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第154話 もうすぐ終わり


「では、村長。そういうことで確認に行ってきます。もちろん、結果は報告しますので」


 リアーヌがそう言って立ち上がったので俺達も立ち上がる。


「もう行かれるのですか? 今から行ったら山に着く頃に夜になります。本日はこの里で休まれたらいかがでしょう? 歓迎いたします」

「それはありがたいですが、さすがにドラゴンですので急ぎ向かいます。我らは野営に慣れているのでご安心を」


 嘘だけどな。

 帰ってコタツでご飯を食べて、布団で寝る。

 しかし、やはりリアーヌは転移のことを言うつもりはないらしい。


「そうですか……では、頼みます」

「うむ。リリーのことは安心してもらいたい。ユウマ様が責任をもって面倒を見ると思いますので」

「よろしくー!」


 リリーが笑顔で手を上げた。


「さようですか。ユウマ殿、よろしく頼みます」

「はい」

「では、私達はこれで」


 俺達は親父さんと共に村長さんの家を出ると、再び、リリーの家に戻る。


「おかえりなさい」


 リリーのお母さんが出迎えてくれた。


「ああ……リリー達はすぐに出るらしい」

「え? そうなの?」

「ゆっくりしていって欲しいが、仕事らしい」

「そっか。じゃあ、仕方がないわね。リリー、ユウマさんに迷惑をかけたらダメよ」


 お母さんがリリーに忠告する。


「大丈夫だよぅ」

「……ユウマさん、リリーを末永くお願いします」

「……よろしく頼む」


 お母さんは満面の笑みで言い、親父さんはどことなく、嫌そうだ。


「お任せ下さい」


 俺達は出発することにし、リリーの家を出ると、梯子を降りていく。

 そして、大人しく待っていた狛ちゃんを連れてエルフの里を出ると、山脈に向けて出発した。


「リリーのお母さんと何か話したか?」


 リリーの家に残っていた3人に聞く。


「何も」

「…………世間話」

「あんたは気にしなくていい」


 何かあったな……

 だって、お母さんの様子が変だったし。


「そうかい」

「そっちは?」


 逆にナタリアが聞いてきた。


「村長さんはドラゴンっていう予想はしていたみたいだわ。まあ、変に刺激はしないでくれってさ。下手なことをして逃げられて八つ当たりをされたら困るんだと」

「まあねー。もし、あそこにいるとしたらこんなに近いもんね」


 ナタリアがそう言いながら前方を見上げる。


 俺達の前方には木々の間から見える高い山脈が見えていた。


「リアーヌ、あの山の先は?」

「あそこが国境です。その先は隣国です」


 つまりドラゴンがあそこにいてもいなくてもあそこで終点なわけか。

 いなければ問題なし。

 いれば戻って王様に報告。

 寒い中の野営もなかったし、暇つぶしにはちょうどよかったな。


「あと少しだな。今日は山の麓まで行って帰ろう」

「はい」


 俺達はその後も歩いて山脈を目指す。

 そして、暗くなった辺りで麓に到着したのでリアーヌの転移で帰還した。


 俺の部屋に戻ると、今日は全員が出ていたため、暗かった。

 灯りを点け、コタツも暖め始める。


「コタツって暖かくないと逆に寒いわよね」


 コタツに入っているアニーが不満を漏らした。


「すぐに暖かくなるだろ。それよりも夕食をどうしようか?」


 当たり前だが、誰も用意をしていないし、今から用意するのも疲れるだろう。


「それがあったわね。クライヴに……ダメね。この時間は2階で宴会してるわ」


 そんな気がする。

 あいつら、すぐに飲むし。


「私が残っている食材で作るよ」

「あ、私も」


 ナタリアとリリーが立候補する。


「あのー、ユウマ様。よろしければ外食にでも行きませんか? この時間なら王都の店は開いていますし……まあ、こいつらも一緒に」


 リアーヌが提案してきた。


「王都か……」


 悪くないな。


「どうでしょう? ギルドに飛べばいいですし、この前行ったところならこの人数が入れる個室もあります」


 あそこか。

 結局、俺とリアーヌだけで行ったし、こいつらも連れていってやりたいとも思う。


「そうだなー……お前ら、どうする?」


 リアーヌの提案を聞いて、期待している目をしている4人に聞く。


「行く行くー」

「…………行ってみたい」

「行きたーい」

「行くわ」


 皆、行きたいらしい。


「マスター、一人寂しく外食に向かわれている人が近くを歩いていますよ」


 パメラか。


「呼べ」

「わかりました!」


 俺達は部屋を出ると、エントランスの端の交流スペースでパメラを待つ。

 すると、玄関の扉が開かれ、パメラが入ってきた。


「よう。王都に飯を食いに行こうぜ」


 そう言うと、パメラが呆れた顔でこちらにやってくる。


「誘ってくれるのはありがたいんだけどね……」

「どうした? タマちゃんが何かしたか?」

「町を歩いていたんだけど、いつものように部屋に鍵を閉めたのにいつの間にか追ってきていたタマちゃんが前に出てきて、にゃーにゃー鳴きながら尻尾をここに向けたわ」


 いつものタマちゃんだ。


「まあいいじゃん。奢ってやるから。高い店なんだぞ」

「どうも……行きたいです」


 よしよし。


「リアーヌ、行くか」

「はい。では、触ってください」


 リアーヌにそう指示されたので皆がリアーヌに触れた。


「…………寄ってたかって少女をいじめているみたいな絵面だ」


 確かに……


「余計なことを言うな。ちょっと同じことを思ったんだから……飛ぶぞー」


 リアーヌがそう言うと、視界が暗くなった。


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