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第126話 猫はコタツで丸くなるにゃ


 王都からセリアの町に戻り、すっかり寒くなった町中を歩いていると、懐かしきクランの寮に到着した。


「ただいまー!」


 寮に入ると、リリーが元気よく挨拶をする。

 そして、狛ちゃんがエントランスの端にある交流スペースのソファーに駆けていった。


「ようやく帰れたわ。外、寒っ……」


 薄着のアニーは自分の身体を抱くように両手で腕をさすりながら階段を昇っていく。


「じゃあ、ユウマ、また夕方にね。ご飯ができたら持っていくから」


 ナタリアがそう言って、手を上げると、アリスとリリーと共にアニーの後を追って階段を昇っていった。


「私達も部屋に戻りましょう。コタツを出してもいい寒さです」

「そうだな」


 この場に残された俺とAIちゃんは1階の自室に入り、コタツの準備をする。

 そして、魔石を起動させると、コタツの中に入った。


「おー! 暖かいですねー」

「だなー。しかし、寒さが一気に来たな」


 まだ昼間はそんなに寒くないと思ったが、かなり気温が下がっている気がする。


「寒波が来たんですかね? まあ、当分は仕事も休んでもいいでしょう。王都で色々ありましたし」


 あったなー……


「とはいえ、リリーのことがあるから仕事はしないとマズいだろ」

「あー、それもそうですね。まあ、夕食の時にでも今後のことを相談しましょう。パメラさんも来ますし」


 リアーヌにジェフリーの部屋に送ってもらった後、受付にいるパメラのもとに行き、挨拶をした。

 出入口ではなく、ジェフリーの部屋から出てきた俺達にかなりびっくりしていたが、説明は後にしようと思い、とりあえず、夕食を共にしようと誘ったのだ。

 パメラは快く頷いてくれたし、タマちゃんも『にゃ!』って言っていた。


「温かいものが食べたいですねー」

「俺、鍋を食べたいわ」

「あー、いいですね。この世界にはないと思いますけど、そこまで難しい料理ではないのでやってみますか」


 まあ、出汁の入った土鍋に具材を入れるだけだしな。


「できるか? 俺は厨房に入れん」


 何もしていないのに出禁なのだ。


「できますよ。でも、それっぽくした方がいいのでリリーさんに道具を作ってもらうようにお願いしましょう。あの人、多分、土鍋やお箸を作れますよ」

「そうなん? じゃあ、頼んでみるか。特に箸がほしい。米も買ったし」


 スプーン、ナイフ、フォークにも慣れてきたが、やっぱり箸が良い。


「まあ、お箸ならすぐでしょう。というか、棒ですしね」


 確かに……


「最悪はそういうのでリリーに冬を越せるだけの金を払ってやるか…………ん?」


 俺とAIちゃんが話をしていると、ノックの音が部屋に響く。


「パメラだにゃって言ってます」


 タマちゃんか。


「入っていいぞ」


 俺が許可を出すと、扉が開かれ、パメラが顔を出す。

 すると、パメラの足元から子猫が猛スピードで駆けてきて、コタツの中に入っていった。

 パメラは呆れたようにタマちゃんを見ていたが、すぐに顔を上げる。


「……ユウマさん、ちょっといい?」

「いいぞ。寒いだろうし、入れ」


 そう言うと、パメラが部屋に入ってきた。


「それがコタツってやつ?」


 パメラは靴を脱いでこっちにやってくると、コタツを見ながら聞いてくる。


「そうそう。暖かい机。誰かに聞いたのか?」


 パメラには言ってないような……


「バートさんが言ってた。ユウマさんとリリーさんが変なものを作っているって」


 変じゃねーし。


「俺の世界の暖房器具だぞ」

「へー……」

「まあ、入れ。女は足元が冷えるだろう」


 スカートって寒そうだし。


「じゃあ、お邪魔します」


 パメラがそう言って、腰を下ろすと、コタツに足を入れた。


「どうだ?」

「うん、暖かいんだけど――ふふっ……やめなさい」


 パメラがコタツの布団をめくり、コタツの中に向かって注意する。

 多分、コタツの中にいるタマちゃんがパメラの足にイタズラをしたんだろう。


「パメラも自室にこれを置くにゃって言ってますね」

「わがままな子……」


 AIちゃんの翻訳を聞いたパメラが呆れた。


「子猫用のでも作れよ。お前の家ってここみたいな床生活じゃないんだろ?」

「そうね。普通の部屋」


 俺はこれが普通なんだけどな。

 王都の宿屋も良かったが、やはりこれが落ち着く。


「リリーさんに頼むといいですよ。あの人、エルフだから得意です」

「それもそうねー……ふふふ、わかったから! 足の裏を甘噛みしないで!」


 パメラがまたしてもコタツをめくって注意する。

 すると、タマちゃんがコタツから出てきて、パメラの膝の上に乗った。


「現金な子……」

「猫はそんなもんだ」

「ユウマさんが作った式神でしょ」


 パメラがジト目で見てくる。


「いや、それがさ、俺のスキルの人工知能のせいで式神が勝手に自我を持つんだよ。AIちゃんはともかく、大蜘蛛ちゃんと大ムカデちゃんは好戦的だし、カラスちゃんは臆病。狛ちゃんなんかアニーの飼い犬になってる」


 蜂さんはよくわからない。


「人工知能ねー……初めて聞くスキルだから何とも……」


 パメラが首を傾げた。


「まあ、ギフトはそんなものだろう」

「あ、ギフトで思い出した。私、ジェフリーさんに聞いてこいって言われたんだ」


 まあ、そうかなとは思っていた。

 だって、まだ、昼過ぎだし、パメラは勤務中だ。


「何を聞いてこいって?」

「王都のギルマスについて。なんでいるの? ユウマさん達がギルドを出た後に出てきたけど、ガン見された」


 あー……まあ、それは仕方がない。

 リアーヌだもん。


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