタリアが食事を持ってきてくれたので風呂から上がったメレルを交えて朝食を食べた。

 そして、準備を終えると、ナタリアに見送られ、魔大陸に転移する。


「今日の夕方には着くと思います。行きましょう」


 俺達は昨日と同じ4人と狛ちゃんで北に向かって進み始めた。

 道中はやはりゾンビは出ないし、他の旅人にも会わない。

 ただ4人と1匹でひたすらに荒野を歩いていった。


 昼になると、部屋に戻り、起きた3人も交えて昼食を食べる。

 そして、午後からも魔大陸を北上していった。


「そろそろですね……」


 日が落ちそうだなーと思っていると、メレルがつぶやく。


「もう着くのか?」

「ええ。この辺りからルドーの領地になり、見回りの兵がうろつき始めます」

「見回りは1人か?」

「いえ、3人1組ですね。そういう体制になってます」


 結構ちゃんとした軍だな。


「元は自警団という名の賊でしたっけ? 民度が低そうですね」


 AIちゃんが聞く。


「私達なんていい獲物ですよ。まあ、気付かれる前にやりますけどね」


 メレルはそういうのが得意そうだな。


「頼むわ。俺達はどうすればいい?」

「そうですねー……先にあなたの部屋に戻っていてくれませんか? 夜の方が都合が良いですし、適当な時間に戻ってきてください。それまでに片付けておきますので夜のうちに潜入してしまいましょう」

「わかった。狛ちゃんを置いておくから終わったらこいつに言え。それでAIちゃんに通じるから」


 よくやってる。

 パメラの行動をタマちゃんを通して教えてくれるし。


「この子ねー……」


 メレルが狛ちゃんを撫でる。


「じゃあ、任せたわ」


 俺達は一足先に部屋に戻ることにした。


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