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第183話 情報収集


 俺達はおばさんに教えてもらったコヨコヨ亭という宿屋に向かった。

 宿屋は豪華と言えるような感じではなかったが、普通に清潔感もありちゃんとしているところだった。

 店員に料金を払い、部屋に向かうと、ここで待っても仕方がないので一度、帰ることにする。


 部屋に戻ると、先に帰った3人に加え、パメラもコタツに入っていた。


「よう、パメラ。仕事は終わったのか?」


 まだ少し早い気もするが。


「皆さんが王都に行かれ、いよいよギルドに人が来なくなりました……」


 あっ……


「クビですか? 世知辛いですねー。でも、安心してください!」


 AIちゃんがパメラに狙いを絞った。


「いや、クビじゃないから。時短営業にすることになったの」

「そうですか……」


 なんでちょっと残念そうなんだよ。


「よくわかんないけど、町はどうだったー? 魔族の町って変わってた?」


 リリーが聞いてくる。


「いや、普通。この辺の町と何も変わらん。住んでいる人間が青白くて皆、魔力が高いくらいだな」

「へー……ウチみたいに特殊な環境じゃないんだね」


 こいつも町に染まったなー……

 自分の故郷を特殊って言ってるし。


「昔は普通にこの辺の町にも住んでいたわけだし、生活自体は変わらないんだろう」

「なるほどー」


 リリーってたまにマヌケ面になるとなー……

 知的さはない。

 別にいいけど。


「情報収集は? 明日にするの?」


 今度はナタリアが聞いてくる。


「いや、夜に酒場でも行ってこようと思ってな。そこで盗み聞きする」


 俺は聴力を上げられるのだ。


「なるほど。じゃあ、夜までは待機なわけね」

「そういうこと。あ、パメラ、飯を食っていけ」

「うん。ありがとう」


 まあ、俺は作らないんだけどな。


 俺達は夜まで時間を潰すことにし、カードゲームをしながら過ごした。

 そして、夕食を皆で食べ、いい時間になったので再び、ターブルの町に飛ぶことにする。


「よし、行くか」

「…………おー」

「おー」


 チビ2人が手を上げ、そんな2人をチビが呆れた顔で見ていた。


「はいはい……飛ぶから触れ」


 リアーヌがそう言ったので触れると、宿屋の部屋に飛ぶ。

 俺達はそのまま宿屋を出ると、酒場を探した。

 すると、やけに明るい店を見つけたので覗いてみる。


「ここじゃないですかね?」

「そうだな。いかにも酒場って感じだ。入ってみよう」


 俺達が店に入ると、すぐに若い女の店員がやってきた。


「いらっしゃい。お客さん、ここ酒場だよ? あっちに居食屋があるし、そっちの方がいいですよ」


 店員はチビ3人を見比べると、右方向を指差しながら提案してくる。


「いや、こいつらはこう見えても大人だ。この子は25歳だぞ」


 リアーヌを指差しながら説明した。


「あー……まあ、そういう人もいますけど……え? 3人共?」

「こっちの子は16歳」


 今度はアリスを指差す。


「たまたま? あっ……そういうこと……あそこの席にどうぞー」


 店員が一瞬、うわーっと引くような顔をしたが、すぐに笑顔に戻り、テーブルを勧めてきた。

 俺達は指定されたテーブルにつくと、飲み物と摘まめるものを頼む。

 すると、すぐにやってきたので飲み食いをし始めた。


「…………ユウマ、完全にそっちの趣味の人と思われたね」


 アリスが笑いながら言ってくる。


「まあ、どう思われようがどうでもいい」


 いかんせん、50歳も下の嫁がいたという実績があるし。


「ユウマ様はそっちの方も好まれるんだよ」


 リアーヌの意見はかなり私見というか私情が入っているな。


「はいはい。それよりも情報収集をしよう。俺は聴力を上げられるが、お前らは?」

「私の魔法を使いましょう。そういう魔法があります」


 リアーヌがそういう魔法を使えるらしい。


「じゃあ、頼むわ」

「はい……」


 リアーヌが目を閉じると、周囲の雑音が消え、人々の声だけが聞こえるようになった。


『この前の女がさー……』

『金ねーなー……』

『いい仕事はないのかよ……』

『今年は本当に寒いよな……』

『エールですねー。まいどあり』

『今日は客が多いなー……』

『へー……お前、北のルドーに行ってたのか?』


 ルドー?


「これですね。ピックアップします」


 リアーヌがそう言うと、さらに周囲の音が消えた。


『そうだよ。いやー、軍がすごかったぜ。西の大陸に侵攻したっていうのが本当みたいだぜ』

『マジかよ。アホだなー』


 二人の男の会話だけが聞こえてくる。


「…………チビマス、すごっ」

「すごい魔法ですね」


 ホントだわ。

 盗聴魔法だ。


「しっ、大事な話っぽいぞ」


 リアーヌが指を口元に持ってきて制した。


『マジで西の大陸を取り戻せる気なのかねー?』

『さあな。でも、かなりの軍備を揃えていたぜ。あれはまた援軍を出す気だ』


 マジかよ。


『おいおい……よくそんな金があるな』

『ねーよ。だからまた税金を上げるんだよ』

『ハァ!? ふざけんなよ!』


 男が怒った。


『寄付金を募ったのに全然、集まらなかったんだってよ。笑えるだろ』

『集まるわけねーだろ。どうやってあんなに数がいる人族に勝つんだよ……バカじゃねーの?』

『ホントだよな。ただ、逆にそういう軍に反対する組織もあるらしいぜ』


 メレル達かな?


『あー、例のレジスタンスだろ? お前がルドーに行っている間に勧誘があったぜ』

『マジか……俺もルドーで勧誘された』


 積極的に人を集めているっぽいな。


『協力するのか?』

『いやー、無理だろ。確かに協力はしたいが、相手は軍だぜ? 確かにムカつくが命がいくつあっても足らねーよ』

『だよなー……頑張ってあの金食い虫を潰してほしいが、命あっての物種だよな』


 軍は強いわけか。

 それでこんな横暴を許しているわけだな。


『それに北への潜入は難しいと思うぜ。すげー検問だもん。もうあそこは無理だな。稼げねーわ』

『完全に軍が支配しているのか』

『そういうこと。だから明日からこの町で頑張るぜ。そういうわけで今日は景気付けに娼館にでも――』


 途中で声が聞こえなくなった。

 すると、周囲の喧騒が聞こえるようになる。


「もういいでしょう」


 リアーヌが頷いた。

 どうやら魔法を解いたようだ。


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