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第180話 集落


 アニーとアリスが夕食の買い出しに行き、しばらくすると、帰ってきた。

 そして、すぐに厨房に行き、料理を作り始めると、料理を持って戻ってくる。


 俺達はアニーとアリスが作った夕食を食べ始めた。


「うん、美味いな」


 濃い味付けではないが、食べやすいし、旨味も十分にある。


「はい。これなら食べられます」


 リアーヌも普通に食べている。


「アニーさんって優秀ですよねー。なんでも無難にこなせそうな方です」


 AIちゃんも美味しそうに食べながらアニーを褒めた。


「私は一人で生きていこうと思っていたからね」


 ソロで冒険者をやっていたし、自立しているもんな。


「今は違うんです?」

「自分より優秀で楽をさせてくれるリーダーがいて嬉しいわ。うん、実に楽」

「とっても良いことだと思います。人に頼るのは大事ですからね。じゃんじゃんマスターに頼るといいですよ」

「この子ギツネ、隠さなくなってきたわよね……」


 アニーが眉をひそめた。


「…………AIちゃんはユウマのことしか頭にないから」

「多分、これから仲間が増えるとしても年頃の女性だけだと思うよ」


 アリスとナタリアがうんうんと頷く。


「ふう……ごちそうさま」


 リアーヌが誰よりも先に食事を終えた。

 昼もロクに食べていなかったし、お腹が空いていたのだろう。


「お粗末様」

「なんか身体が温まるなー」


 リアーヌが小さな手で仰ぐ。


「そういう薬というか、薬材も入っているからね」

「お前、薬師だっけ?」

「そうよ」

「なんで冒険者をやっているんだ?」


 俺もそう思う。


「冒険者が先なのよ。魔法の才能があったから稼げる冒険者になった。その後に勉強して薬師になったの」

「ふーん……薬師の方が儲かるだろうに」

「好きでやっているのよ。あんただってギルマスなんかより向いている職業はあるでしょ」

「まあのう……」


 リアーヌは転移もあるし、謎の魔法もあるからなー。


「まあ、アニーが冒険者で良かっただろ。とても頼りになる」


 ウチのクランリーダーよりかは遥かに。


「ですねー」


 俺達は食事を終えると、部屋で過ごし、良い時間になったので解散した。

 そして、翌日。


 遅くに起きた俺達は朝食を食べると、準備をし、魔大陸に向かった。

 リアーヌの転移で昨日の小川までやってくると、村に向かって歩いていく。

 すると、徐々に草木が目立ち始め、遠くに村が見えてきた。

 俺達はそのまま進み、村の前までやってくる。


 村は木製の柵で覆われているが、所々、朽ちており、頼もしさはない。

 さらには門の前にやってきたが、番をしている者は誰もいなかった。


「これ、勝手に入っていいのかね?」

「うーん……まあ、話を聞くだけですしね」


 ここで待ってても仕方がないか……


「じゃあ、行くか。リアーヌ、絶対に狛ちゃんから降りるなよ。ナタリアは俺から離れるな」

「わかりました」

「うん」


 リアーヌは頷き、ナタリアは俺のそばに近づき、裾を掴む。


 俺達はそのまま村に入って、周囲を見渡しながら歩いていった。

 村にある家はお世辞にもきれいではないし、雨風をしのげる最低限といった感じだ。

 そのまま歩いていると、畑仕事をしている爺さんと目が合う。

 しかし、爺さんは興味なさげに視線を落とすと、畑を耕し始めた。


「排他的な村ではないようですね」


 AIちゃんが爺さんを見て、つぶやく。


「歓迎もしていないようだがな……さて、誰に話を聞こうか……」


 俺達は歩きながら話ができそうな人を探す。

 すると、木陰で休んでいる爺さんがいたので近づいてみた。


 俺達が近づくと、爺さんが顔を上げる。


「何じゃい、お前らは? 冒険者か?」


 ん?

 いやまあ、そうなんだけど、魔大陸にも冒険者という職業があるのか?


「ああ。ちょっと迷子になってな」


 話を合わせることにした。


「近頃の若い者は地図も持ってねーのか?」


 99歳と85歳は若くないぞー。


「いや、地図はあるんだがな。ここがどこかわかるか?」


 俺はしゃがむと、メレルに描いてもらった地図を爺さんに見せる。


「んー? 汚ねー地図だな……この村はここだ」


 爺さんが指差した場所は大陸西の中央辺りだった。


「なるほど……まだ遠いな」

「どこ行きたいんだ?」

「ここ」


 目的地である北の港町を指差す。


「なんだ……ルドーに行きてーのかよ。お上りさんか? それとも軍に参加か?」


 軍というのは攻めてきた軍のことだろうな。


「都会に行きたいだけだ。南から来たんだが、やはり都会だろう」

「ケッ! 若いっていうのは羨ましいね。でも、ルドーは軍がいるからうぜーぞ。行くならそれまでの道中にあるここにしろ」


 爺さんがこの村とルドーの間にある場所を指差した。


「ここは?」

「ターブルって町だ。そこそこ大きいし、冒険者ならここの方が良いだろう」


 ふむ。

 まずはここを目指すか……


「爺さん、詳しいな」

「俺も昔は冒険者とかをやりながら色んな町を回ったんだよ。年を取ったから引退して今はこの村の村長をやっている。色んな情報も入ってくるさ」


 村長だったらしい。


「そうか。感謝する」

「ん」


 爺さんが手を差し出してくる。


「金か?」

「当たり前だろ。情報っていうのは無料じゃねー」


 まあな。


「そんなに持ってないんだが……」

「あるにはあるだろ。それとも女で払うか?」


 ジジイのくせに何を言ってんだ。

 人のことは言えんが……


「これしかないがいいか?」


 そう言って懐から銀貨を取り出した。


「んー? 見せてみろ」


 そう言われたので銀貨を渡す。


「道中の遺体から拾ったものだ」


 そういうことにしておこう。


「なるほどねー。これは大陸銀貨だな」

「なんだそれ?」

「あっちの大陸で使われている通貨だよ。こっちと同じで金貨、銀貨、銅貨がある。あっちの方が質が良い……まあいいだろう。これでも使えるしな」


 使えるのか……


「じゃあそれで。俺らはターブルってところに向かう」

「もう行くのか? 一泊くらい休んでいけよ」

「結構だ。残りの金や女を奪われたくないんでな」


 銀貨を見て、目の色を変えたのを見逃さない。


「はは! そうかい。じゃあ、さっさと出ていきな。こんな小さな村でもごろつきはいるぜ」


 村長がごろつきみたいだしな。


「ああ……身の程知らずはどこにでもいる。じゃあな」


 俺は立ち上がると、3人を連れて、急いで来た道を引き返していった。


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