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第014話 昇格試験


「はい。書き漏れはないようです。次にですが、こちらに触れてもらえますか?」


 パメラはそう言うと、受付の下から水晶玉を取り出した。


「何これ?」

「これは魔力を測定する水晶玉です。これに触れ、魔力を流してみてください」

「ふーん……」


 俺は水晶玉に触ると、霊力を流してみる。


「………………」

「………………」

「…………あれ? まだですか?」


 ん?


「触れた時から流してるぞ」

「えーっと、おかしいな……故障かな?」


 パメラはそう言うと、水晶玉に触れた。

 すると、水晶玉が赤く変色しだす。


「故障ではないですね…………魔力を流していますか? 魔法が得意と書いてありましたけど」

「あ、マスター、霊力と魔力は違いますから測定はできませんよ」


 地図を描いていたAIちゃんが顔を上げて教えてくれる。


「あー、そうなのか……パメラ、俺は異世界から来たから厳密には魔法ではなく、陰陽術と呼ばれる魔法みたいなものなんだ。使うのも魔力ではなく、霊力だ。何が違うのかはわからんが、違うものっぽい」

「なるほど……そうなるとどうしましょうかね?」

「なんか問題があるのか?」

「いや、ランクを決めないといけないんですが、その指標の一つが魔力なんです」


 ランク?


「冒険者にもランクがあるのか?」

「はい。昔はなかったんですが、実力ない者が無茶な依頼をすることが多かったんで、ランク制度を導入し、実力に見合った仕事を紹介するように変えたんです」


 合理的だな。

 仕事を失敗して困るのは紹介したギルドもだろうし。


「じゃあ、魔力を測定できない俺はどうなる?」

「えーっと、最低のGランクということに……」


 まあ、仕方がないのか?


「Gランクの仕事とは?」

「薬草採取、水路の清掃、スライムやゴブリン狩りです」


 嫌……


「森でゴブリンに遭遇したが、あれが金になるのか? その辺の子供でも倒せそうな弱さだったぞ」

「ゴブリンは1匹で銅貨5枚になります」


 物価がわからんが絶対に安いと思う。


「それで宿屋に泊まれるか?」

「安宿でも銀貨2枚は必要かと……」


 ダメじゃん。


「どうにかなんない? せめて稼げるランクには上がりたいんだけど」


 このままではマジで橋の下で蛇とネズミを食べる浮浪者になってしまう。


「うーん、昇級試験を受けてみますか?」

「GランクがAランクになれるの?」

「いや、そこまではさすがに……」


 さすがにそこまでの飛び級は無理か。


「どこまでならいける?」

「えーっと、試験官と模擬戦をしてもらって認められれば、Dランクぐらいにはなれるかと」


 Dランクねー。


「ちなみに、お前らはどのくらいなんだ?」


 俺は後ろのナタリアとアリスに聞く。


「私はCランクだよ」

「…………ふふっ、B!」


 ナタリアは普通に答えたが、アリスが胸を張って自信満々に答えた。


「マスター、アリスさんに依頼を受注してもらって、それをマスターが代わりにこなすのはどうでしょう?」


 おー!


「さすがはAIちゃん。俺の頭脳! 賢い!」

「えへへ」


 AIちゃんが嬉しそうに笑った。


「あのー、不正はやめてくださいね」


 パメラがジト目で見てくる。


「ダメなのか?」

「そういうのはダメなんです。実際にそういうので商売をしている方もいますが、取締対象となります」

「へー……」


 じゃあ、盗賊狩りは俺が依頼料を受け取ったらマズかったんだな。


「どうします? Dランクの昇格試験を受けますか?」

「模擬戦だっけ? うーん……」


 大丈夫かな?

 俺、対人戦闘なんかはあまりやったことがないから手加減が苦手なんだよなー。


「マスター、受けたほうがいいかと……模擬戦ですし、何かあっても事故ですよ」

「まあなー……でも、罪もない者を殺すのはよくないだろ」


 俺は妖を祓い、人を守る陰陽師だ。

 そんな俺が罪もない人を殺めていいものだろうか?


「事故ですって事故。それよりもお布団で寝ましょう。私の健康診断によると、マスターはかなり疲弊しています」


 それは頭が微妙に重いからだな。

 うん、ほとんど言語インストールのせい。


「頑張って手加減するか……」

「おいおい……えらく強気な兄ちゃんがいるな」


 声がしたので振り向くと、俺よりも上にも横にもでかいおっさんが笑いながら立っていた。

 おっさんは薄着なせいで発達した筋肉が目立ち、あちこちの傷痕もあることから歴戦の猛者のように見える。


「あ、ジェフリーさん」


 どうやらパメラの知り合いらしい。


「パメラ、誰だ?」

「ウチの職員です」


 職員?

 冒険者じゃないのか?


「おっさん、道を間違えてないか? 絶対に冒険者か傭兵をやるべきだぞ」

「元冒険者なんだよ。引退したから経験を活かして、この職についたんだ」


 なるほどね。

 指導員みたいなものか。


「ふーん」

「おい、どうでもいいが、こいつはなんだ?」


 おっさんが足元を指差す。

 おっさんの足元ではAIちゃんがおっさんの太い脚をぱんぱんと叩いていた。


「こら、やめなさい」


 俺はAIちゃんを引きはがし、ナタリアに託す。

 すると、ナタリアがAIちゃんの両肩に手を置き、見守り始めた。


「なんだあれ?」

「俺の弟子だ。好奇心旺盛なのかな?」

「まあ、子供か…………いや、そうじゃない! パメラ、何があった?」


 おっさんは我に返り、パメラに確認する。


「あ、はい。この方は異世界からの転生者さんで魔法が得意らしいんですけど、技術が特殊らしくて水晶が反応しないんです」

「あー、まあ、そういうこともあるわな。仕方がないからGランクだ」

「そう言ったんですけど、納得されなくて……」

「ハァ……クレーマーか」


 誰がクレーマーだ!


「ゴブリン狩りなんてやってられるか」

「あのな、皆、最初は一からやるんだ」


 そんなもんはわかっている。


「俺は家もないし、食料もないから手っ取り早く収入を得る必要があるんだ。だから昇格試験を受けようっていう話をしてたんだよ」

「そうなのか?」


 おっさんがパメラに確認する。


「はい。ギフトを持つ転生者さんですし、試験をして、良ければDランクぐらいにはしてもいいかなって」

「なるほどな……わかった。認めよう」


 おー! 話のわかるおっさんだ。


「よし、Dランクだ」

「やりましたね、マスター!」


 AIちゃんが両手を胸の前で握りしめ、喜ぶ。


「こいつらのこの自信は何だ?」

「わかりません」

「うーん……試験官は俺がやろう」


 おっさんが試験官をやるらしい。


「ジェフリーさんが? えーっと、大丈夫です?」

「若い者を揉んでやるのも年長者の仕事だ」

「その人、昨日、99歳で亡くなったらしいですよ」

「…………ジジイだな」


 いや、20歳だから。


「おっさんが試験官をやるのはいいんだが、どこでやるんだ?」

「地下に練習場がある。そこに行こう」


 おっさんがそう言って、指差した先には地下に降りる階段があった。


「ふーん……」

「じゃあ、行くぞ」


 おっさんはそう言って、階段に向かって歩いていった。


「ふっ、あのおじさん、死んだな」


 AIちゃんがニヒルに笑う。


「ユウマ、手加減を忘れずに!」

「…………ばいばい、ジェフリー。お墓参りには行くよ」


 ナタリアとアリスがそう言うと、歩いているおっさんが一瞬、立ち止まった。

 だが、おっさんはそのまま階段を降りていったので、俺とAIちゃんもあとに続く。

 すると、パメラ、ナタリア、アリスもついてきたので、一緒に階段を降りていった。


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