第158話 良い場所を見つけた
その場でしばらく待っていると、大ムカデちゃんが戻ってくる。
大ムカデちゃんは襲いにいった時と同じように壁を伝い、俺達の後ろに回った。
女共は同時にその様子を首だけを動かして見ていた。
そして、大ムカデちゃんがさっきいた位置に戻ると、一斉に俺を見てくる。
「ユウマ、大ムカデちゃんが嫌いなわけじゃないけど、やめない?」
「怖い」
「…………別に食べられるとは思ってないけど、やめようよ」
大ムカデちゃん、大蜘蛛ちゃん以上に人気がないな。
「リアーヌ、狛ちゃんから降りなさい」
「うん」
アニーが指示をすると、リアーヌが素直に狛ちゃんから降りた。
「マスター、狛ちゃんに任せた方がいいかと……」
そうするか……
やっぱり女は虫が嫌いなんだなーと思いながら大ムカデちゃんを消す。
「狛ちゃん、頼んだぞ」
そう言うと、狛ちゃんが尻尾を振った。
「あんたはかわいいわねー」
アニーが狛ちゃんをあやす。
大ムカデちゃんはかわいくないらしい。
まあ、俺もかわいいと思ったことはない。
「狛ちゃんといい、タマちゃんといい、やっぱりそっち系がいいのかね?」
アニーもパメラも溺愛している。
「そりゃそうですよ。私だって虫系には乗り移りたくないです」
虫に耐性のあるリリーですら嫌がってるもんなー……
やめるか。
「たぬきの式神でも作るかねー」
「それはダメですよ。良くないです」
わがままな子ギツネだなー……
「まあ、また考えるわ。行こうぜ」
俺達は先に進むことにし、歩いていく。
洞窟の中は人工的に作られただけあって、そこまで歩きにくいわけでもなく、順調に進んでいった。
「マスター、前方に再び、リザードです」
はいはい。
そのまま歩いていくと、目の前には体長2メートルはあるトカゲがいた。
「あれか……」
大ムカデちゃんはあれを全部食べたのか……
だって、俺達が通った時には何一つ残っていなかったし。
そりゃ人気は出ないわな。
そう思っていると、リザードが俺の方を向き、舌をチロチロと出す。
すると、俺に向かって駆けていた。
「おー、速いな」
さすがはトカゲだ。
リザードはある程度近づいてくると、口を開け、飛びかかってくる。
俺はそんなリザードに向かって、踏み込み、剣を振り下ろした。
すると、リザードの頭が縦に切れ、地面に叩きつけられる。
リザードはそれでもぴくぴくと動いていたが、すぐに動かなくなった。
「皮膚というか、鱗が硬いな……」
「いや、真っ二つじゃん」
ナタリアがリザードの死骸を指差しながら言う。
「相対的にだよ。普通の剣でも切れないことはないが、傷めそうだ」
護符の剣は紙だから問題ないが。
「リザードは目を狙うか、口を開けた時に口の中を狙うんだよ。まあ、ユウマは関係ないっぽいけど」
地元のリリーが教えてくれた。
「そこまで考えるほどではないな」
「だろうねー」
「リリー、リザードの魔石ってどこ?」
ナタリアがリザードの前でしゃがみながら聞く。
「あ、手伝うよ」
ナタリアとリリーがリザードの解体を始めた。
そして、そのまま待っていると、ナタリアが解体を終えたので再び、歩いていく。
「ん? 階段があるな」
目の前には岩盤を掘って作ったと思われる階段があった。
「上に登るためのものだね。あちこちにこういう階段や梯子があるよ」
山の上に行けるわけだし、こういうのがあるんだな。
俺達はその後もリザードを倒しながら洞窟を進んでいく。
進んでいくと、階段があるところは問題ないが、梯子がぼろくなっているところもあった。
その時はカラスちゃんにリアーヌを運んでもらい、転移で進むということをしながらも洞窟の奥に向かっていく。
そうやって進んでいくと、かなり長い階段があり、その先の方には太陽の光が見えていた。
「あそこが終点かなー? 私もここまで奥に来たことがないからちょっとわからない」
「まあ、行ってみよう」
俺達は階段を昇っていき、上を目指す。
すると、ドンドンと明るくなっていったのでライトの魔法を使っていた4人が魔法を消した。
そして、階段を昇り終えると、木が一本も生えていない外に出た。
「んー? なんか暖かいわね」
アニーが言うように山の上なのに暖かい。
「あ、そういえば、お父さんに聞いたことがあるんだけど、温泉があるらしいよ」
温泉だって。
懐かしいな。
「へー、人が入れるやつ?」
「うん。ここで働いていた人は温泉で身体を休めていたらしいよ」
「それは良いわね」
確かに良いな。
寒い中での温泉は至高。
「とりあえず、進んでみようぜ」
「そうね」
俺達は外に出ると、そのまま道が続いていたので歩いていく。
すると、周囲に湯気が見え始めた。
「本当に温泉ですね。マスターは好きでしたもんね」
「まあなー」
年に一回くらいは家族で旅行に行ったもんだ。
弟と泳いで怒られたのは良い思い出。
「ねえねえ、あれ……」
ナタリアが指差した方向には木製でできた棚があった。
俺達は棚に近づいてみると、近くには10メートル四方くらいの温泉が湧いていた。
しかも、ここから見ても外の風景は絶景だ。
「ここだな。昔の人は贅沢だったんだな」
そう言いながら湯に手を入れると、温かくちょうどいい感じだった。
「温泉良いなー」
リリーもそう言いながら温泉に手を突っ込む。
「リアーヌが転移で来れるんだから後で連れていってもらえ。俺もそうする」
「リアーヌ、いい?」
リリーがリアーヌに聞く。
「良いぞ。私も来たいし」
「やったー」
「温泉も良いと思うけど、そろそろお昼にしない?」
アニーが提案してきた。
「それもそうだな……リアーヌ、一旦、帰ろう」
「はい、そうしましょうか……お手」
リアーヌがそう言いながら狛ちゃんの前でしゃがむと、狛ちゃんが前足をリアーヌの手に乗せる。
そして、俺達もリアーヌに触れると、視界が真っ暗になった。
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