表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

156/242

第156話 ケチというか金がない


 翌朝、遅くに起きた俺とAIちゃんはすぐにコタツに入り、ナタリアが持ってきてくれた朝食を食べだした。


「2人共、生きてるかー?」


 斜め右と斜め左でコタツに入りながら突っ伏しているアリスとアニーに聞く。


「…………やる気が出ない」

「生きてるわよー……」


 2人は昨日の夜、他の皆が部屋に戻っても居座り、酒を飲んでいた。


「回復魔法でも使えよ」


 治るだろ。


「…………もうナタリアにかけてもらった」

「使って、これなのよ。もっと言うと、薬も飲んだ」


 しこたま飲んでたし、騒いでたからなー……


「あんまり飲むなって止めたのに聞きやしねーし」


 たいして強くもないくせに。


「私はセーブした」

「…………してた? あれで?」


 俺もアニーがセーブしてたとは思えない。


「何よ?」

「…………いや、甘え――」

「あん?」

「…………何でもない」


 2人共、元気じゃん。


「ナタリア、リリーは?」


 この場にはリリーがいない。


「出かけたね。金貨を握りしめて……」


 日当で金貨5枚ももらっているからな……

 またしょうもないものを買いに行ったんだろう。


「今度、泣きついてきたら財布を没収して、お小遣い制にしよう」

「それでいいんじゃないかな。一回、リリーの部屋に行ってみるといいよ。変な置物や何に使うかわからないものがいっぱいある」


 種族の差かねー?

 いや、あいつの実家も村長さんの家も緑多めだったが、普通だった。


「ごちそうさまー……」


 AIちゃんはそう言いながら箸を置き、手を合わせると、コタツに潜っていく。


「子ギツネー……コタツの中で尻尾を振らないでよ」


 楽しそうだな。

 まあ、休みを満喫してくれ。


 俺は朝食を食べ終えると、ナタリアの淹れてくれたお茶を飲み、ゆっくりと過ごした。

 そして、昼になり、昼食を食べ終えると、リアーヌがやってきたので転移で王様のもとに向かう。

 転移し、視界が晴れると、そこはいつもの王様の部屋だった。

 以前と同じように王様が席につき、メイドと壮年の騎士が控えている。


「ん? なんだ、お前も来たのか」


 王様が俺を見て、意外そうな顔をした。


「私もいますよー」


 AIちゃんが自己主張する。


「そうか……まあ、座れ。話を聞きたい」

「わかりました」


 王様に勧められたので席につくと、メイドがお茶を淹れてくれた。


「それで? どこまで行ったんだ?」


 席につき、一息すると、王様が聞いてくる。


「現在、西の国境である山脈の麓まで到達しましたが、まだドラゴンは発見しておりません。ですが、近くにあるエルフの里の者が山脈に飛んでいくのを見たと……また、道中のフォール伯爵領で橋が壊れているのを発見しました。近くに鱗が落ちており、間違いなく、ドラゴンかと思われます」


 リアーヌが報告した。


「ドラゴンはそこまで行っておるか……山脈を越えておると思うか?」

「そこまではわかりません。ですが、明日、山脈を登ってみようと思います」

「わかった。頼むぞ。エルフはどうだった? 問題はなかったか?」

「リリーがおりましたので話はスムーズでした。彼女は嘘をつける人間ではないですので」


 つけないねー。

 いつか例の薬がリリーの口からバレそうで怖い。


「うむ。それは良かった……お前は問題を起こしていないな? エルフの娘を持って帰ったとかないな?」


 王様が謂れのないことを言ってくる。


「そんなことしませんよ。リリーの両親も村長さんも良い人でしたし、何も問題ありません」

「本当か?」


 王様がリアーヌを見た。


「んー? まあ、変なところはなかったですね。リリーはユウマ様に依存していますし、それを見たお父さんが苦い顔をしていたくらいです」

「それはすごくわかるな。不満があるわけではないが、こいつに娘をやるのはなんか嫌だ」


 男親の場合は娘を誰にもやりたくないと思うだけだろ。

 俺がどうだったかは覚えてないが。


「まあまあ……とにかく、あと少しです。もし、ドラゴンがいた場合は静観でよろしいですね?」


 リアーヌが話を戻した。


「ああ。基本はそれでいいし、危なくなったら転移で逃げろ。ユウマ、リアーヌを頼んだぞ」

「ええ。お任せください。それと王様。実はこういうものがありまして……」


 そう言うと、AIちゃんがドラゴンの鱗を取り出し、テーブルに置く。


「なんだこれ? さっき言っていたドラゴンの鱗か?」


 王様がドラゴンの鱗を手に取った。


「はい。拾ったんですが、買い取ってくれますか? ギルドでは買い取れないと」


 王様に買い取ってもらえばいいじゃんって、さっきナタリアが言っていたのだ。


「まあ、出所のことがあるから出回ってもらいたくないな。しかし、これを買い取れと言うか」

「王様、それはかつて、王様が若かりし頃にドラゴンと相対し、手に入れた勇気の証でしょう」

「うーむ……そんな気がしてきたな」


 王様がそう言うと、ちらりと騎士を見る。

 すると、騎士が退室していったが、すぐに戻ってきた。

 そして、何も言わずにテーブルに袋を置いたのでそれを取ると、AIちゃんに渡す。


『金貨90枚です』


 ケチったなー……

 まあ、いいけど。


「それでは叔父上、私達はこれで失礼します」


 リアーヌが立ち上がったので俺とAIちゃんも立ち上がった。


「うむ。頼んだぞ」

「はっ!」


 俺達はリアーヌの転移で自室に戻ると、ゆっくりと過ごすことにした。

 そして、この日は早めに寝て、明日に備えた。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[気になる点] 王様はユウマに帝王学教えてもらってw
[良い点] 王様がドラゴンスレイヤーに 倒してもないし出会ってもいないけど
[一言] 酔っ払ったアニーはどんな酔い方をしたやら?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ