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第125話 どこまでもついていく ★


 王様が帰った後は部屋でゆっくりと過ごした。

 やはり昨日、煉獄大呪殺を使ったのが響いていたため、ちょっと疲れていたのだ。


 夕方になると、皆が戻ってきたので王様の話を端折りながらもすべてが終わったことを伝える。

 そして、話し合いをし、明日一日を休みにして、明後日の朝に出立することを決めた。


 翌日。

 この日は皆が出かけたりと思い思いに過ごしていた。

 俺はというと、出かけるのも億劫だったので部屋で休んでいる。

 すると、ノックの音が部屋に響いた。


「何だ?」

『ユウマ様、お客様です』

「リアーヌだな?」

『はい。玄関でお待ちです』


 来るとは思っていた。

 正直に言うと、来るだろうなと思ったから部屋で待っていたのだ。


「すぐに行く」

「私は待ってます」


 AIちゃんがそう言うので一人で部屋を出ると、玄関まで行く。

 すると、ドレスではないいつものギルドの制服を着たリアーヌが待っていた。


「こんにちは、ユウマ様」

「よう。出かけるか?」

「いえ。私も仕事がありましてね。ケネスに押しつけ過ぎちゃいました」


 そんな気はしてた。


「そうなると、何の用だ? 話は王様から伺っているぞ」

「はい。私もそのように聞きました。私が説明するはずだったんですけどねー」

「抜け出しの常習犯だぞ、あれ」


 しかも、浮気。


「みたいですね。少し警備を強化します。あ、それで用件なんですけど、いつ頃、王都を発たれますか?」

「明日の朝だな」

「そうですか。でしたら私が送りましょうか?」


 送る?

 あ、転移か。


「いいのか? 確かに助かるが、あまり大っぴらにはできないだろ」

「大丈夫ですよ。それに送らせてください。ついでにセリアの町に用事もありますし」


 用事ねー。


「馬車なら2日もかかるからありがたいと言えばありがたいが……少なくとも、俺の仲間には転移がバレるぞ?」

「何も問題ありません」


 リアーヌがきっぱりと言う。


「そうか……では、頼もうかな……あ、でも、俺達が乗ってきた馬車はどうしようか?」

「それも問題ありません。こちらで西区の区長に届けておきます。まあ、放せば勝手に帰りますよ」


 そういや賢い馬だったな。


「わかった。じゃあ、出発時間を明日の昼にしようかな。朝は眠いし」

「最近、寒いですものね。承知しました。では、明日の午後、ギルドに来てください。では、私はこれで」


 リアーヌは頭を下げると、宿屋を出ていった。

 俺はリアーヌを見届けると、部屋に戻る。


「あれ? お出かけするんじゃないんですか? てっきり勝負に来ると思っていたんですけど」


 部屋に戻ると、AIちゃんが意外そうな顔をする。


「さあな。それよりも転移で帰れるぞ」

「おー! 寒い野宿を回避できますね」

「そういうこと。便利な奴だ」

「なるほど……そういう……」


 AIちゃんが何かを考え始めたが、無視して席に着くと、冷めたお茶を飲む。


「あ、淹れなおします」


 俺とAIちゃんは午後からも部屋でゆっくりと過ごし、皆が帰ってくるのを待った。

 そして、夕方になって戻ってきた皆と王都での最後の夕食を食べると、リアーヌの件を伝え、翌日の出発は午後となった。


 翌日、遅めに起きた俺達は朝食を食べ、帰る準備をする。

 昼になり、昼食を食べ終えると、宿屋の店員に世話になった礼を言い、宿屋を出た。


「転移ねー……本当に一瞬で帰れるわけ?」


 ギルドに向かって歩いていると、狛ちゃんに乗っているアニーが聞いてくる。


「すごいぞ。城にいたと思ったら一瞬で海にまで飛んだ」

「恐ろしいギフトね」

「まあなー。しかも、あいつ、竜巻や嵐を起こせるらしいぞ」

「もはや神様じゃん」


 確かに。


「巫女らしいが、異世界だし、よくわからんな」

「まあ、あんたの世界もよくわかんないしね」

「俺もこの世界で過ごしているが、たまにわからん」

「そんなものかもね」


 だと思う。

 今では当たり前だが、夜なのに部屋は明るい。

 蛇口をひねったら水やお湯が出る。

 便利だが、何それって感じだわ。


 俺達が話しながら歩いていると、ギルドに到着したので中に入る。

 ギルドは午後ということもあっていつもより人が少なかったが、それでも10人以上の冒険者がいた。

 そういう人達を見ていると、いつものようにケネスが近づいてくる。


「皆さん、こんにちは。ギルマスから聞いておりますのでどうぞこちらへ」


 ケネスがそう言って、奥の部屋に案内してくれる。


「ケネス、世話になった」


 ケネスにも礼を言っておくことにした。


「いえ、こちらこそ大変お世話になりました。特に火急の用件を伝える際に庇って頂き、ありがとうございました。ギルマス、本当に殺す気だったと思います」

「だろうな」


 あの目はマジだった。


「困ったものです。まあ、これからは安心です」


 ケネスはそう言うと、扉をノックした。


「ギルマス、ユウマ殿一行をお連れしました」

『うむ』


 中からリアーヌの声が聞こえると、ケネスが扉を開ける。

 すると、部屋の中でリアーヌが立って待っていた。


「お待ちしておりました、ユウマ様」


 リアーヌがそう言って微笑む。


「ああ、今日は悪いな」

「いえ、大変お世話になりましたし、当然のことです。それにこのリアーヌ・ラヴァンディエ、あなた様のためなら何でも致しましょう」


 ら、らばん?

 何つった?


「この世界の名前にも慣れてきたが、やはり違うな」

「そうですか? まあ、私の苗字なんてどうでもいいでしょう。呼ぶこともありません」

「そうか?」

「ええ、そうです」


 リアーヌがにっこりと笑う。


「……この人、マジだね」

「……しっ!」


 リリーが小声で何かを言うと、ナタリアが止めた。


「さて、長々と引き留めするのも悪いですし、セリアの町に送りましょう。ケネス、後は任せた」

「かしこまりました。夜は協議があることをお忘れずに」

「わかっておるわ……よし、私に触ってください」


 そう言われたのでリアーヌに触れる。

 すると、やはりビクッとするが、他の人間が触れる時には何の反応もなかった。


「皆、触りましたね? では、行きます。3、2、1、はい!」


 リアーヌがそう言うと、視界が真っ黒になる。

 そして、すぐにどこかの部屋に到着した。


「うわっ! な、なんだっ!?」


 声が聞こえたと思って振り向くと、西区のギルマスであるジェフリーが椅子に座って驚いた様子でこちらを見ていた。


「はい、到着です。西区のギルマスの部屋ですね」


 まあ、ジェフリーがいるんだからそうだろうけど、ここに飛ぶのか。

 ジェフリーの心臓が止まらなくて良かったわ。


「え? は? お前ら、王都じゃなかったっけ? というか、なんで王都のギルマスがいるんだ? え? え?」


 ジェフリーはえらく混乱している。

 可哀想に。


「ジェフリーには私が説明しておきます。ユウマ様達はお疲れでしょうし、寮の方にお帰りください」


 リアーヌが笑顔でそう勧めてきた。


「いいのか?」

「はい。私は他にも用がありますのでここでお別れです」

「そうか……また食事にもでも行こうか」

「はい、喜んで」


 リアーヌが微笑みながら答える。


「じゃあ、俺達は帰る。世話になったな」

「いえいえ、こちらこそ。ゆっくりと休んでください」

「そうだな。ジェフリーもまたな」


 そう言って手を上げると、ジェフリーが俺とリアーヌを見比べて頷いた。


 俺達は部屋を出ると、受付にいたパメラと話をし、夕食を共にする約束をすると、久しぶりの我が家に戻っていった。




 ◆◇◆




 ユウマ様達は部屋を出ていった。

 それを見送ると、ジェフリーを見る。


「お前、とんでもない逸材を独占したな?」

「え? いや、そんなつもりはねーけど?」

「ふん。まあいい」


 私はソファーに座り、テーブルを指でトントンと叩いた。

 すると、デスクについていたジェフリーが立ち上がり、対面のソファーに腰かける。


「なんでいるんだ? というか、どうやったんだ?」

「私のギフトの転移だ」

「は?」

「二度は言わん」


 面倒だ。


「はぁ?」

「ジェフリー、ユウマ様をこの町から出すな」

「いや、そのつもりだが?」


 そうだろうな。


「そのようだな。それは構わん。上手く区長の娘を使ったようだし」

「使ってはねーよ。勝手に仲良くなりやがった。ユウマは生粋のたらしだわ」

「知ってる。別に悪いことではない」


 それだけ魅力的でかっこいいということだ。

 うん、わかる、わかる。


「えー……」


 ジェフリーがそっと目を逸らした。


「なんだ?」

「いや、別に……そのことを言いに来たのか?」

「そうだな。それと区長共にもだ。この町には王家が介入する」

「はい? 本気で言ってんのか?」


 ジェフリーが何を言っているんだという顔をする。


「介入といってもお前らや区長共に口出しをするわけではない。問題が起きないように調整役を置くだけだ」


 というか、口出しは無理だ。


「調整役って……要はさっきのユウマを町から出さないようにするためか?」

「そういうことだな」

「いや、あいつ、出ないだろ。色んな女とよろしくやってるし、出る気もないぞ」

「お前らに余計なことをするなと言っているんだよ」


 くだらない政治にユウマ様を巻き込ませてはいけない。


「えーっと、もしかしなくてもその調整役は?」

「私だ」

「やっぱり……」

「そのことをお前達ギルマスと区長共に伝えにいく。言っておくが、これは私の独断ではなく、叔父上の許可を得ていることだからな」


 叔父上も快く頷いてくれた。

 呆れてたけど。 


「ちなみに、王都のギルドはどうするんだ?」

「兼務だ。私には転移があるからな」

「そうか……そこまでするか」

「ユウマ様を外に出すわけにはいかん。絶対にだ」


 ダメ、ダメ。


「陛下も苦笑いだっただろうな」


 何故わかる?


「まあ、そういうわけだ。これまで通り、ユウマ様に良い仕事を回せよ」

「何も指示しなくてもパメラが勝手にするわ」


 区長の娘か。


「そうか。ならいい。では、私は他にも用事があるんでな」


 そう言うと立ち上がった。


「あいつ、5人もいいのがいるけど、いいのか?」


 あの4人とパメラか。


「私はもう二度とラヴァンディエを名乗らない」

「あ、そう……あれのどこがいいんだ?」

「貴様には永遠にわからないだろう」


 ふっ……


 私はジェフリーの部屋を出ると、受付を見る。

 すると、3人の受付嬢が私を見てきた。

 そのうち、子猫を撫でている金髪の女をじーっと見る。


 あれがパメラか。

 確かに美人だ。

 それにスタイルもいい。


「なるほど、なるほど」


 私はそうつぶやきながらパメラから目線を切ると、そのまま歩き、ギルドを出た。


 他の区のギルマスや区長共にも同じ説明をしないといけない。

 しかも、夜には協議もある。

 でも……


「晴れか」


 今日は雲一つない晴天だ。

 とはいえ、すぐに寒い冬になるだろう。


 さて…………新居を探しに行くか!


ここまでが第3章となります。


これまでのところで『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると今後の執筆の励みになります。


明日からも第4章を投稿していきますので、今後もよろしくお願いいたします。


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