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第151話 親父さん


「リリー、この前帰ってきたばかりなのにどうした? それと、この者達は?」

「うん、ちょっと仕事でねー。この人達は私の仲間!」


 リリーがそう答えると、何故か俺をじーっと見てくる。


「お前の仲間って2人じゃなかったか? 1人抜けたって言ってただろ」


 ハリソン君ね。


「増えた! あ、でも、こっちのリアーヌは王都のギルマスさん」

「王都……リアーヌ……王族か?」


 知ってるんだな……

 リアーヌが有名なのか、そういうことに詳しいのか。


「うん!」

「王族のギルマスが一体、何故……」

「ちょっと聞きたいことがあるんだよー……えーっと、ユウマ、任せた!」


 リリーは俺にぶん投げたので一歩前に出る。


「申し遅れました。私はリリーと同じパーティー組むユウマと申します。こちらの者達はナタリア、アリス、アニーです。それとAIちゃんとリアーヌが乗っているのが狛ちゃんです」


 俺が紹介していくと、皆が頭を下げていった。


「ああ。小さいのと腹が黒そうな少女は聞いていたんだが……」


 親父さんがそう言うと、ナタリアがリリーをじーっと見て、リリーが目を逸らす。


「その2人が元々の仲間ですね。そこに私とこの子、それとアニーが加わった形です。同じクランなんですよ」


 俺とAIちゃんは微妙だけど、間違ったことは言っていない。


「なるほど……君がリーダーかな?」

「新参ですが、やはり男性がリーダーをした方が良いということでそうなりました」

「ユウマはすごいんだよ!」


 ありがとよ。


「そうかね……そういうことなら安心した。悪いが、怪しさがすごかったんでな」


 まあ、気持ちはわかる。


「どこがー?」


 リリーが親父さんに聞く。


「かなりの距離が離れていたのにお前が私に気付いたからだ」

「ユウマは数百メートル先の魔力を探知できるんだよ! すごいでしょ!」


 すごいだろ?


「数百……それはすごいな。しかし、すごすぎて罠にしか見えなかった」


 リリーをエサにして、仲間を誘き寄せるようにしか見えんわな。


「そんなことしないよー。ユウマは……女性関係以外は良い人なんだよ!」


 それ、親からしたら致命的だぞ……


「リリー、紹介は後でいいだろ。それより、この熊はどうするんだ?」

「あっ、そうだ! お父さん、熊いる?」

「冬前だからありがたいが、いいのか? お前達が仕留めたものだろ」


 親父さんが俺を見てきた。


「それはリリーが仕留めたものだし、リリーの好きにすればいいでしょう。魔石もないし、任せます」

「あげるー。それでさー、話があるんだよー。でっかい鳥の話」

「わかった、わかった。とりあえず、里まで来てくれ。お前の仲間なら歓迎するし、王族の方が来ているのにこんな所で話をするものじゃない」


 歓迎はしてくれるようだ。

 一安心だな。


「それもそうだね。寒いし」

「ああ……こっちだ。ついてきてくれ」


 親父さんはそう言って熊を空間魔法で収納すると、歩き出す。


「リリー、よくあんな熊を仕留められたな」


 歩いていると、親父さんが感心しながらリリーに声をかけた。


「すごいでしょ? お父さんに直してもらった弓も調子がいいし、魔力も微妙に上がったんだ」

「確かに上がっている……頑張ったな」


 前にエルフは魔力探知が得意って言ってたが、本当のようだ。


「頑張って毒む……とにかく、頑張ったんだよ! もうすぐでBランクになれる」


 こらこらー。

 それは墓場まで持っていくやつだから余計なことを言うんじゃない。


「毒む……? よくわからんが、頑張れよ」

「うん!」


 リリーが笑顔で頷いた。


『親子はいいもんですねー』


 AIちゃんが念話してくる。


『そうだな。微笑ましいじゃないか』

『ですね。それにしてもこのお父さん、すごい魔力ですね。あの魔族の男に匹敵します』


 AIちゃんが念話なのはリリーを傷付けないためか……


『これがエルフなんだろう。昨日の美人もこの先に感じる魔力もそこそこにある』

『まあ、マスターの敵ではないでしょうね』


 そもそもリリーの一族なわけだし、敵にはならんがな。


『リリーもこれくらいには成長できるだろ』

『ですねー。それにしてもこのお父さん、女を集めるのが生き甲斐なマスターはともかく、何故か私にも警戒しています。どう見ても人畜無害なキツネなのに』


 人畜無害っていうのはナタリアみたいなことを言うんだよ。


「私が君達を警戒しているのは人に見えないからだよ」


 親父さんが歩きながらこちらを振り向いた。


「盗み聞きは感心せんな」


 すげー!

 どうやったんだ?


「……マスター、周波数を変えます」


 よくわからん。


『やーい、やーい。お前の娘はもうマスターのものだぞー』


 やめーや。


「その話は後でゆっくり聞くよ」

「…………あれ?」


 おい、子ギツネ……周波数とやらはどうした?

 しかも、余計なことを言うんじゃねーよ。


「何、何ー?」


 リリーが俺達を見比べる。


「なんでもない。それより。里に着いたぞ」


 親父さんが言うように前方には木で作られた砦みたいなものが見える。

 そして、砦の中にある木の上にはこれまた木で作られた家が建っていた。


「どうやって作るんですかねー?」

「さあ?」


 わからん。


「そういう魔法があるんだよ」


 俺とAIちゃんが首を傾げていると、親父さんが教えてくれる。


「そういやリリーが色々と作ってくれたな」


 あんな感じだろうか?


「エルフはそういう魔法が得意なんだよ。森で生きるために作られた魔法だ」


 なるほど……

 生きる知恵ってやつだな。


 俺達はそのまま歩いていき、エルフの里に入っていった。


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