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第171話 夜の3時です


「ああ。そのつもりだ」

「あのメレルとかいう魔族に地図を描かせていたからもしかしたらとは思っていましたが……」


 まあ、わかるわな。


「ユウマ、魔大陸に行く気なの?」


 アニーが眉をひそめて聞いてくる。


「ああ。メレル達がどういう作戦があるかはわからないが、俺が行って、船を全部燃やす方が早い。それで魔族は引き返す」


 補給ができなくなるからだ。


「簡単に言うけど……どうやって行くのよ? この時期の海はきついわよ」

「飛んでいく。蜂さんかな?」

「それもきついわよ。どれだけ距離があると思ってんの?」


 地図を見る限り、かなり離れているな。


「行ける、行ける」

「行ったところで魔大陸に人族が行ったら目立つわよ? 見た目が違うわけだし」


 あいつら、青白いもんな。


「そこはAIちゃんがどうにかしてくれる。さっきメレルの偽造魔法をインストールしてもらった」

「バッチリです。どうやらアニーさんの認識阻害の魔法みたいなもののようです。これを使えば向こうが勝手に魔族と思ってくれるようになります」

「便利ねー…………ねえ、本当に行くの? あんたがそこまですることなくない?」


 アニーは心配して止めているようだ。


「この戦争は確実に長引く。冬なこと、難民問題、軍の足並み、敵が魔族、向こうは背水の陣だから士気が高いこと…………どう考えても数ヶ月で終わることはない。そうなると、俺達の生活にも影響が出てくる。特にリアーヌがマズい」


 転移というギフトを持っているリアーヌは良くないことになるだろう。


「ユウマ様、私は別に……」

「いいから」


 リアーヌの頭を撫で、黙らせる。

 もう戦争や政治の道具にはなりたくないって言ってたくせに。


「魔族がどれだけ恐ろしいかは知らんが、スヴェンやドミク、それにメレル程度なら俺の敵ではない。さっさと行って、船を燃やす。それで終わりだ」

「……そう。リアーヌを引き合いに出されたら私は何も言えないわ。好きにしなさい」


 アニーがチラッと真っ赤な顔して俺に身を寄せているリアーヌを見る。


「お前らはどうする? 義勇軍に参加するか?」

「あんたが決めて。私達はあんたに従う。ただ、自分の意見を言うとしたら私はこの地を離れたくない。万が一でも可能性があるならこの地で魔族がスタンピードを起こした時に備えたいし」


 前例があるからな。

 アニーはこの町の出身で家族も住んでいるからそうだろう。


「マスター、皆さんやリアーヌさんも連れていくべきです。リアーヌさんの転移があればドラゴンを追っていった時のようにいつでも帰ってこれますし、アニーさん達の魔法も必要です。それにこの地はレイラさんに任せればいいと思います。あの人がいればスタンピードだろうと魔族だろうと根絶やしにしてくれるでしょう」

「それもそうだな……」


 レイラ自身も強いし、あの蛇がすべて丸呑みするだろう。


「ねえねえ、今さらだけど、ウチのクランリーダーもヤバい人なの?」

「みたいだね」

「…………ユウマと同じ世界の転生者でしょ? 地獄の世界かな?」

「あの人、怖いんだよなー……」


 リリー、ナタリア、アリス、パメラの4人が好き勝手言っている。


「私はAIちゃんの提案通りでいいけど、リアーヌを連れていって大丈夫なの? ギルドのトップじゃん。リアーヌ…………リアーヌ? おーい、発情してないで帰ってこーい」


 アニーがリアーヌの顔の前で手を振る。


「うるさいなぁ……叔父上に話してみる」

「そう。だったらそうしてちょうだい。ユウマ、今日はこのくらいにして、明日また話しましょう」


 それもそうだな。

 リリーを筆頭に皆、眠そうだ。


「わかった。今日はもう寝よう」


 正直、俺も眠い。


「ユウマ様、私は今日は寮に帰りますが、明日の朝一番にも今日のことを叔父上に話してみます」


 そう言って、リアーヌが立ち上がった。


「ああ。寝ろ」

「そうします。叔父上との話が済み次第、また来ますので……パメラ、帰るぞ」

「はい。タマちゃーん、帰るよー」


 パメラがコタツの中に声をかけるとタマちゃんが出てきて、パメラの腕の中に納まる。


「では、ユウマ様。おやすみなさい」

「おやすみ」

「ああ。おやすみ」


 2人と1匹が一瞬にして消えていった。


「さて、お前らも寝ろ。遅くまで悪かったな」

「こんなことがあったら仕方ないわよ」


 アニーが頬杖をつく。


「そうだよ。国の一大事だし」


 ナタリアも仕方がないといった感じだ。


「…………とんでもないことでドキドキする。この後も寝られるだろうか?」


 いや、お前はさっきまで寝てただろ。


「うーん……」


 リリーは机に枕を置き、すでに寝ている。


「マスター、リアーヌさんがものすごく騒いでいるそうです。こんな時間に他の人に迷惑だにゃってタマちゃんが言っています」

「何してんだか……」

「私は間違えていなかった! 絶対にユウマ様の子……この先はやめておきます」


 リアーヌ、寝ろ。


「俺らも寝るぞ。お前らも明日な」

「そうね。おやすみ」

「…………ここで寝てもいいんだけどなー」


 アニーとアリスがコタツから出る。


「ほら、リリー、行くよ」

「うん……」


 ナタリアがリリーを促し、引っ張っていく。

 そして、4人は部屋を出ていった。


「おやすみなさーい…………マスター、枕は?」


 …………リリーが持っていったな。


「明日、返してもらえばいい。寝るぞ」


 そう言って、AIちゃんと共に布団に入る。


「さすがに眠いです…………リリーさんの匂いがしますね?」

「寝ろ」


 いちいち報告してくるなよ。


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[良い点] リアーヌ愛されすぎ! 全ての自分の女への愛情は偏りないんだろうけどこんなん最高やん
[良い点] リアーヌは報われてほしい
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