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第152話 木の上の家


 エルフの里に入ると、そこまで多くないが、リリーと同じような長耳の人がおり、こちらを見ていた。


「リリー、私は長老に話をしてくる。お前は客人をウチに案内しなさい」


 親父さんがリリ-に指示をする。


「わかった! 皆、こっち!」


 俺達は親父さんと別れ、リリーと歩いていった。


「あんたら、リリーのお父さんに睨まれたけど、何してたの?」


 歩いていると、アニーが聞いてくる。


「念話で話をしていたんだが、聞かれてた。AIちゃんが非常に余計なことを言った」

「すみませーん……私の念話が盗聴されるなんて……」


 AIちゃんがしょぼーんと項垂れた。


「どうせくだらないことをしゃべってたんでしょ」

「俺は別に言ってない」

「いや、マスターはマスターでお父さんの魔力をそこそことか舐めたことを言ってませんでした?」

「事実だ」


 事実はしっかり受け止めないと。


「まあ、あんたはそういう奴よね。不機嫌にさせるようなことを言わないでね」


 もう遅いな。

 AIちゃんの発言は俺が親なら殺すくらいものだし。


「大丈夫だよー。お父さん、機嫌良かったし」


 リリーが歩きながらこちらを振り向く。


「そりゃ娘が帰ってきたらそうだろ」

「いや、皆に会えて嬉しいんだと思うよ。気にしてたし」


 まあ、娘の仲間は気になるか。

 ましてやドジ……いや。


「それにしてもあれで機嫌良かったのか……ほぼ無表情だったが」

「エルフはそんなもんだよ」


 リリーがエルフっぽくないと言われるのがよくわかるな。


「しかし、高いですねー。あそこに住んでいるんですか?」


 AIちゃんが上を見上げたので全員が木の上にある家を見上げる。


「そうだよ。ちなみに、あそこがウチ」


 リリーが頷いて上にある家を指差した。


「よく住めるな」


 怖いわ。


「寮の3階もそんなもんじゃない? あ、ユウマは1階か」

「俺の世界はほぼ平屋住宅しかないんだよ。だから1階が良い」

「ユウマはエルフに転生しなくて良かったね」


 確かに……


 俺達が歩いていくと、とある木にかけられた梯子の前に来た。


「この上がウチ」

「そうか……」


 上を見上げると、10メートルはゆうに超えている位置に建物が見える。


「怖い?」

「いや、別に高いところが苦手なわけじゃない」

「じゃあ、行こう」

「ああ。俺が先に行く」


 こういうのは男から行くもんだ。

 見えるし。


 俺達は狛ちゃんを梯子の下で待機させ、梯子を昇っていくと、木の上の家の前までやってきた。

 上に上がるとわかるが、家の周りに板が敷いてあり、他の家にも行ける通路みたいなものもある。


「…………高い」

「落ちたら死ぬな」

「怖いですねー」


 チビ3人が柵に手をかけ、下を覗いている。


「危ないぞ」


 そう言うと、3人が寄ってきた。


「入るよー……おかーさーん!」


 リリーが家に入っていったので俺達もお邪魔する。


「んー? リリー? どうしたの? クビになった? あれ? お客さん?」


 奥から見たことあるエルフが出てきた。


「クビになってないよー。この人達が私の仲間! 仕事があって寄ったの!」

「そうなの? お父さんは……狩りか」

「あ、いや、お父さんにも会ったよ。それで村長さんに話してくるから家で待ってろって」

「そう? よくわからないけど、皆さん、ようこそお越しくださいました。どこかで見たことがある子供と男性ですが、どこでしたっけ?」


 お母さんが聞いてくる。


「イブルの町で会いましたよ。その節はウチの子がすみません」

「あー……あの時の……いえ、いいんですよ。たまにそういう反応をされますから。どうぞ、おかけください。今、お茶を用意しますので」

「あ、手伝うよ」


 お母さんが奥に行くと、リリーも奥に行ってしまったので俺達は腰を下ろした。


「ユウマ、リリーのお母さんと知り合いなの?」


 アニーが聞いてくる。


「イブルの町でエルフを見たって言っただろ。あれ」

「あー、なるほど…………ホントに既婚者だったのか」

「当たりましたね。さすがです、マスター」


 どうも。


「…………強風が吹いたら吹き飛ばないのかな?」

「それよりも地震や火事が怖いだろ」


 チビ2人が窓から外を覗きながら不謹慎なことを言っている。


「リリーが森が得意って言うのがわかるね。こういう所で生きていたら得意にもなると思う」


 ナタリアがチビ2人が覗いている窓から見える生い茂った木を見る。


「だろうな。逆にこういう所で育って町に行くと、びっくりするわけだ」


 無銭飲食も仕方がないと思える。

 それくらいに文化や生活体系が異なっている。


「どうぞー」

「お待たせー」


 2人がお茶を持ってきてくれたので一口飲んだ。


「それで仕事って何? あなた、セリアの町じゃなかったっけ?」


 腰を下ろしたお母さんがリリーに聞く。


「それそれ。お母さん、ユウマ達と会った時、伯爵様に会った?」

「ユウマ? この方? ええ、会ったわよ。空に大きな鳥がいたらしくて、それの報告」

「それを追っているんだけど、お母さんは見たの?」

「いえ、私は家にいたし、見てないわね。狩りに行ってる男達が見たのよ」


 やはり村長さんや親父さんに聞いた方が良いだろうな。


「そっかー」

「ところで、リリー、あなたのお仲間を紹介してくれないの?」

「あ、そうか……えーっと、あそこで外を見ている小さい子がアリスとリアーヌ。リアーヌは正確には仲間じゃないんだけど、似たようなもん」


 まあ、ギルマスだし、仕事関係ではあるわな。


『そういう意味じゃないですよー……』


 うっさい、子ギツネ。


「アリスさんは昔からの仲間ね。聞いたことある」

「そうそう。それでこの人がウチのリーダーのユウマ。それとAIちゃん」


 リリーが俺とAIちゃんを紹介してくれる。


「ねえ、この人達、人間? 魔力が異質すぎるんだけど……」


 旦那と同じことを言ってるな。


「知らないけど、多分、人間じゃないかな? 転生者なんだけど、キツネのバケモノの子供だって」


 バケモノ言うな。


「へー……よくわからないけど、色んな人がいるのね」

「うん、そう思う。それとこっちの寒そうなのがアニー」

「うん、寒そうね」


 ホントだよ。


「それで最後にナタリア。アリスと同じく、以前からの仲間」

「ああ……腹が黒そうな……」


 おい……


「私、黒くないよね?」


 ナタリアが聞いてくる。


「お前は優しいし、黒くないぞ」

「ありがと」


 ナタリアがニコッと笑った。


「ね? これをユウマにしかしない。ちなみに、あっちのリアーヌもそう」

「なるほど……」


 お母さんが神妙げな顔で2人を見比べる。

 まあ、俺は別に問題ないと思う。


『そりゃそうでしょうよ』


 どうでもいいけど、お母さんも念話を盗聴しているんじゃない?


お読み頂き、ありがとうございます。

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