第150話 エルフの森
夕方まで5人でカードゲームをしながら遊んでいると、リアーヌ達が帰ってきた。
「あー、寒い、寒い」
「…………よいしょ」
「ただ今戻りました」
3人は靴を脱ぐと、すぐにコタツに入ってくる。
そして、アニーとアリスが俺の足に足を乗せてきた。
その足はひんやりとしており、アニーが気持ちいいと言っていた理由がよくわかる。
「どうだった?」
「…………スケルトンを倒した」
「ゾンビもいたわね」
「どうやらリビングデッド共はドラゴンの影響を受けないようです」
まあ、あいつらに恐怖心なんかないだろうしな。
「森まで行けたか?」
「ええ。無事に行けました。明日からは森ですね」
そうか、そうか。
「…………ナタリア、なんでドラゴンの鱗を持ってるの?」
「もらった」
「…………え? なんで?」
「これ」
ナタリアが机の上にある散らばったカードを指差す。
「…………あー、勝ったのか。ナタリア強いからなー」
「そんなもんをもらってどうするのよ? 売れないならただの鱗じゃないの」
「うん。そこに置いておこう」
ナタリアは立ち上がると、ドラゴンの鱗を元あった場所に置いた。
「マスター、明日からの森はどうします? 森ですから歩きでしょうけど」
AIちゃんが聞いてくる。
「リリーは確定だな。あとは……ナタリアかね? エルフの森に行くんだったら人畜無害なナタリアがいいだろ」
「あ、私も行きたい。エルフの森は珍しい素材が多いって聞くし、採取したい」
アニーも行きたいらしい。
「じゃあ、そうするか」
「…………私も行きたい。ここで一人で待つのは嫌」
それはわかる。
「じゃあ、そうしろ。リリーの親に会うかもしれんし、付き合いが長いなら挨拶くらいしとけ」
「…………確かに」
「では、皆で行くわけですね。リリー、エルフの里はどのくらいで着くんだ?」
リアーヌがリリーに聞く。
「すぐだよ。1時間くらい?」
「だったら午後からの方が良いか……ユウマ様、それでよろしいですか?」
「それでいいぞ。朝から行ったら迷惑かもしれん」
俺も起きられないし。
「では、そのように。午後になったら迎えに行きます」
「んー。おみやげにワインでも持ってけ。それで心証がだいぶ良くなる」
「確かにそうですね。用意しておきます」
俺達は午後から全員で行くことに決め、この日は夕食を食べ、早めに休んだ。
翌日、午前中はゆっくりし、昼食を食べ終えると、準備をする。
すると、リアーヌがやってきたため、転移した。
転移すると、目の前には森が見える。
ただ、これまで見た森よりも木が高く、数十メートルはありそうだ。
「リリー、頼むぞ」
「うん、任せて! あっちの方が歩きやすいからあっち」
リリーがそう言って、右の方に歩いていったので俺達も続く。
すると、細いながらも道があり、リリーはそこから森の中に入っていった。
「どんな魔物が出るんだ?」
「魔物は色々出るね。ユウマが知らないのだと、リザードっていうDランクの大きいトカゲとかかな」
食えるのかね?
「Dランクなら問題ないな」
「うん。あとはでっかい熊も出るから気を付けて。しかも、魔物じゃないから注意だよ」
そっちの方が怖いわ。
「…………帰ろうかな」
「熊くらいなら平気だって」
アリスが暗くなり、ナタリアが励ます。
ただし、ナタリアは俺の服をがっちりと掴んでいる。
「AIちゃん、頼むぞ」
「わかりました」
AIちゃんのサーチが頼りだ。
「大丈夫だよー。熊は痕跡がはっきりしているし、臆病だからね。これだけ人がいれば襲ってこないよ……あれ?」
リリーが足を止めて、木を見る。
そこには何かの爪痕がびっしりとついていた。
「敵、ゆっくりとですが、接近中……大きいですね」
AIちゃんが斜め左方向を見る。
「冬眠前かなー?」
リリーは首を傾げると、木を登っていった。
「1人だけ上に逃げたぞ」
「違うよー」
枝の上にいるリリーはそう言いながら弓を引く。
「手伝おうか?」
「いい。ユウマは燃やしちゃうからもったいない」
炎以外もあるんだけどなー。
そう思っていると、リリーが魔法の矢を出し、放つ。
すると、矢が飛んでいき、直後にドシンという音と共に揺れを感じた。
「ふっ、これがBランクの力!」
まだCランクだぞー。
この仕事が終わったらって言ったじゃん。
リリーが降りてきて、矢を放った方向に駆けていったので俺達も続く。
すると、そこには巨大な熊が横たわっていた。
「見て見て! すごくない? こんなに大きい熊を仕留めたのは初めて」
「すごいね。でも、この森ってこんなのがいるの?」
ナタリアは完全にビビっている。
その証拠に俺の服を離す気配がない。
「うーん、こんなに大きいのはあまり見ないね。しかも、こんな浅いところに……多分、冬眠前でご飯を探していたんじゃないかなー?」
ふーん……
リリーの解説を聞いていると、遠くに魔力を感じた。
「リリー、この森って冒険者とか来るのか?」
「冒険者はあんまり来ないけど、狩人さんは来るよ。動物がいっぱいいるもん」
狩人……
この魔力でそれはないか。
「ということはエルフかな?」
「どうしたの?」
「そこそこの魔力の奴がこちらに向かってきている。しかも、速いな」
「エルフじゃないかな? 皆、木の上で巧みに動くもん」
お前は?
あ、いや、いいや。
「お前が話せ。多分、仲間だろ」
「わかった! おーい!」
リリーが大きな声を出す。
すると、近づいてきているエルフが止まった。
「逆に警戒しているぞ」
「あ、そうか。おーい! 誰だか知らないけど、リリーだよー! 熊を仕留めたから手伝ってー!」
リリーがそう言うと、再び、動き出した。
しかし、かなり近づいてきたところでまたもや、止まる。
「右方向、20メートル先の木の上で停止」
AIちゃんがつぶやいた。
「おーい! どしたのー? リリーだよー」
リリーがそう言うと、魔力が動き出し、右の方の奥から男が歩いていてきた。
「リリー、何をしているんだ?」
「あ、お父さん!」
親父かい。
そりゃ警戒もするわ。
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