第155話 王都で飲み食い
視界が元に戻ると、王都のギルドのリアーヌの部屋に来ていた。
部屋にはデスクに座って仕事をしているケネスがいる。
「おや? 戻られたんですか? しかも、皆さん、お揃いで…………知らない方もいますけど」
ケネスが俺達を見渡し、パメラをじーっと見る。
「区長の娘だよ」
リアーヌが答えた。
「なるほど……勝ち目ないですね」
ひどっ。
「うっさいわ! こういうのは勝ち負けじゃないんだ!」
「英断です。それでどうされたんです?」
ケネスがペンを置く。
「仕事を押しつけたのを恨んでいるな…………いや、帰ってきたんだが、こんな時間でな。これから夕食を作るのも億劫だから外食にでも行こうと思ったんだ。それでせっかくだから王都にと……」
「それはよろしいかと。馬車を用意いたしましょうか?」
「いや、近いし、歩いていく。そっちは何かあったか?」
「陛下が進捗状況を知りたいから城に来るようにと伝言を預かっていますね」
王様は気になるわな。
しかし、逐一報告するんじゃなかったか?
「わかった」
「リアーヌ、俺も付き合おう」
「良いのですか?」
「どうせ明日は休みだろ?」
休みを決める担当のナタリアを見る。
「うん、休み」
やっぱりな。
「ほら」
「わかりました。では、明日、お付き合いください。ケネス、明日、行く」
「承知しました。せっかくの夕食を止めてすみません。あとはやっておきますので」
「うむ。頼んだぞ……行きましょうか」
俺達は部屋を出ると、ギルドも出た。
この前来たばかりの王都はやはり空は暗くても明るく、多くの人が通りを歩いていた。
俺達は歩いて以前にリアーヌと2人で来た店に向かう。
そして、店に着くと、店員に案内され、この前よりも広めの個室に通された。
個室に入ると、AIちゃんが我先に窓際に座ったのでその隣に座る。
すると、隣にリアーヌが座ってきた。
「…………絶対にユウマの隣だけは譲らないね」
「そういえば、リアーヌって絶対にユウマの隣に座るね」
アリスが指摘すると、リリーも気付いたようだ。
「うるさい、小娘共。さっさと座れ」
リアーヌが怒ると、皆、座っていく。
「…………まあ、誰かさんはしれっとユウマの正面に座るんだけどね。いついかなる時も」
アリスにそう言われて、正面にいるナタリアを見た。
「偶然でしょ」
ナタリアはそう言って否定するが、よく考えると、俺の部屋でも馬車に乗っている時も必ず、正面にナタリアがいる気がする。
両脇にチビで正面にナタリアが固定なような……
「放っておきなさい。それを気にするのはそこの2人だけ」
アニーは興味なさそうにリリーとパメラと共にメニューを見始めた。
「高い……」
「さすがは王都……」
リリーとパメラが顔を見合わせた後に俺を見てくる。
「好きなものを頼めよ。ここは俺が出すから」
日当金貨5枚に成功報酬で金貨200枚だし、余裕だ。
どうせ使い道がないのだからこいつらに使ってやるのが一番。
「かっこいい」
「Bランクは違うわね」
「とりあえず、高いワインね」
3人は再び、メニューを眺め始める。
「庶民だのう……パメラは良いところのお嬢さんのくせに」
リアーヌが呆れた。
「それはそれ、これはこれ」
「まあの……ユウマ様が出してくださるのだからありがたく飲み食いしろよ」
「ありがたがらなくていいから好きなもんを頼め」
3人は盛り上がりながら注文を決めると、俺達も注文をし、やってきた酒や料理を飲み食いしていった。
「王都にいた時はこんなもんを2人で楽しんでいたわけねー」
アニーがワインを飲みながらジト目で見てくる。
「いや、お前らが泊まっていた宿も相当だぞ。王都で一位二位を争うところだ」
リアーヌが言うように確かにあそこの料理は美味かった。
俺とアリスが釣った魚ですらうまく調理をしていたし、相当腕のある料理人が勤めている宿屋だと思う。
「まあねー。あとは雰囲気」
アニーが窓の夜景を見る。
なお、窓際にはAIちゃんとアリスが陣取っており、飲み食いしながらずっと外を見ていた。
「…………ナタリア、数年前、冒険者になった時にここに来る想像がついてた?」
「いや、まったく」
「…………だよね」
「マスターに感謝ですよー」
確かに出すって言ったけど、お前らも普通に来れるだけの収入はあるだろ。
まあ、こいつらは絶対に個人では来ないだろうけど。
「ねえねえ、パメラ、これ何? かたつむり?」
「エスカルゴでしょ」
「ふーん……おっ! かたつむり美味しい!」
「エスカルゴだってば……」
さすがは芋虫が好物なエルフだわ。
「騒がしい奴ら……雰囲気のある店なのに」
「楽しくていいだろ」
「そうですよねー」
リアーヌがコロッと意見を変える。
俺達はその後も飲み食いを続け、食事を終えると、ギルドに行き、部屋に戻った。
そして、コタツに入りながらお茶を飲む。
「明日は休みとして、明後日に行くの?」
アニーが生首状態で確認してきた。
「それでいいんじゃないか?」
「誰が行くの? 全員?」
どうするかねー?
「最後だし、全員で行くか。ドラゴンを拝めるかもしれんぞ」
「ドラゴンねー。まあ、一生に一度くらいは見ておくか……」
「お前らもそれでいいか?」
ナタリア、アリス、リリーに聞く。
「いいよー」
「…………せっかくだしね」
「私は地元だから行くよ」
3人共、行くらしい。
「パメラ、お前も行くか?」
「行かない。それよりも後でまとめてでいいから魔石とかを提出してね」
「わかってるよ」
魔物がいなかったからあんまりないけどな。
「気を付けてね」
「ん」
俺達はこの日、遅くなるまで一緒に過ごし、就寝した。
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