表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

138/242

第138話 人それぞれ


 ドラゴンとやらを見かけた俺達は森を出ると、平原を歩いていき、セリアの町まで戻った。

 そして、ギルドに到着すると、タマちゃんをあやしているパメラのもとに向かう。


「よう」

「おかえりなさい。どうでした?」


 パメラが笑顔で聞いてきた。


「寒かったわ」

「でしょうねー。私達も建物の中にいるのに寒いですもん。それで獲物は獲れたんですか? 牡丹鍋とやらは?」

「それそれ。リリーが大きい猪を仕留めたぞ」

「ふふん!」


 リリーが誇らしげな顔で胸を張る。


「それはすごいですね! さすがはリリーさんです。早速、裏に行きますか」

「あ、ちょっと待て。報告がある」

「ん? 報告? 何ですか?」

「えーっとな、森の中でドラ……」


 そこまで言うと、アリスとリリーが俺の服を引っ張り、首を横に振った。


 マズいのかな?

 もしかしたら魔族以上に禁句なのかもしれない。


「ドラ?」


 パメラが首を傾げている。


「あ、いや、すまん。この話は夜にでもしよう。お前も食べるだろ?」

「ええ、ぜひ。多分、リアーヌ様も来られるかと」


 リアーヌにも報告しておいた方が良いだろうな。


「それがいい。じゃあ、裏に行こうぜ」

「はい」

「にゃ」


 パメラとタマちゃんが返事をしたので一度、ギルドを出ると、裏にある解体場に向かう。

 解体場に入ると、バート達が変わらぬ姿で焚火にあたっていた。


「うん? お前ら、もう戻ってきたのか?」


 バートが俺達に気付く。


「バートさん、リリーさんが猪を仕留めたんですって」


 職人達がたむろっている焚火の前まで行くと、パメラが報告した。

 

「猪!? この時期にか!? すげーな、おい! さすがはエルフだな!」


 バートが驚くと、周囲の職人達もざわつく。


「ふふん! すごいでしょ! じゃじゃーん!」


 リリーはそう言いながら空間魔法から仕留めた猪と鳥を出す。

 森の中でも大きく見えたが、広い解体場で見てもかなり大きい。


「でけー! おっ! 鳥もあるじゃねーか!」

「私の弓は百発百中なの!」

「すげー、すげー。よっしゃ、仕事だ」


 職人達はわいわいと賑やかになり、猪と鳥に群がっていく。


「お前らのクランで分け合うとしても余るが、残りはどうするんだ?」


 バートが聞いてきた。


「売却で」

「毛皮とかもいらねーよな?」

「いらん、いらん」

「よっしゃ! じゃあ、解体しておくから夕方にでも取りに来い。その時に精算する」


 夕方だったら夕食には十分に間に合うだろう。


「それで頼むわ」

「おう! いやー、仕事だ、仕事だ」


 バートは嬉しそうに仲間達のもとに行き、仕事に加わった。

 俺達は解体場を出ると、パメラと別れ、寮に戻る。


「ユウマ、肉の受け取りは私がしておくし、準備もするから部屋で待っててよ」

「あ、私も手伝います」


 寮に帰ってくると、リリーとAIちゃんがそう言って階段を昇っていった。

 残された俺とアリスは俺の部屋に戻る。

 すると、アニーがコタツに入り、横になりながら薬を作っていた。


「ただいま」

「…………ただいま」


 俺とアリスはそう言いながらコタツに入る。


「おかえり……冷たい……」

「…………アニーの足、温かい」


 ホント、ホント。

 狛ちゃんの散歩が終わったらずっとコタツに入ってたな。


「外は寒いわ」

「ホントよね。あんたらはどこに行ってたの?」


 アニーが何かの液体と液体を混ぜながら聞いてくる。

 色がヤバいけど、毒じゃないよな?


「リリーが土鍋と箸を作ってくれたんだよ。それで狩りに行ってた」

「へー……じゃあ、森まで行ってきたんだ。獲れた?」

「リリーが鳥と猪を仕留めた。そういうわけで今夜は牡丹鍋」

「あんたが言ってたやつね。それは楽しみ……あんたらは何を仕留めたの?」


 嫌味なことを言う。


「アリス」

「…………はい」


 アリスが空間魔法から例の花を取り出し、渡してくれる。

 俺はその花をアニーの目の前に置いた。


「ほれ」

「あら? 花を贈ってくれるなんて素敵じゃない」

「だろう? やる」

「どうも。腹下しを治す薬の材料なのがロマンチックさを見事に消しているわ」


 素敵じゃないなー。


「そんなものまで作れるんだな」

「まあねー。色々な薬を作れるわよ。何か悩みがあれば言いなさい。作ってあげるから」

「99歳から20歳に若返ったから健康で仕方がねーよ。朝が辛いくらいだわ」


 腰の痛みと頭痛がなくなったのはマジで嬉しい。


「それは私もそうよ。特に最近は起きてからここまで来るのが嫌で仕方がないわ」


 それくらい我慢しろよ。


「狩りとか行かないのか?」

「気が向いたらね。この花もだけど、冬にしか採れない材料もあるからそのうち行く。あんたらも付き合うのよ?」

「そりゃいくらでも付き合う」


 暇だもん。


「…………気が向いたらね。私は釣りが良い」

「それも付き合うよ」


 冬の海ってめっちゃ寒そうだけど。


「釣りのどこが良いのよ……あんたら、釣れないじゃん」

「釣れるわ」


 お前も食べただろ。


「…………この前、ちゃんと釣った」

「一日かけてあれだけって……買えばいいじゃん。普通に働いたお金で何十匹も買えるわよ」

「…………典型的な夫の趣味を理解しようとしない女」

「じゃあ、あんたもナタリアの編み物にでも付き合ったら?」

「…………買えばいい」


 おい……


「人のことを言えないじゃないの……」

「…………ごめん。採取に付き合うよ」


 まあ、お前らはもう少し、外に出るべきだからな。


書影が公開されました。


イラストレーターにはへいろー様が務めてくださり、素晴らしい絵を描いてくださいましたので見てくださると幸いです。(↓にリンクあり)


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[良い点] みんなに褒められて自己肯定感爆上がりリリー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ