表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

182/242

第182話 圧


 賊みたいな奴に襲われた日は一日ゆっくり休み、翌日に備えた。

 そして、翌日になると、朝から魔大陸に行き、ひたすら歩き、ゾンビを倒している。


「ここまで多いと、さすがに慣れてきたな……」


 ゾンビを倒し、魔石を回収していると、リアーヌがつぶやいた。


「そんなもんよ。作業になるからね」


 そう言いつつ、ゾンビの魔石回収だけはしないアニー。


「なるほどのう……しかし、数が多いな。あの村の連中、よくこんなところに住めるもんだ」

「魔族だし、ゾンビなんか相手にならないくらいに強いんじゃない?」

「そうかもな……」


 リアーヌが納得していると、魔石の採取を終えたナタリアとリリーが立ち上がったので出発する。

 そのまましばらく歩いていると、何度かゾンビに遭遇したものの特に問題はなく進むことができた。

 そして、歩いていると、徐々に草木がちらほらと見えだしてくる。


「マスター、カラスちゃんが町を発見しました。位置からしてターブルの町と思われます」


 AIちゃんが報告してきたのでカラスちゃんと視界をリンクする。

 すると、確かにそこそこ大きな町が見えていた。


「大きい町ではあるが、セリアほどではないな」

「ですねー。どうします? このまま全員で向かいますか?」


 そうだなー……


 俺は足を止めると、皆を見渡す。


「順当に行けばナタリアだが……治安のことを考えるとアリスかアニー……アニーはないか」


 襲ってくれって言ってるようなもんだ。


「…………私が行こう。Bランクの魔法使いの力を見せてあげる」

「じゃあ、お前な……」


 つまりチビ3人か……

 うーん、まあいいか。


「リアーヌ、ナタリアとアニーとリリーの3人を家に帰してくれ」

「わかりました……ほれ、触れ」


 リアーヌがそう言うと、3人がリアーヌに触れる。

 すると、一瞬にしてリアーヌが消えていった。


「…………ユウマ、ちょっと」


 リアーヌが消えると、アリスが手招きしてくる。


「なんだ?」


 そう聞きながらアリスのそばに行き、見下ろした。

 すると、アリスが見上げながら両手を上げる。


「…………抱いて」

「お前は何を言っているんだ?」

「…………違う。お姫様抱っこ」


 そっちか。


「なんでだ?」

「…………体験してみたい」


 あー、そういうことね。


 女子は好きだねーと思いながらもアリスを抱える。

 すると、アリスが半目のまま俺を見上げてきた。


「…………うん、なるほど……なるほど……なるほどー」


 何がなるほどなんだろう?


「気が済んだか?」

「…………うん。降ろして」


 そう言われたのでアリスを下ろした。


「何がしたいんだよ……」

「…………昨日、部屋に戻ったらナタリアがうるさかったからどんなもんだろうと思って」


 たまにAIちゃんも言うけど、ナタリアをうるさいと思ったことがないなー。

 魔物が突っ込んでくると、泣き叫ぶくらいだ。


「そうか……」

「どうでした?」


 AIちゃんが話に入ってくる。

 こういう時になると必ず入ってくる奴だ。


「…………悪くない。うん、悪くない」


 アリスはうんうんと頷くと、空を見上げる。

 つられて見上げてみるが、何もいない。


「ただ今戻りましたー……あん? アリス、何を顔を赤らめて、空を見上げているんだ?」


 戻ってきたリアーヌがアリスを見て、怪訝な顔をした。


「…………別に。行こうか」


 アリスが空を見るのやめ、促してきたので町に向かって歩いていく。

 しばらく歩いていると、町が見えてきた。

 そして、門のところまでやってくるが、やはり門番はいない。


「勝手に入っていいんですよね?」


 AIちゃんが聞いてくる。


「多分な。アリス、来い」

「…………うん」


 アリスは俺の袖を握った。


「行きますか」


 リアーヌがそう言って頷いたので町に入ってみる。

 町の中は俺達が住んでいる街並みとほぼ変わらず、人の賑わいもそこそこにある。

 だが、当然だが、全員が青白く、魔族だった。


 俺達は通りを歩いていくが、誰も俺達に注目はしていないことからAIちゃんの偽造魔法が効いていると思われる。


「マスター、どこで情報を仕入れますか?」


 歩いていると、AIちゃんが聞いてきた。


「冒険者という職業があるならギルドもあるんだろうけど……やめた方が良いか?」

「そうですね。もし、実力者がいて偽造魔法を見抜かれたら厄介です」


 ありうるな。

 俺達だってランク付けをしているわけだし。

 それに職員が特殊なアイテムを持っている可能性もある。


「そうなると、酒場かね?」

「そうですね。酒の場では人の口は軽くなります」


 そうするか。


「となると、夜までは待機だな。宿屋を探そう」

「どこですかね?」


 わからん。


「誰かに聞くか……あれだな」


 通りを歩いていると、年配の女性がベンチに腰かけていたので近づく。


「ん? 何だい?」


 俺が近づいたので女性が怪訝な顔をして見上げてきた。


「すみません。ここに着いたばかりなのですが、宿屋はどこでしょうか? この子達を休ませたいんですよ」

「ああ……あっちに何軒かあるよ」


 女性が通りの先の方を指差す。


「ありがとうございます。これはお礼です」


 そう言って、銀貨を取り出し、渡した。


「あんた、いい男だねー。その子達は娘かい?」


 何時の子になるんだよ。


「親戚の子ですよ」

「そうかい……小さい子がいるならコヨコヨ亭っていう宿屋にしな。そこが一番安全だ」

「ありがとうございます」

「別にいいよ。がんばりな」


 女性はニコッと笑ったのでこの場を離れ、宿屋がある方に歩いていく。


「さすがはマスター。相手が女性ならお手のもんですね」


 人聞きが悪いことを言うな。


「子供連れの場合はああいうおばさんがいいんだよ」


 基本、おせっかいだし。


「…………子供」


 アリスがリアーヌを指差した。


「お前とたいして変わらんわ」

「…………私はレディー」

「御二人ともレディーですよー。立派な大人な女性です」


 含みを持って聞こえるのは俺だけ?


「…………マスターの子供を産めって聞こえた」

「私も……」


 俺もだよ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
>俺達は通りを歩いていくが、誰も俺達に注目はしていないことからAIちゃんの偽造魔法が効いていると思われる。 >「そうですね。もし、実力者がいて偽造魔法を見抜かれたら厄介です」 最初は偽装の表記でしたけ…
 マスターを補佐するためのAIスキルだし子孫繁栄が本能に刻まれてるか畜生としての生存本能だな!
オレも
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ