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第141話 今度はちゃんとした依頼


 視界が元に戻ると、そこはかつても来た王様の部屋であり、王様が席につき、あの時と同じメイドと壮年の騎士が控えていた。


「おう、ユウマ! たいして久しくもないが、久しぶりだな。息災にしているようで何よりだ」


 相変わらずの王様が気さくに声をかけてくる。


「お久しぶりでございます。国王陛下もお元気そうで何より」

「うむ。まあ、堅い挨拶はいい。座れ」


 そう促されたので皆が席につくと、メイドがお茶を淹れてくれる。


「叔父上、こちらが【風の翼】に所属しているBランク冒険者のアニーとアリスです。ユウマ様のパーティーメンバーですね」


 リアーヌが2人を紹介すると、2人が頭を下げた。


「うむ。2人共、リアーヌと仲良くしてくれて感謝する。また、国や民のために働いてくれていることにも感謝だ。これからも頼んだぞ」

「はい。頑張ります」

「…………頑張ります」


 2人はまたしても頭を下げる。


「それで陛下。私にドラゴンのことを聞きたいと伺っていますが?」

「そうだ。正直、信じられん。だが、ギルドの職員が聞き取りをしたところ、何人かの目撃情報があった」


 あったのか……


「ドラゴンだったと?」

「いや、それはわからん。かなり上空を飛んでいたらしく、何が飛んでいるかまではわからなかったそうだ」

「私達が見たのはかなり近かったんですけど……」


 数十メートルくらいしか離れてなかったように思える。


「マスター。おそらくですが、マスターの霊力に反応したのだと思われます」


 なんか魔力が高いのがいるって思って見に来たのかね?


「ふーむ……つまりお前らは近距離で見て、ドラゴンと判断したわけだな?」

「私は知りませんがね。でも、AIちゃんがドラゴンと判断したのならそうでしょう」

「そうか……」


 王様が考え始めた。


「何か問題があるんですか? どこかに行ったのなら放っておけばよいでしょう」

「そうなんだがな。うーむ……ユウマ、仕事を頼まれてくれんか?」


 仕事?


「ドラゴンを倒してこいですか?」

「そんなもんを頼まんわ。ちょっと見てきてほしいだけだ」


 だけって……


「あのー、どこにいるかもわからないものをどうしろと?」

「ドラゴンらしきものはセリアの町の西に行ったんだろう? 西に行ってくれればよい。具体的には国境までだな」


 他国に行ったら関係なしか。


「軍は?」

「このことを大っぴらにしたくない。ドラゴンは魔族以上にタブーだ」


 やっぱりそうか……

 皆の反応でそうじゃないかとは思っていた。


「冬になって休んでいる時に遠征ですか? 正直に言いますが、嫌ですよ」

「そこだ。お前は寒い中の遠征や野宿が嫌なわけだろ?」

「まあ、そうですね」


 テント、寒いもん。


「リアーヌを使え」


 リアーヌ?


「まあ、リアーヌの魔法はすごいですけど……」

「違う。転移だ。要はな、昼間に西に向かって進み、調査する。それで夕方になったら自分の家に帰ればいい。翌日になったらまた帰った地点に戻り、調査だ。リアーヌは一回行ったことがある場所に飛べるのだから野宿がいらない」


 なるほど。

 それは確かに楽だ。


「期間はいつまでです?」

「無理は言わん。お前らのペースでいい。これは念のための調査だからな」


 念のためねー……


「そんなに脅威なんですか? 頭が良くて温厚って聞いてますけど」

「そうだ。非常に温厚で人間と敵対することなんかない。だがな、問題はドラゴン側ではなく、こちら側にある」

「と言いますと?」

「ドラゴンはな、とんでもなく希少で価値があるんだ。その血一滴も無駄なところがないと言われる程に価値がある。ドラゴンを仕留めたらそれだけで一生遊んで暮らせるんだよ」


 そんなに高いの?


「……つまりドラゴンが何もしなくても冒険者なんかがちょっかいをかけることがあると?」

「そうだ。それで倒してくれるならばこちらも何も言わん。だが、負けて怒らせてみろ。とんでもないことになる。実際、過去にはそれで町が滅びた例もあるんだ」


 それは確かに厄介だ。


「つまりそれが起こるのを防いでほしいと?」

「いや、そこまでは頼まん。要は国内にいるか、いないかだ。いないなら問題ないし、いるのならば、こちらで対処する。まあ、もしかしたらお前に依頼を出すかもしれんが、まずは国内にいるかどうかの把握が先だ」


 そういうことか……


「なるほど……」

「頼まれてくれるか?」


 王様のこの感じだと兵士にも冒険者にも頼みたくないって感じだな。

 大っぴらにしたくないし、冒険者に頼めば最悪な事態が起きるかもしれない。

 それならリアーヌの転移を活用できる俺達に頼んだ方が良い。


「報酬は?」

「今回はケチらん。日当で金貨5枚出してやる。そして、成功報酬で金貨200枚を出す」


 今回は……

 前回ケチったことを認めるなよ。


「その辺りは私から詳しく説明しましょう。日当ですが、具体的には一人当たり金貨5枚です。そして、成功報酬はパーティーに金貨200枚です」


 リアーヌが補足説明してくれる。


「高いですねー。王家にそんな金はないでしょうに」

「ギルドからも出してもらうんだ」


 なるほどね。


「わかりました。お受けしましょう」

「ん? やけにあっさりだな。仲間やクランリーダーに相談しなくてもいいのか?」


 いや、クランリーダーに相談しても無駄。

 どうせ、好きにしろの一言だもん。


「仲間がどう言うかはわかりませんが、まあ、最悪は私だけでも行きますよ」

「いいのか?」

「どうせリアーヌは行くわけでしょ? どこぞの馬の骨に任せるくらいなら私が行きます」


 おそらくだが、転移が使えるリアーヌが行くことはほぼ確定しているだろう。

 あとは誰が一緒に行くかだ。


「馬の骨って……任せるならウチの精鋭だぞ」


 馬の骨じゃねーか。


「私が行きます。何かあってもあんな空飛ぶ蛇に負ける私ではありません。それにリアーヌは私が守りましょう」

「そうか……では、頼もうかな……おい、リアーヌ……リアーヌ?」

「………………」


 王様が呼んでもリアーヌは俺を見上げるだけでガン無視だ。


「こちらの考えで進めてもよろしいですか?」

「あ、ああ……それでよい。リアーヌが一緒なわけだから報告は逐一するようになっている」

「では、そのように。早速、準備にかかりますのでこれで失礼したいと思います」

「うむ。頼んだぞ」


 王様が頷いた。


「よし、帰ろう。リアーヌ、帰るぞ」

「はいっ! このリアーヌにお任せを! あ、叔父上、行ってまいります。報告は逐一、するようにいたしますので」


 それはさっき王様が言った。

 聞いてねーな。


「……ああ。頼んだぞ」

「はっ! では、ユウマ様、寮に戻りましょう。さ、触ってください……」


 リアーヌが顔を赤らめながらそう言うので肩に触る。


「すぐに発情する巫女様ですねー」

「うるさい、子ギツネ。お前らもさっさと触れ」


 リアーヌが目を吊り上げさせてそう言うと、AIちゃん、アリス、アニーの3人は呆れた目でリアーヌに触れた。

 なお、王様、メイド、騎士の3人も呆れた目でリアーヌを見ている。


「では、セリアに戻ります」


 リアーヌがそう言うと、視界が真っ暗になった。


今週は木曜日も投稿します。

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