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第164話 平穏はまだ来ない


 ドラゴンは魔族の侵攻を受けて、西の山に逃げ込んだらしい。

 俺はそれを聞いて、温泉から上がると、身体を拭き、服を着た。

 そして、そのまま待っていると、ちゃんと服を着た女性陣がやってくる。


「ユウマ様、子ギツネに話を聞きましたが、魔族の侵攻とは本当でしょうか?」


 先頭のリアーヌが聞いてきた。


「ああ。このドラゴンが北の山の上から大型の船に乗る魔族を見たらしい。しかも、かなりの数だ」

「くっ! すみません。すぐに叔父上に伝えます」

「そうしろ」

「では、一度、ユウマ様の部屋に戻りますので」


 俺達が行っても仕方がないか。


「わかった。頼むわ。じゃあな、ドラゴン」

「ああ。逃げたわけではないからな」


 まだ言ってるし……


「はいはい」


 俺達はリアーヌの転移で自室に戻った。


「リアーヌ様、私も父やジェフリーさんにこの事を伝えに行きます」


 部屋に戻ると、パメラがリアーヌに言う。


「すまんが、頼む。だが、まだ大っぴらにするな。攻めてきたと決まったわけではない」

「わかっています」

「うむ。ギルドまでは送ってやる」

「はい。では、ユウマさん、また」


 まだ濡れた髪のパメラが手を上げた。


「ああ。風邪引くなよ。リアーヌも」

「うん、わかってる」

「ありがとうございます。では、私達はこれで……」


 リアーヌがそう言い、パメラと消えたので俺達はコタツに入った。


「魔族の侵攻ねー……本当かしら? 誤報じゃない?」


 いつもは生首になっているアニーが珍しく、身を起こしたまま聞いてくる。

 なお、アリスも起きている。


「わからんが、ドラゴンが移住しているくらいだからな。俺は歴史を知らんのだが、これまでにそういう侵攻はあったのか?」

「あるにはある。もう何十年も前だけどね。その時も船で侵攻してきたらしいけど、上陸もできずに撤退していったって聞いている。人族もそこは警戒しているから海岸の軍はすごいのよ」


 人族の魔族に対する忌避感や警戒心はすごいからな。


「今回も撃退できるのかね?」

「わからない。魔族も勝算があるから攻めてくるんだろうし……」


 だろうなー。


「俺らにできることは?」

「できることというか、義勇軍の招集がかかるかもね。スタンピードの時と同じ緊急依頼」


 兵士だけでなく、皆で対処する問題か。


「もし、そうなった時はどうする? 方針だけでも決めておきたい」

「……攻めてきているのは北なわけでしょ? それがどっちに行くかによると思う」


 ん?


「どっちとは?」

「北の山って西の山と同様に国境なのよ。そして、その東が海。魔族がウチの国に行くか、北の隣国に行くかによるってこと」

「自国優先か?」

「そうなるわね。何しろ、北の国に行くには北の山を越えるか西に迂回しないといけない。時間がかかるし、もし、魔族の別動隊がこの国に来た時にすぐには戻れないのよ。もちろん、軍は海軍を出し、協力するとは思うけど、冒険者である私達は難しいわね」


 なるほどねー。


「魔族はそういうのを狙って国境沿いに進軍してるのかね?」

「さあ? でも、逆に言うと、2国を相手にすることになるわけだからねー。ごめん……わかんない」


 俺もわからん。


「AIちゃんはどう思う?」

「すみませんが、情報が少なすぎて判断のしようがありません」


 そうだわなー。

 わかっているのは魔族が船に乗って、北に来ているってことだけだし。


「少し様子見だな。リアーヌを待とう」

「そうですねー。招集がかかったらどうします?」


 うーん……


「どうする?」


 4人に聞く。


「私はユウマが行くって言うなら行く」

「私もー」

「…………ユウマが決めて」


 本当に全部、俺に任せているな……


「アニーは?」

「私もあんたに従うわ。クランは……うーん、やっぱり個人の判断に任せることになるかな」


 レイラもそう言うだろうなー。


「わかった。リアーヌの話を待って、それで判断する。それまでは待機な」

「そうね。温泉は残念だったけど、また行きましょう」

「…………そうだね」


 アニーとアリスはそう言って横になると、生首になった。


「それにしても魔族かー……この前の魔族みたいなのが大勢で来るのかなー?」


 ナタリアが不安そうにつぶやく。


「私達が相対した魔族の女は多分、かなり上の方だと思いますよ。さすがにあんなレベルの魔力を持っているのはいくら魔族でもそうはいません」


 AIちゃんが頷きながら考察する。


「俺もそう思うな。スヴェンもあの脳筋野郎もかなりの実力者だった。あんなのがいっぱいいるとしたら人族との争いには負けてないだろう」


 あいつらは精鋭だろう。


「そっかー……」

「まあ、緊急依頼があって、それを受けるとしても危険なことはないだろう。この前のスタンピードと同様に最悪の時は狛ちゃんがお前らを逃がしてくれる」

「狛ちゃんがいれば大丈夫か」


 狛ちゃんは強いし、足も速いから余裕で逃げられるだろう。

 問題は4人がちょっと多いこと。


「今年はこのまま何もなく終わると思ったんだけどなー……事件が多いね」


 リリーが頬杖をつきながらつぶやく。


「ほとんど魔族がらみだな」


 スタンピードが始まり、東の遺跡の事件、王都は王様とルドガーのせいだったが、元はといえば、スタンピードや魔族討伐の褒賞で王都に行ったことだ。

 そして、ドラゴンは魔族のせいで逃げてきた。


「ずっと大人しくしてたのに何かあったのかもね」

「かもなー」


 俺も良い時に転生したもんだわ。

 良いのかはわからんが。


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